goo

『空が青いから白をえらんだのです』(読書メモ)

寮美千子編『空が青いから白をえらんだのです:奈良少年刑務所詩集』新潮文庫

奈良少年刑務所は、17歳以上26歳未満の犯罪者を収容する施設だ。この刑務所には、「社会性涵養プログラム」と呼ばれる授業がある。本書は、その一つ「童話と詩」の授業から生まれた詩集である。

著者の寮美千子さんは、最初に「この授業をやらないか」という話が来たときに、躊躇したらしい。なかには強盗や殺人を犯した受刑者もいる。ためらうのは当然だろう。

しかし、実際に授業をしてみた寮さんは驚く。受刑者がみるみる変わっていくからだ。月1回90分の授業を6回行うプログラムなのだが、前半の3回は絵本や詩を読み、後半は自分が書いた詩を朗読し、みんなで感想を述べあう。これだけの内容だ。

ポイントは「自分の内面を言葉で表現し、他者に認めてもらう」こと。彼らは今まで、こうした経験をしたことがなかったのだ。

寮さんは言う。

「足を広げてふんぞり返っていたOくんは、俳句をほめられたことをきっかけに、腰かける姿勢まで変わってしまった。授業に興味を持って、身を乗りだすようになった」(p.169)

「自傷傾向があり、情緒の安定を欠くKくんは、妄想や空想をノートに書きつけ、心から取り出して客観化するようになった。すると、心が落ち着き、醸しだす雰囲気さえ変わってきた。いまでは、仲間から人生相談を受け、応えてあげる立場にまでなっている」(p.169)

自分を表現し、認めてもらう場は、自分を見つける場でもある。学校や会社においてもとても大切になる、と感じた。

本書に収録されている詩はどれも素晴らしいのだが、一つだけ紹介しておきたい(p.153-154)。


こんなボク

こんな未来を ボクは望んだだろうか
こんな未来を 僕は想像もできなかった

こんなボクの どこを愛せるの?
なぜ そんなにやさしい眼で見れるの?
「だいじょうぶ まだやり直せるよ」って言えるの?
こんなボクなのに・・・・・

こんなボクなのに ありがとう かあさん


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )