拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

逢びき

2017-06-23 06:22:22 | 音楽
靴下をはかない某俳優さんが「不倫は文化」と言ったときはバッシングの嵐だった。そういえば、去年の今頃はベッキーがゲス不倫報道でバッシングのただ中にあったっけ。でも、某俳優さんは「不倫は良いこと」と言ったわけじゃなく「不倫は文化」=不倫を題材にした文芸作品がたくさんある、と言ったわけで、これは事実だ。「マディソン郡の橋」は泣きましたと言っておいて、「不倫は文化」をとやかく言うのはダブルスタンダードだ。北野武さんのお兄さんは、「マディソン郡の橋」について「でも不倫ものでしょ?」と言って眉をひそめていた。このくらい徹底しているなら分かる。それにしても、不倫を題材にした文芸作品はなぜかくも多いか。自分ではできないから劇中の人物に託しているのだろうか。人々がサッカーの試合を代理戦争にみたてて熱狂するのと似ている。ということで、私、イチ押しの不倫オペラ。まずイタリアものだと「仮面舞踏会」(ヴェルディ)。リッカルドとアメーリアの愛の二重唱は熱く燃えさかって火傷しそう。それからドイツオペラなら「ヴァルキューレ」(ヴァーグナー)。愛の二重唱は時間をかけてじわじわと高まっていくから絶頂時の炎はどうやったって消すことができない。奥までしみこむ低温火傷。そしてロシア・オペラは「ムツェンクスのマクベス夫人」(ショスタコーヴィチ)。とにかくエロい。生で見た舞台では「行為」が照明を利用したストップモーションで表現されていて、やたらリアルだった。さて、映画は?これはもう不倫ものオン・パレード。挙げればきりがないが、一つ、「古典的」なやつを。白黒映画の「逢びき」(1945年のイギリス映画)。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番がBGMで使われていることで有名。子供の頃、テレビで見た。「よろめいた」後、結局家庭に戻ってきた妻を夫が「よく戻ってきてくれたね」みたいなことを言ったのが印象的だった。原題は「Brief Encounter」。これを「束の間の逢瀬」とか訳さないで「逢びき」と訳したのは、説明的な長い邦題が多いなか秀逸。そういえば、「マディソン郡の橋」でヒロインを演じたメリル・ストリープは、「恋におちたら」でもよろめいている。この作品は、「逢びき」のアメリカ版と言われてるんだそうだ。

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