暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

夜咄の茶事へ招かれて・・・・・その2

2016年12月19日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                      
                          茶事の写真がないので・・・・我が家のですが

四畳半の茶室へ席入りすると、床に「無事」が掛けられ泰道老師のお筆です。
ご亭主M氏と挨拶を交わし、すぐに前茶(ぜんちゃ)が点てられ、たっぷりの薄茶をおもあいで頂きました。
短罫の下、水屋の有り合せの道具で点てられる前茶は夜咄独特のものです。
道中の寒さを思いやる亭主の温かなおもてなしが嬉しいひと時でもあり、
ジャム入りの汲み出しの甘みが舌に残っていて、待ち遠しい前茶でもありました。

続いて初炭になり、玄々斎好の鴨箱炭斗が持ち出されました。
手燭を持って灰器が点前座へ運び出されるのですが、この瞬間が大好き・・・です。
短罫に手燭の灯りが加わって、茶室は少し明るくなり、同時に複雑な陰影も増していくようです。

初履きがされ、急ぎ炉縁へ寄って覗くと、3本の下火がほんのり赤く浮かび上がり、湿し灰が撒かれた炉中の美しさに大満足でした。
実は亭主M氏は湿し灰作りの名人でして、暁庵はこの一瞬を待ちわびていたのでした。
加えて、もう一つ楽しみにしていることが・・・・(これは後ほどに)。
しばらくこのまま炉中の風情を見惚れていたいと思ったのですが、さらさらと炭手前が進み、香合の拝見をお願いしました。

                         

夜咄の面白さはいろいろありますが、夜目、遠目で見たものを手近に寄せ手燭で拝見すると、予想と全く違っていることもその一つです。
「タヌキ」と思っていた香合は「フクロウ」、ウインクしているように見えます。
「黒柿かしら」と思っていた炉縁は「焼き杉」、早くも漂う香は鳩居堂の松重(まつかさね)でした。
今にして思えば・・・この辺りから、夜咄の持つ魔力に引き込まれていったような気がします。

Oさま手づくりの懐石が出されました。
膳燭が出されたのですが、中身が全くわかりませんで、まさに闇鍋状態でした。
五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を総動員して何を食べているのか、探りながら賞味しました。
懐石といえば、先ずは視覚から食欲を覚えますが、それが欠落すると大変なことになります。
あっ、これはゴボウらしい、これは・・・??

懐石後に栗餡の乗った粟ぜんざいをたっぷり頂き、中立となりました。
「それでは中立をさせて頂きます。用意が整いましたら、どうぞお鳴物などでお知らせください」
「ことによりましたら、そのようにさせて頂きます」
(陰の声・・・実はM氏のお鳴物がもう一つの楽しみ!でした)


M氏の打つ喚鐘の音色が心を震わせ、今でも耳に残っています・・・・


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