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つながりの強さ

松谷みよ子さんの自伝を読んでいて感じるのは、友人との強いつながり

たとえば、結核が再発したときのこと。

「当時、手には入ったらなあと多くの患者が嘆息する結核の特効薬があった。ストレプトマイシンである。保険は利かず入手も困難で高価な薬だった。私たちには手の届かぬ夢の薬だった。ところがある日、北信病院時代の友人、斎藤ときさんが、ひょっこり病院に現われた。枕元に、ストレプトマイシン四十本を置いてひとこといった。「これ、使って」」(p.186)

このほかにも、みよ子さんが窮地に陥ると、必ず友人からの支援がある。「あとがき」でも、みよ子さんは次のように語っている。

「私は、なんとすばらしい師や先輩と出会うことができたのだろう。その後、病に倒れ、ようやく退院、結婚の日を迎えたとき、結婚衣装を縫いあげてくれた友人がいた。私がアンデルセン賞を受賞したとき、ハンブルクの授賞式で着るようにと手を通していない自分の訪問着を持たせてくれた友人。檄をとばし、ハンブルクへの旅費など一切を用意してくれた友人。思えば多くの人々に支えられた人生だった」(p.252)

人生の価値を測る指標があるとしたら、その一つは「他者とのつながりの強さ」かもしれない、と思った。

出所:松谷みよ子『自伝じょうちゃん』朝日文庫



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