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『輝ける闇』(読書メモ)

開高健『輝ける闇』新潮文庫

従軍記者としてベトナム戦争を取材した開高健の記録である。

現地の人々、アメリカ軍、南ベトナム軍と生活を共にする開高氏は、アジアの気だるい雰囲気の中で、ベトナム戦争の感覚を伝えている。

本書の中で、開高氏がカービン銃をいじる場面が印象的である。

「そこにたてかけてあったカービン銃をとりあげて私は銃眼からゴム林を覗く。銃は一度も射ったことがないが、見よう見まねで安全装置をはずしてみた。(中略)面白半分で私は人を殺し、そのあと銃をおいて、何のやましさもおぼえずに昼寝ができそうだ。たった100メートル離れただけでビールの缶でもあけるように私は引き金がひけそうだ。それは人殺しではない。それはぜったい罪ではなく、罰もうけない。とつぜん確信があった。かなたの人物もまた私に向かっておなじ心をうごかしているにちがいない。この道具は虚弱だ。殺人罪すら犯せぬ。」

この箇所は、戦争の本質を伝えていると感じた。
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