暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

立礼の稽古茶事

2011年01月16日 | 茶事
正月早々でありますが、我が家で立礼の稽古茶事をしました。
茶友のKさんから立礼の稽古を・・・と以前から頼まれていたのです。
亭主はKさん、半東は私、お客さまはAさんとMさんにお願いしました。

11時席入です。
待合の床に兎の色紙(森下隆子さん作)を掛けました。
白湯をお出しし、四人揃って新年の挨拶を交わしました。

「今日はとても寒いですね。
 手あぶりの用意がございませんので
 5分ほどしてから腰掛待合へお出ましくださいませ。
 すぐに迎付をいたします」

亭主のKさんと風炉の下火を確認し、迎付に出て頂きました。
湯桶がないので片口(塗りもの)に湯を入れて蹲の湯桶石に置きました。
お客様の反応が楽しみでした・・・。
あとで伺うと
「蓋を立てかけて柄杓で湯を汲んで使わせて頂きました。
 ちょうど良い湯加減で、量も二人なら十分でした」

                   

主客挨拶の後、初炭が始まりました。
点茶盤の下の棚から炭斗を取り出すのですが、ちょっとだけ大変なのです。
それから点前が終わってから建水を置くときも。
実際にやっていただきたい箇所でした。
(私は幅10センチの板を渡して取りやすいようにしていますが
 この時は板をはずして体験していただきました)

点茶盤は狭いので炭斗、羽根、香合、釜を置く位置を
考えながらやっていただきました。
「羽根を置くので炭斗はなるべく水指近くに。
 カンを左へ置くのでお釜の引きは向きを変えるくらいかしら。
 香合も取りにくいので斜め上から自然に・・・」

お点前は台子点前とほぼ同じなので、Kさんの動きはスムースで流石です。
香合が拝見に出され、半東がとりつぎました。

初炭手前が終わってここで懐石ですが、
今日はMさんが買ってきてくださった美濃吉のお弁当と吸い物です。
待合へ移動して、ゆっくり歓談しながら頂きました。
昼食後、立礼席へ戻っていただき、亭主が主菓子をお出ししました。
主菓子は「粋甘粛(すいかんしゅく)」、源吉兆庵製で、
干し柿に白あんを詰めた、とても美味しいお菓子です。

                    
                                       
中立のあと、銅鑼でお知らせして後入り・・と順調に進みました。
濃茶の時に後炭の炭斗を点茶盤の下へ置いていないことに気が付きました。
濃茶が煉り上がったので正客へ運び、すぐに水屋へ出て後炭の準備をしました(ふーっ!)。
濃茶は松籟園の豊松の昔です。

後炭の時にお客様から
「炭の継ぎ方をぜひ拝見させてください」
と要望がでて、みんなで拝見しました。
片口をだして釜へ水を注ぎ、浄める時はさらに点茶盤が狭くなるので
釜を引く、片口や蓋を置く位置などをあとで確認して頂きました。

薄茶になり、お客様に二服ずつのんでいただいたあとに
お正客のAさんが亭主と半東のために薄茶を点ててくださいました。
一生懸命働いたあとの一服は美味しく喉を潤してくれました。

最後のご挨拶の後に、意見交換や銅鑼の稽古ができ、これも好かったです。
「本を見てわかった気になっていましたが、やってみなくてはわかりませんね。
 今日は稽古させて頂いて、ありがとうございました」とKさん。
「お正客は大の苦手でしたが、この次はそれほど臆せずできるような気がします」とAさん。

私も立礼の茶事をする場合の動線や準備の手順など、とても参考になりました。
有意義に楽しく勉強できて、素晴らしい仲間に感謝です。


                                 

能・狂言に潜む中世人の精神  歌

2011年01月13日 | 歌舞伎・能など
1月8日に横浜能楽堂特別企画
「能・狂言に潜む中世人の精神」の第1回「歌」へ出かけました。

世阿弥が能の骨格を作り上げた中世の精神から、
「歌(うた)」「神道(かみ)」「仏教(ほとけ}「花(はな)」
のテーマに沿って講演、狂言、能が全4回催されます。

この日のプログラムは
講演 馬場あき子(歌人)
狂言 「連歌盗人」(大蔵流)山本東次郎
能  「雨月」(観世流)大槻文蔵    でした。

「中世の精神とは?」「歌の持つ力とは?」
馬場あき子さんの講演が面白く、興味をもちました。
  
中世といえば、鎌倉時代から南北朝を経て室町時代、戦国時代まで入るのでしょうか。
貴族に代って武士が権力を得て、政権を担っていく時代ですが、
戦乱が絶えなかった乱世でもあります。

