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『世界を、こんなふうに見てごらん』(読書メモ)

日高敏隆『世界を、こんなふうに見てごらん』集英社文庫

動物行動学者の日高敏隆先生のエッセイ。

こどもの頃から虫が大好きだった先生は、とにかく観察を大事にする。

「いきものとおしゃべりするには、観察するのがいちばんだ。子どものころ、ぼくは、虫と話がしたかった。おまえはどこに行くの。何を探しているの。虫は答えないけれど、いっしょうけんめい歩いていって、その先の葉っぱを食べはじめた。そう、おまえ、これが食べたかったの」(p. 3)

さらに先生は言う。

「ぼくも生物学者のひとりだが、生物学が好きなのではなくて、生物が好きなのだ。こんなところにこんな虫がいて、こんな生き方をしているということがおもしろい。それが生物学にとってどんな意味を持っているかを考えたことはまずない」(p. 96)

この箇所を読み、「えっ!?研究者がそれでいいの?」と思ってしまった。しかし、本書を読み進めるうちに、日高先生は研究者という枠を超えて、純粋な「探求者」であることがわかってきた。この本を読んで一番驚いたのは、次の箇所である。

「小学校のころ、犬の死骸をじっと観察していたことがある。ウジはあまりおもしろくなかったが、甲虫類がいろいろいて、それがおもしろかった。虫たちが、ほかの虫をつっついたり、違うところから顔を出したり、ぶつかってけんかしたりしているところをつぶさに眺める。一回一回の観察時間はそう長くないが、とにかく毎日見る。日に何度も見る。あ、今さっきはこうしていたのに、今はこんなことをしている、ああ、こんなこともするんだ、とわかる。観察する犬の死骸にはあらかじめ狙いをつけ、段ボールなどでふたをかぶせておいた」(p.120)

そうとうな変人であるが、日高先生はこの好奇心と探求心を一生持ち続けていたように感じた。

自分もそういう姿勢で仕事がしたい、と思った。


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