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狭い戸口から入るように努めなさい

狭い戸口から入るように努めなさい
(ルカによる福音書13章24節)
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部分的に自己が壊される

評論家の宮崎哲弥さんは、仕事の面白さについて次にように語っている。

「私は、仕事の楽しさって、自分の思い込みや価値観が壊される可能性のことだと思っています。新しい人に出会って、自分とは異なる考え方、物事の捉え方に出合うことほど面白いことはない。それによって、部分的に「自己」がぶっ壊され、そこが何らかの形でまた新たに作り変えられていく…。それがなかったら人生つまらないでしょう。融通無碍にみえるかもしれないけど、これが大人の仕事の作法だと思う。」

まさに「アンラーニング(学習棄却)」である。

ただ、自分の思い込みが壊されるのは良いとしても、価値観が崩されるとショックを受けるのではないだろうか。歳をとるほど価値観が固まってしまうので、それが変化するとなると相当な出来事が起きることになる。

宮崎さんの話の中で大切なのは「部分的に自己が壊される」という点だろう。自分が全て壊されてしまうと再生不可能な状態に陥ってしまうが、部分的に変われば、全体が再構成される。

それこそ「成長する」ということだ、と感じた。

出所:朝日新聞社編『仕事力:金版』朝日文庫
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アーティストになるな

手塚治虫さんは、自身を「アルチザン(職人)」と呼び、後輩の漫画家たちに次のようにアドバイスしていたらしい。

アーティストになるな

編集者の中野晴行さんによれば「手塚の言う「アーティスト」とは、理屈や権威が先行して、消費者である読者を顧みない描き手のことだろう。一方の「アルチザン」は頑固に自分の信念を貫き、妥協を許さない描き手のことだ。妥協を許さないのは、常に消費者=読者のことを考えていることだ。本当の意味での消費者志向とは、消費者にこびたり、消費者の目をあざむくことではなく、消費者が心から「良かった」と思えるものを作り続けることなのだ。」

僕の研究でも、プロフェッショナルといえる人ほど、「自分のこだわり」(自己志向)と「他者への配慮」(他者志向)を両立していることが示された。これはなかなか難しいことである。どうしても、独りよがりになったり、顧客におもねったりして、どちらかに傾いてしまう。

確かに、職人さんについての本を読むと、筋金入りの職人さんほど、手塚治虫さんのいうような「アルチザン」であることがわかる。

アルチザンになるには、自分と戦うことが必要である、と感じた。

出所:手塚治虫著『ブラックジャック ザ・プロフェッショナル(中野晴行編)』秋田書店
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『山谷でホスピスやってます。』(読書メモ)

山本雅基『山谷でホスピスやってます。』実業之日本社

在宅型ホスピス「きぼうのいえ」は、東京のドヤ街「山谷(さんや)」にある。主な入居者はホームレスや身寄りのない人々

本書を読むと、ホスピスの概念が変わる。優しい看護師さんが癒してくれるというイメージ(ステレオタイプだと思うが)ではなく、わいわいガヤガヤと家族がいる中で「自然体」で看取られているという感じがした。

ちなみに、このホスピスを立ち上げた山本さんは、医療や福祉の専門家ではない。神学部を卒業したクリスチャンではあるが、よくメディアに登場するタフなスーパーマン型でもなく、打たれ弱かったり、うつになったりしながらホスピスを運営している。

なぜ山本さんは、こんな事ができるのか?

その秘訣は「他者のために働く」という強烈な使命感と、彼を支える奥さんや友人・知人の輪である。誠実さと情熱がさまざまな人々を惹きつける。

きぼうの家立ち上げについて、山本さんは次のようにコメントしている。

「ぼくはかつてあるキリスト教の聖職者からこんな話を聞いたことがある。神は決してご自分で御業を行わない。常に人間を通して道を整えられる。そして神はいつもご自身の意図を行わんとするひとを探していらっしゃる。そう、神は非常にすぐれたリサーチャーなのだ。そして、その人間を見つけたら最後、とことんその人間に猛烈な力を貸してくださる。」

本書を読んで、神の意図を実行する人々のパワーを実感した。
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