一枚の葉をじっくり眺めてみた。一部に穴があいている。これは晩春に葉がのびたころ、鱗翅目の幼虫かなにかが食べたあとに違いない。その葉の一部はイモムシの腹に入り、一部はエネルギーや体の一部になり、残りは糞として地面に落ちたはずだ。イモムシの体になったものは蛾になってその鱗粉になったかもしれない。あるいは小鳥に食べられて、こんどは鳥の体の一部になったかもしれない。残された葉は明日にも地面に落ちるだろう。落ちた葉はあるいはイモムシの糞として落ちた片割れと地中で出会うかもしれない。「やあやあ、お前は実につまらん生涯を送ったな。ただ枯れて枝にしがみついたままなんて。俺なんかイモムシの体に入って糞になってポトンと落ちるという実に劇的な一生を送ったのにさ」「そうかもしれない。でも最後の夜に雪が降って、それは実にきれいなものだった。ぱっとしなかったけど、最後に夢見たいな経験をしたよ」「そうだな。ま、何がいいかなんてわからんよ。これから何だ、地面に入ってお互い似たようなことになるけど、よろしく」
なんてね。
2010.2.2
なんてね。
2010.2.2