リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ラスト・コンサーツ

2005年06月22日 07時51分02秒 | 日記
今日は一日に2つのコンサートに出ました。それもバロック・リュートとルネサンス・リュートという異なる楽器を使いました。あまりこのパターンはやりたくなかったんですけど、結果的にこうなってしましました。(笑)

一つ目は、最後のクラッセンでのミニ「リサイタル」です。まぁ内輪のコンサートですけど、聴衆は全員リュートを弾くという、ある意味怖い聴衆ばかりです。うれしいことにホピーの生徒がほぼ全員来てくれました。普段のクラッセンでは滅多にないことです。

今日はとてつもなく暑い日で、楽器2台と衣装を持って歩く気にはなれず(それに楽器の温度も急上昇しますので楽器によくありません)久々にトラムに乗りました。トラムを降りてからも日陰を選んで歩きましたが、会場の413ルームで楽器をケースから取り出したら、それでもほんのりと暖かくなっていました。本当に日のあたるところを歩かなくてよかったです。(今までもあまり日のあたるところを歩いていませんが(笑))

プログラムはフレンチとバッハを50分くらいで組んでみました。休みなしで50分ですから結構な分量と言えば分量です。部屋が暑くて指先が汗で弦にくっついたりして困るときもありましたが、モーリスの新しい楽器はそんなことはささいなことだと言わんばかりによく歌ってくれました。全体を4つのセクションに分けて簡単に曲紹介をしながらすすめましたが、何かことばに表せないくらい落ち着いたいい雰囲気ですすめることができました。最後は嬉しいことに拍手鳴りやまず、アンコールにムートンのトンボーを弾きました。

終わったら、簡単な茶話会があったんですが、次のコンサートに行かなければならないので、ワインを2杯軽くひっかけて、次の会場のクライナーザールへ。何か最近日本で飲酒国会議員がいたと騒いでいたようですが、リュート弾きは別にちょっとやそっとの飲酒では騒がれることはありません。(笑)

実は一緒に演奏することになっていたエルナンがドタキャン、急遽バリトンのマークと一緒に演奏することになりました。でも、ここだけのナイショの話し、マークの方がずっと上手いからドタキャンでマークに変更と連絡を受けたときはラッキーと思ったものでした。マークは日本では全く無名の存在でしょうけど、彼くらい上手くリュートソングが歌える人はちょっといないと思います。(パーセルでもバッハでも上手いですよ)英語はネイティブなので完璧だし。

去年エジンバラでのコンサートで、マークと「流れよ我が涙」(ダウランド)を演奏していますので、今回は全くリハーサルも打ち合わせもなしのぶっつけ本番です。(というかやる時間が取れなかった)私の右手もバロック・リュートのタッチからぶっつけ本番でルネサンス・リュートタッチです。

ぶっつけにも関わらず、歌詞の「Flow」のワンシラブルの部分だけで相手をつかむことができました。上手い人とやるときはこれだからたまりません。この演奏がたぶんバーゼルでは最後になると思いますが、本当に気持ちよくいい演奏ができたと思いました。マークに感謝です。演奏終了後の拍手もひときわ大きく長かった、ように思ったんですけど勝手な思いこみかな。(笑)他のにぎやかな曲に比べてひときわ静かなリュートソングが一曲だけ、それも今日の演奏曲目の中では一番知られた曲です。そういえば、始まる前に話をしたおじいさんも「流れよ我が涙」を今日は聞きに来たんだ、っていってましたね。いい曲を最高のパートナーと演奏させてもらいました。本当に有難うございました。