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ノーベル文学賞

『日本の美徳』の中で興味深い箇所があった。それは、川端康成三島由紀夫についての話。キーンさんは言う。

「大岡昇平さんは、後にひじょうに暗いことを言っています。ノーベル文学賞がまず三島さんを殺して、その後、川端先生を殺した、と。その発言には深い意味がある、と私は思っています。三島さんは、ノーベル文学賞を受賞していたら、たぶん自決はしなかったでしょう。(中略)川端さんはノーベル賞を受賞され、大変な責任感を感じられたことは間違いありません。受賞後、何回も、小説の初めだけを書いて途中でやめて、「これ以上、書けない」と…」(p.96)

同じ賞でも、それが励みになる人とプレッシャーになる人がいる。難しいものだな、と思った。

出所:瀬戸内寂聴・ドナルド・キーン『日本の美徳』中公新書クラレ
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