拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

湯河原(回り回ってたどり着いた話)

2024-05-17 08:06:00 | 小説

最近の私の嗜好をよく表している本棚。

最近はキンドルで読書をするので紙の本を買う機会がほとんど無くなったうえに買うとすれば古本。だが、写真に映っている図鑑・地図の半分は新品である。おかげで、新しい紙の匂いを久しぶりに嗅いだ。なんともいいものである。このように、私の頭を占めてるツートップは山と草木。そこには奥地も関係している。山々は奥地の家の窓から眺めているし、「猫の額」は草木に満ち満ちている。

ま(この場合の「ま」とイタリア語の「ma」はほぼ同じ用法)、それでも奥地の家で山と草木だけを眺めているわけではなく、配信動画だって見る……が、そのためにはモバイルルーターが必須なのに前回はそれを持ってくるのを忘れてしまった。なので、キンドルで漱石を読んだ。

キンドル画面は漱石の「明暗」である。「未完」ということなのだが、読めども読めども続きがある。ようやく「完」ならぬ「未完」にたどりついた。なんでも、本作は漱石の作品中最長だそうだ。それで未完である。未完なのがなんとも残念。なんてったって、気持ちが通い合わない新婚の妻を東京に残し、元カノ(人妻)のいる温泉場に行った主人公が元カノと再会したところで切れているのである。私の妄想(希望)は、元カノと怪しい関係にならんとするその場にいきなり妻が現れる、というストーリー。それにしても、登場する男女の会話が辛辣。前回=最初に読んだとき、その時私は子どもだったからその意味するところなど分かるはずがなかったろう。だが、今では、そうそう男と女ってこういう言い方をするんだ、こんな風に鎌を掛け合うんだ、と納得の嵐である。

因みに、主人公が元カノと再開する温泉場だが、東京から汽車でその日のうちに行けて海があると言うので伊豆かな?と思ったらその手前の湯河原だった。モデルになった宿は漱石自身が泊まった温泉宿で、駅から山の方に谷筋を登ったところにあったが、今は取り壊されて別の施設に変身してるという。

湯河原と言えば、以前、真鶴から南郷山、幕山、梅林を廻って湯河原に降りたことがある。梅林から駅までの道はやはり谷筋だったが、「明暗」の舞台の谷筋よりもちょっと北側の別の谷筋だった。南郷山に登る途中の景色はまさに絶景。真鶴半島の全貌が目前に広がり、

その先、太平洋には初島、さらにその先には大島と利島(円錐形から推測)が見えた。

因みに、石橋山の戦いで敗れ、潜伏した岩穴で敵に見つかりながらも知らん顔をしてもらって命拾いをした頼朝が安房国(房総半島先端)に向けて漕ぎだしたのが真鶴半島である。