暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

能を楽しむ夕べ 「東北」 その2

2012年08月15日 | 歌舞伎・能など
いよいよ「東北」が始まりました。
今宵は、見どころらしい、中入後の後半の15分間が演じられました。

全あらすじは、
   東国から春の都へやってきた僧が東北院に着き、
   美しい梅を眺めていると、若い女が現れ、
   「梅の名は好文木(こうぶんぼく)または鶯宿梅、
    この梅は和泉式部の植え置いた軒端梅(のきばのうめ)」
   と教えてくれます。
   僧は納得し、また方丈は和泉式部の寝所であると教えてもらう。
   女は、この花に住む「梅の主」と言い残し、夕暮の木陰に消えます。
   (中入)
   僧が法華経を読経していると、
   僧の夢の中に和泉式部が現われ、僧の読経に感謝します。
   法華経を聞き、生前のことを思い出し、僧に語ります。
   女はなお、和歌の徳を述べ、都の東北の鬼門を守るこの寺の風物が
   仏法の教義に通じていることを物語り、舞を舞う。

        春の夜の 闇はあやなし 梅の花
            色こそ見えね 春やは隠るる

   昔を思うと恋しい涙が・・・、これは恥ずかしい
   もはやおいとましよう、式部は「今はこれまで」と言い、
   方丈へ入ったと見るうちに僧の夢は覚めます。

            

能舞台・豊響殿は、豊臣秀吉没後300年記念祭(1898年)が
東山阿弥陀ヶ峰の豊国廟で行われた際に建てられた由緒あるもので、
正面に野外席が設えられ、薪能のようにかがり火が焚かれています。
日暮れには早いようでしたが、
ひぐらしの声がBGMのように時折響きます・・「カナカナカナ・・・」

            

   昔を思うと恋しい涙が・・・、これは恥ずかしい
   もはやおいとましよう

袖を翻し、和泉式部が橋がかりを静かに帰っていきます。
揚幕の向こうはあの世・・・。
そう思うと、去っていく和泉式部に亡き母の姿が重なりました。
「行かないで・・・お母さん!」と心の中で式部を引き留めていました。

一瞬のことですが、初めての経験です。
お盆で、六道珍皇寺へ行き、「迎え鐘」を撞いたせいでしょうか。
お能はあの世とこの世を行き交う舞台劇で、自己暗示の世界と思えば
いつでもどこでも不思議な能の世界へ瞬間移動できるのかもしれませんね。

            
                 山門暮色
            
                 茶室・清心庵にて一服

お能の会が終わってから、観世流・林宗一郎氏を囲む懇親会が、
修学院きらら山荘内の茶室・清心庵に設けられたので、
そちらへ移動しました。
総勢十名、風雅な茶室でお菓子と薄茶を頂きながら、
京観世五軒家と林家の歴史、能に関する素朴な質問など
お話が聞けて、こちらも有意義な時間でした。

これからも「能を楽しむ夕べ」へ通いたいと思っています。

次回は、9月14日(金)17:30~ 演目は能「小鍛冶」です。
詳しくはHPをご覧ください。


           能を楽しむ夕べ「東北」 その1へ 


  能のお知らせ
  〇 観世青年研究能
    平成24年8月19日(日) 午後1時開演(12時半開場)
    於 京都観世会館 (TEL075-771-6114)
    演目: 能「賀茂」  狂言「柑子」  仕舞  能「東北」
    チケット: 前売券2000円  当日券2500円

  〇 平成24年 林 定期能 第五回
    平成24年9月29日(土) 正午開演(11時20分開場)
    於 京都観世会館 (TEL075-771-6114)
    演目: 能「通小町」 「楊貴妃」 「小鍛冶」
    チケット: 前売券4000円  当日券4500円 (全席自由)