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『日本の美徳』(読書メモ)


瀬戸内寂聴・ドナルド・キーン『日本の美徳』中公新書クラレ

寂聴さんとキーンさんの対談。お二人の生の声が聞こえてくるようで良かった。

キーンさんは、東日本大震災の後、日本国籍を取得することを発表した。

なぜか?

「日本に対する愛情が、私に日本人になることを選ばせたのです。私はこの国にいたい。日本人とともに生きたい。そんな気持ちなのです。日本人になると決めた私の気持ちをあえて言葉で表現するとしたら、作家で詩人の高見順さんが第二次世界対戦中に書いた思いと重なるでしょう」(p.107)

「戦時下で一番情勢が厳しいときに、当時、鎌倉に住んでいた高見順さんは、アメリカ軍が鎌倉を攻撃するという噂を耳にします。心配して、自分のお母さんを田舎へ帰そうと大船まで見送った後、妻を連れて東京大空襲の跡を見に上野駅に行くのです。着いてみると、安全なところに逃げたい、という気持ちにかられた群衆があふれて、大変な混雑となっていました。高見さんが驚いたのは、そういう状況であるのに、誰もが静かに整然と並んで汽車の順番を待っていたことです。その光景を目にして、「私はこうした人々とともに生き、ともに死にたい」と日記に書きました。私も、東日本大震災の後、同じような気持ちを抱くようになりました」(p.107-108)

これに対し、寂聴さんは「そのように教育されているだけ」と答えているが、そうだとしても、やはりこうした行動は日本人の美徳だと思うし、大事にしていかなければならない、と感じた。



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