そんな中世の美意識は「清貧の思想」に基づいているそうです。
簡素な生活の中に高尚な精神の内在を追及する「清貧の思想」は、
西行、徒然草の兼好法師、良寛の生き様を思い起こしました。
何も要らない、自然のありようを愛でる風流は日本文化の伝統でもあります。

中世において、婆沙羅大名として名高い佐々木道誉は、
木の周りに銀の壺を並べて、桜の大樹をあたかも立花のように見せて、愛でたという。
さらに、香炉を並べて香を焚き、猿楽師や白拍子を呼んで芸能三昧を愉しんだという。

「清貧の思想」と一見対称的な道誉のバサラぶりには
「巨万の財を無に帰する」という美意識があり、
「無に帰する」ことこそが中世という時代が求める美学であり、
幽玄の境地へ導くものでした。
それは後世、侘び、寂び、萎れ(しおれ)となって、
その精神は脈々と現代へ(そして茶の湯へも)受け継がれています。

                 

能「雨月」は、和歌の神として信仰を集めていた住吉明神に参詣した西行(ワキ)の前に
住吉明神(シテ)を登場させて、和歌の徳を描こうとした能です。
馬場さんによると、和歌(うた)は神や鬼に通じる言葉であり、
歌の持つ力(徳)があるそうです。

老夫婦(実は和歌の神、住吉明神の化身)が、雨音を聞くために屋根を葺くか、
月を鑑賞したいがために葺かないかを言い争っているところに、
西行(ワキ)が通りかかり、
「月は漏れ雨はたまれととにかくに 賎が軒端を葺きぞわづらふ」
と上の句をつけて詠んだので一夜の宿を許されます。

夢枕に末社の神が現れ、老夫婦が住吉明神の化身であったことを告げます。
やがて、住吉明神が宮守の老人に乗り移って現れ、
西行の歌を褒め称えて舞い(真の序の舞、または、簡略した立ち廻り)、
神は去り、老人は元の宮守となって帰っていくのでした。

最後のクライマックスの真の序の舞について馬場さんは、
西行に歌の極意を授けるために住吉明神が再び現れ、
静かに雅に真の序の舞を舞う。
舞を舞う気持、歌を詠う気持、共に内なる気持の表現である。
全ては自然(宇宙)の表れであり、心を澄ませば神の声を聞くことができる
・・・と。

私めは、素晴らしい先導者のお話を聞きながら、
極限まで抑えたシテ(大槻文蔵)の所作に驚きながらも
途中いつものごとく、うつらうつら・・・気持ちよくまどろみました。
それでも、大鼓(柿原崇志)の音に「ハッ」と目覚め、
後半のクライマックスを観れたのは神のご加護かもしれません。

次回は、1月29日(土)「神道」です。
どんなことになるやら楽しみです。

      (第2回 神道 へ)                  

辛卯 初釜 (2)

2011年01月09日 | 稽古忘備録
炭手前が終わり、すぐに懐石をお出ししました。
出張懐石の京遊庵に初めてお願いしたそうですが、
助手とお二人で12人分の懐石がとてもスムーズでした。

「炭手前が始まったらお知らせください。ご飯を炊き始めます。
 香合が拝見に出たらお知らせください。盛付を始めます」
10人の膳がどんぴしゃりのタイミングでお出しできて嬉しかったです。
一文字も汁も温かく美味しそうでした。
Kさんと私は二度目の飯器をお出しした後、
初釜なので席中に持ち出させて頂き、相伴しました。

初釜の茶事献立をご紹介します。

   向付   鯛へぎ造り
          紅芽  防風  わさび
   汁    白味噌仕立  手鞠麩
          黒豆  からし
   煮物   清し汁仕立  蟹真薯 
          小かぶら  大根  人参  柚子
   焼き物  寒鰤照焼き
   強肴   海老芋  引き上げ湯葉
          梅麩  椎茸  柚子
   強肴   ふく  水菜
   小吸   松の実  裂き梅
   八寸   伊勢海老   慈姑
   香物   沢庵  栄漬け  高菜漬け

