お気楽ボランティア日記

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聖地旅行③-2・・・「マサダの砦」集団自決顛末

2010年03月18日 | その他
 2年間も「マサダの砦」に籠もっていた967人のユダヤ人達はどのようにして集団自決を図ったのか?
 ヨセフスの「ユダヤ戦記」から記述を追っていきます。(私は1巻も2巻も読んでいないので、そこに至るまでの事は分かりません。砦における攻防のみを記します)

 ローマ兵は斜道からの攻撃で外側の城壁を壊しますが、ユダヤ側はその内側に木と土で作った塁壁を作って備えていました。
 この塁壁はいくら叩いても壊れません。そこで、作戦を変えて火で攻撃するとあっという間に燃え上がりました。最初はローマ側に吹いていた風も途中から変わり、塁壁に吹きつけて至る所を燃やしました。

 これを見たユダヤ側の指導者エレアザロスは、風の向きの変化にも神の真意を見たのか、集団自決を決意します。「生きて虜囚の辱めを受けず」の精神に近いものでしょうか・・・

 彼は同士を集めて演説し、彼の決意の程を語って聞かせます。・・・が、反応はいろいろでした。熱狂的になる者、怖じ気づく者・・・

 そこでエレアザロスは、熱意を持って更に長い演説をします。本では約10ぺージに渡って霊魂について、これまでの各地でのユダヤ人がどう戦い、どう死んでいったかについて詳しく語ります。

 そして最後にまた呼びかけます。
「われわれの両の手が自由で剣を帯びているうちに、その手に高貴な奉仕をさせてやろうではないか。敵どもに捉えられて奴隷にされる前に死のうではないか。自由人として妻子と一緒に生を断とうではないか。・・・自決でもって彼らを仰天させ、その大胆さで彼らを驚かせよう」

 ここまで聞いた同士たちは全員憑かれたかのように散って行き、揺るぎない覚悟を持ってその目的を遂行しました。つまり、愛する妻子を自ら殺害するのです。
 それから男達は自分たちの所持品全てを一カ所に積み上げ、火を放ちます。

 ついで、くじで10名の者を選ぶと、彼らは逡巡することなく全員を殺害しました。さらにくじで一人を選び、選ばれた者は9人を殺害すると宮殿に火を放ち、最後は自害したのです。

 (食料品だけは残しておくようにというのがエレアザロスの方針でしたから、それは焼かなかったのでしょうね。食糧が尽きたから死んだと思われたくなかったようです。)

 ローマ兵たちは戦闘を予期して出撃してきました。
 「しかし、敵は一人も見あたらず、周囲は恐ろしいほど荒涼としていて宮殿だけが燃えていて、沈黙が支配していた。」とあります。
 さぞかし、びっくりしたでしょうねえ!あれだけ抵抗してきたのですから・・・

 ローマ兵が大声で呼びかけると、女二人と、子ども五人が洞窟から出てきました。七人が自決から免れていたのです。女達は事の次第を語りました。

 ローマ兵たちは・・・「勝ち誇るようなことはせず、逆に敵達の決然たる覚悟と、事の決行に当たってかくも多くの者が動じることなく死をものともしなかったことに感嘆の声をあげた。」とか。

 ここがユダヤ人の最後の戦いの場所でした。この後、ユダヤ人達は世界に離散していきます。

 「マサダの砦」は現代にも生きています。
 「リメンバー パール ハーバー」ではありませんが「ノー モア マサダ」を合い言葉にしているそうです。

 町で軍服姿の若者を何度も見かけました。彼らのイスラエル軍入隊宣誓式はここで行われ、「マサダは二度と陥落させない」という言葉で締めくくるそうです。

 ちょっと複雑な思いで砦を後にしました。