暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

五事式の会 松樹千年翠

2011年01月25日 | 茶事
1月21日は辛卯年の第1回五事式の会でした。
毎年、亭主、半東、客を六人で持ち回り、席は翠晶庵でしています。

亭主を引き受けてくださった方が正月に足と胸を痛めて参加できなくなり、
急遽、私が亭主を務め、半東が三客を兼ねて五人ですることになりました。

ところが、肝心な亭主の私が体調不良でダウンしてしまい
半東なしでは無理と思い、茶友SさんにSOSしました。
「・・・という事情なので、三客に入ってもらえませんか?」
「私でよろしかったら伺わせて頂きます」
「あ、ありがとうございます・・・助かりました!」

当日、水屋手伝いのIさんが早めに来て、埋み火に備え炉を温めてくださいました。
二人で支度をしていると、半東のMさんも到着し、火入や巴半田の準備を始めました。
MさんもIさんも動きの鈍い私に代り、テキパキと頼もしい限りです。

                

床に足立泰道老師筆「松樹千年翠」を掛けました。
1月にふさわしい、おめでたい禅語と思い、選びましたが、
改めてその意味するところを考えてみました。

対句になっていて
   松樹千年翠 (しょうじゅせんねんのみどり)
   不入時人意 (ときのひとのこころにいらず)
松の樹の翠は千年も万年も変わらずに美しい。
けれどもそのことにその時代の人が気が付かなければなんの意味もないことだ・・・

対句の意味を知り、はっとしました。
この「五事式の会」こそが「松樹千年翠」だと思いました。
病気、老親介護などいろいろな事情を乗り越え、助け合い、信頼し合って
五事式のために集う仲間は何物にも代えがたい存在だと、気が付いたのです。
みんなにいろいろ心配をかけたけれど
「不入時人意」
体調不良が教えてくれた、素晴らしい仲間に感謝の一日でした。

                              

今年も廻り炭では埋み火から炭を熾すことに挑戦しました。
・・・が、残念ながら埋み火を割ると真っ黒で、
半東に巴半田を運んでもらい、残り火を一つ使いました。

もう一つ、「熱い濃茶を差し上げる」を課題にしてみました。
炉の時期は寒いので覚めてしまうのは仕方がない・・・
と半ばあきらめていたように思います。
半東のMさんと相談し取り組んでみました。
先ず火相と湯相です。
中立で炭を継ぎ、釜へ水を足しました。
後入り、廻り花、香と続き、いよいよ濃茶です。
直前まで楽茶碗を熱い湯で温めてもらい、さらに茶巾も温めてもらいました。

湯相も丁度よく、たっぷりの濃茶を素早くしっかり練っておだししました。
「おふく加減いかがでしょうか?」
「おいしゅうございます。
 お練り加減も好く、アツアツをたっぷり頂戴し、シアワセです」
正客のIさんが全身で表現してくださって、こちらにも美味しさが伝わりました。
詰のSさんまで熱い濃茶が渡ったようで良かったです。

一二三之式では、月の札が2枚も入り、過大な評価を頂戴しました。
「体調不良を押してがんばったご褒美の評価だと思いますよ」と言われましたが、
「ううーん、私一人じゃない。心を合わせて乗り切った全員への評価よね」
と、また「松樹千年翠」が脳裏を横切ったのでした。  

                                


                               

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