主菓子ははなびら餅(喜月製)を縁高でお出ししました。

中立ちのあと、後入は銅鑼でお知らせしました。
大小大小中中大・・・ところが蹲に進まれる様子がありません。
音が小さかったので聞こえなかったのでしょうか?
にぎやかな声がしていますので、もう一度銅鑼を打ち直しました・・・。

             

後座の床は、赤い椿一輪でした。

後座から水屋担当なので、島台茶碗2個を十分に温めました。
新しい茶巾、新しい茶筅、茶杓を仕組みました。
先生が濃茶を練ってくださって、二服目にKさんと一緒に末席へ入り、
しっかり練られた濃茶をたっぷり頂きました。
濃茶は小山園の慶知の昔です。

続き薄茶になり、煙草盆と干菓子を運び出し、Kさんが台子薄茶点前です。
三客さまの薄茶をKさんが点て始めた頃に替茶碗の茶を点てだしました。
社中なのでお客のお一人に半東をお願いしました。
全員に薄茶を喫んで頂いてから、仕舞つけ、道具拝見となりました。

道具を引いてから私とKさんがご挨拶に出ました。
「ふつつかなながら初釜の亭主をつとめさせて頂きまして、ありがとうございます。
 皆さまのご協力のおかげで、無事終了することができました。
 本年もどうぞ宜しくお願いいたします」

最後に、恒例の福引と辻占いです。
盆に乗った折鶴を一羽ずつ取り回しました。
中に名前(鶴、亀、松、竹、梅、菊、百合、椿など)が書いてあって
賞品の名前と合わせます。
次いで干菓子盆に乗った金沢・高砂屋の辻占いが取り回されました。
一人ずつ読み上げて、意味深長な言葉に、意味深長な解釈がついて大笑いです。
私の辻占いは「何事にもご用心」でした・・・。

こうして辛卯の初釜は目出度く楽しくお開きとなりました。


          辛卯 初釜(1)へ
                               
 

辛卯 初釜 (1)

2011年01月08日 | 稽古忘備録
1月6日、辛卯の初釜が厚木市にある茶室で行われました。
呉服屋さんの奥の間にある茶室は八畳(京間)の広間、
寄付も待合も広いお部屋で、全館貸切でした。

正午の茶事で、私は初座の亭主、後座では先生が濃茶を煉り、
続き薄茶でKさんが薄茶を点てました。

床には、先生が用意された結び柳と俵が荘られました。
軸は益田鈍翁筆「温知」、「温故知新」の「温知」です。
最晩年の作だそうですが、なかなか迫力と存在感のある筆でした。
床柱には紅白の椿が竹一重切に入れられています。

その日は穏やかな晴天でしたが、お正月のことゆえ湯桶を用意して
迎え付けをしました。
ところが湯桶は使われないままでして・・・ちょっと残念。
(亭主側としては使って頂いた方が嬉しいですね・・・)

初入のあと先生のご挨拶がありました。
「おめでとうございます。
 皆さまお揃いで今年も初釜を迎えられまして嬉しゅうございます。
 大晦日と元日は同じ一日なのですが
 一夜明けると同じ一日が年の初めということで
 清々しく新たな気持ちで一歩を踏み出せます。ありがたいことです。
 今年もまたご一緒に精進してまいりましょう」

社中の皆様と一人ずつご挨拶が交わされてから、
台子初炭手前となりました。
「釜は?」
「般若勘渓作の園城寺釜写で、園城寺の字が鋳込まれています」
「趣のある好い釜ですね。
 先ほどは濡れ釜の風情を愉しませて頂き、有難うございました」

炭を継ぐ時に枝炭が上手に取れず1本だけ継ぎましたら、
先生からお声が掛かりました。
「枝炭は二度に継いでもよいそうです。
 お正月ですからもう一度継いでください」
それで枝炭3本を継ぎ足しました。

後掃きをし、香を焚き、火箸を炭斗へ置くときに
香合の中の椿の葉を炭斗へ落としました。
香合の蓋をすると
「香合の拝見を」と声がかかりました。

                 

