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『ブッダ物語』(読書メモ)

中村元・田辺和子『ブッダ物語』岩波ジュニア新書

ブッダの生涯や教えについて、とても読みやすく書かれている本である。

王族としての豊かな生活や妻子を捨てて修業に出たブッダは、人間はなぜ「老い、病気、不幸、死」に悩むのかを追求する。

そしてたどり着いたのが「無明(むみょう)」の考え。

「そしてついに、無明があるから人間を人間たらしめている活動が生まれ、老い、死ぬという一連の苦しみが起こるのだと知るにいたった」(p.64-65)

人生やものごとの真実の姿に気づかないことが無明である。すなわち、すべてのことはいつも同じ状態にはない(無常)、固定的ではない(無我)ということに気づかないことである。そのためにものごとに執着してしまうことになる」(p.65)

「そして無明が明にかわったとき、すなわちすべてのものの真実の姿が明らかになったとき、真の安らぎが開けると悟ったのである」(p.65)

このように、本書はとても平易に解説してくれるのだが、何となく「わかったような、わからないような」モヤモヤ感があった。

最後の方で、ブッダの性格について次のように書かれていた。

「ゴータマ・ブッダの教示のしかたは、弁舌さわやかに人を魅了するのでもなく、また一つの信仰に向かって人を強迫することもない。かれは決して「私について来い。そうでなければ救われない」と大言壮語することがないし、教祖的なところがなかった。さらに異端にたいして憤りを発することもなかった。単調に見えるほど温情をもって人に教えを説く。ブッダは人好きのする、とっつきやすい人であったらしい」(p.193)

「仏教が後生にひろく世界にわたって人間の心のうちに温かい光をともすことができたのは、開祖であるブッダの性格に由来するところが多分にあると考えられる。そうして、ここに指摘した性格は、後代にいたるまで仏教を特徴づけているように思われる」(p.194)

この箇所を読んで、仏教の本質がスッと理解できたような気がした。



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