暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

辛卯 初釜 (1)

2011年01月08日 | 稽古忘備録
1月6日、辛卯の初釜が厚木市にある茶室で行われました。
呉服屋さんの奥の間にある茶室は八畳(京間)の広間、
寄付も待合も広いお部屋で、全館貸切でした。

正午の茶事で、私は初座の亭主、後座では先生が濃茶を煉り、
続き薄茶でKさんが薄茶を点てました。

床には、先生が用意された結び柳と俵が荘られました。
軸は益田鈍翁筆「温知」、「温故知新」の「温知」です。
最晩年の作だそうですが、なかなか迫力と存在感のある筆でした。
床柱には紅白の椿が竹一重切に入れられています。

その日は穏やかな晴天でしたが、お正月のことゆえ湯桶を用意して
迎え付けをしました。
ところが湯桶は使われないままでして・・・ちょっと残念。
(亭主側としては使って頂いた方が嬉しいですね・・・)

初入のあと先生のご挨拶がありました。
「おめでとうございます。
 皆さまお揃いで今年も初釜を迎えられまして嬉しゅうございます。
 大晦日と元日は同じ一日なのですが
 一夜明けると同じ一日が年の初めということで
 清々しく新たな気持ちで一歩を踏み出せます。ありがたいことです。
 今年もまたご一緒に精進してまいりましょう」

社中の皆様と一人ずつご挨拶が交わされてから、
台子初炭手前となりました。
「釜は?」
「般若勘渓作の園城寺釜写で、園城寺の字が鋳込まれています」
「趣のある好い釜ですね。
 先ほどは濡れ釜の風情を愉しませて頂き、有難うございました」

炭を継ぐ時に枝炭が上手に取れず1本だけ継ぎましたら、
先生からお声が掛かりました。
「枝炭は二度に継いでもよいそうです。
 お正月ですからもう一度継いでください」
それで枝炭3本を継ぎ足しました。

後掃きをし、香を焚き、火箸を炭斗へ置くときに
香合の中の椿の葉を炭斗へ落としました。
香合の蓋をすると
「香合の拝見を」と声がかかりました。

                 

釜を掛けてカンを外して炭斗へ入れ、羽根で釜の蓋を清めます。
炭斗中の火箸を取り、左手に持たせ、右手で羽根をとって
火箸を表2回、裏1回清め、羽根を炭斗へ戻してから、
火箸を杓立へ戻します。

さて、ここからが問題でして、
炉正面へ戻り、帛紗を捌いて釜の蓋を切りました。
お稽古の時に先生から
「広間では座掃きがないので、すぐに蓋を切ってよろしい」
と伺ったような気がするのですが、はっきりと覚えていません・・・。

何処からか
「茶事では香合を取りに出るときに蓋を切るのでは?」
という声も聞こえてきます。
初釜では、亭主次第・・ということにさせて頂いて、すぐに蓋を切りましたが、
改めて先生に教えを乞おうと思っています。

「香合は?」
「高砂蒔絵のぶりぶり香合で、作は秀甫でございます。
 木地は松の溜塗です。 
 高砂の翁と媼のように目出度く年を重ねたいと思いまして
 初釜に使わせて頂きました」
「今日の参加者にぴったりのお目出度い香合で嬉しゅうございます」

「お香は?」
「坐忘斎お家元お好み、松栄堂の松涛でございます」

ぶりぶり香合はとても立派なもので、初めて拝見した時は目を見張りました。
片手では持てずに両手で持ちました。
また、天板に荘る時は羽根を上に乗せてバランスをとりました。

   
          辛卯 初釜(2)へつづく