釜を掛けてカンを外して炭斗へ入れ、羽根で釜の蓋を清めます。
炭斗中の火箸を取り、左手に持たせ、右手で羽根をとって
火箸を表2回、裏1回清め、羽根を炭斗へ戻してから、
火箸を杓立へ戻します。

さて、ここからが問題でして、
炉正面へ戻り、帛紗を捌いて釜の蓋を切りました。
お稽古の時に先生から
「広間では座掃きがないので、すぐに蓋を切ってよろしい」
と伺ったような気がするのですが、はっきりと覚えていません・・・。

何処からか
「茶事では香合を取りに出るときに蓋を切るのでは?」
という声も聞こえてきます。
初釜では、亭主次第・・ということにさせて頂いて、すぐに蓋を切りましたが、
改めて先生に教えを乞おうと思っています。

「香合は?」
「高砂蒔絵のぶりぶり香合で、作は秀甫でございます。
 木地は松の溜塗です。 
 高砂の翁と媼のように目出度く年を重ねたいと思いまして
 初釜に使わせて頂きました」
「今日の参加者にぴったりのお目出度い香合で嬉しゅうございます」

「お香は?」
「坐忘斎お家元お好み、松栄堂の松涛でございます」

ぶりぶり香合はとても立派なもので、初めて拝見した時は目を見張りました。
片手では持てずに両手で持ちました。
また、天板に荘る時は羽根を上に乗せてバランスをとりました。

   
          辛卯 初釜(2)へつづく           



初稽古  台子初炭手前

2011年01月06日 | 稽古忘備録
我が家の初稽古は5日でした。
といっても私一人の自主稽古です。
夏期講習会は終わってしまいましたが、今年も自主稽古に励もうと思っています。

6日の初釜で台子初炭手前をさせて頂くので
正月休みで鈍った体を少しでも動かしておかねば・・・なのです。
一人で稽古してみると何処が曖昧なのか、よくわかります。

疑問に思っている箇所をじっくり考えながら、動作の流れ、
直したい所作を確認できますので、自主稽古はとても大事です。

・・・それに家族や家事から解放されて、お茶に集中する時間は、
自分が自分であるための時間であり、良くも悪くも自分に向き合う瞬間です。

「あなたは今何をやっているの?」
「あなたは今何をしたいの?」
「あなたが今やっていることはそれでいいの?」

いろいろあっても・・・最後には
「今やっていることは大正解!」と納得することにしています。

                

さて、台子の初炭手前ですが、
火箸の出し入れのタイミングが曖昧でした。

羽根と香合は天板に入の字に荘っておきます。
炭斗、灰器を運び出してから台子正面にまわり、
右手で羽根をとり台子前に真横に置き、香合を右手でとり、
左手に持たせ、右手で羽根を持ち、入の字のようにして(自然な感じで)
炉正面にまわります。

羽根を炉縁の右横に、香合を炭斗正面の縁内に香置きます。
台子正面へまわり、手を軽くついて火箸を取り、建水左側を回って
体正面で横にして左手に持ちかえ炉正面にまわり、
右手で火箸を上から持ち、羽根の右横へ置きます。
・・(中略)・・・

釜の蓋をア掃きをしてから羽根を炭斗上に置きます。
炭斗中の火箸を右手でとり、左手に持たせ、右手で羽根をとり、
火箸の表を二回、返して裏を一回羽根で清めます。
ポイントの一つなので、気持ちを込めて丁寧に清めました。

次に、羽根を炭斗上へ置き、火箸を右手で扱って左手に持たせ、
台子正面にまわり、手をついて杓立に戻します。
炉正面で帛紗を捌き、釜の蓋を切って、帛紗を腰につけ、
灰器、炭斗を引き、襖を閉めます。

青磁の亀香合を使いましたが、
初釜の香合は○○○○なので、椿の葉を六角に切って煉香を乗せます。
香を焚き、蓋をする前に炭斗へ椿の葉を落とすのですが
この所作を忘れたり、さりげなくできなかったりで、苦労しています。

これから初釜の準備で出かけますので、稽古はこれにて終了です。
初釜の○○○○香合をお楽しみに・・・。