goo

『ガラスの動物園』(読書メモ)

テネシー・ウィリアムズ(小田島雄志訳)『ガラスの動物園』新潮文庫

作者の自伝的な戯曲である。

詩人になる夢を抱きながら倉庫で働くトム、足に障害があるため婚期を逃し自分の世界に閉じこもる姉ローラ、そして、過去にすがり厳しい現実から逃避する母アマンダ。

彼らが住む暗い裏部屋を舞台とした追憶劇なのだが、読み進むうちに切なくなってくる

本作の中心は、足の障害を持つために心を閉ざすローラのストーリー。実際に精神障害を病んでいた姉へ思いが伝わってきた。

ただ、はじめは不憫に感じていたのだが、よく読むと、大切にしているガラスの動物たちと会話し、街を歩き自然と親しんでいるローラは、むしろ、「自分の世界を確立」しているともいえる。

精神科医ウィニコットが提唱する「一人でいられる力」が高いのだ。

多様な読み方ができる本作。胸にずしんときた。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )