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『ボクシング日和』(読書メモ)

角田光代『ボクシング日和』ハルキ文庫

小説家角田光代さんによる、ボクシング観戦記

ところで、角田さんがなぜボクシング?

「2001年、たまたま住まいのそばにあった輪島功一スポーツジムに入会した。元世界チャンピオンの輪島功一さんが会長をつとめるボクシングジムである。その当時失恋をして、ともかくも心を強くしたいと切望した私は、まず体を鍛えなければならないと思い詰め、家からいちばん近いジムの門を、すがるように叩いたのである」(p. 8)

自分でも実際にやりながら観ると、見る観点も違ってくる。

小説家ならではの観戦記かと思いきや、淡々と各試合を紹介し、その興奮を伝えるだけであるのに驚いた。

しかし、読み進めるにつれて、「ボクシング=生きざま」であることに気づく。

本書の最後に「心と体」について書かれているので紹介したい。

「ボクシングの試合を見るようになってから、心と体の密接具合にひそかに驚いていた。ほんの少しの心の動き、迷いや躊躇が、そのままストレートに体にあらわれる。どんなに体を鍛えても、ほんの一瞬心が違う方向を向けば、体もそちらにいってします。そのシンプルさと残酷さに驚き、なんておそろしんだろうとも思った」(p. 157)

「一瞬ひるんだ心は百パーセント体を道連れにするが、強さを増した心が体にもその強さを与えるかというと、必ずしもそうではない。この日も、いろんな選手の心が、勝ちたいんだ、勝ちたいんだと叫んでいた。その叫びに鼓舞されて戦っても、でも、やっぱり体の限界はある。勝ちたいんだという心を抱えながら体は倒れていく」(p. 158)

心は大事だが、心だけでは勝てない。

仕事も同じだな、と思った。


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