暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

茶の湯釜に恋して  二代 畠春斎さん (1)

2009年09月28日 | 茶道具
茶道を再開してまもない頃のお話です。
夏休みの旅行で、黒部から立山、そして富山へ出かけました。
富山に一泊し、城址公園にある佐藤記念美術館へ行きました。

展示作品の中に糸目の筒釜がありました。
すっきりとシンプルで、糸目がはっとするほど美しく、気品を感じる釜でした。
「このお釜でお茶を点ててみたい・・」と思いました。
他の展示品を見てもその釜が気になって、また戻ってしまいます。

作者は二代畠春斎、1944年生まれ、高岡市金屋町に住まうとありました。
高岡といえば鋳物が盛んな土地で、富山から1時間くらいのところです。
主人に頼んで、高岡でもう一泊することに予定変更しました。
翌日、国宝・瑞龍寺、高岡古城公園、大仏を見てから、
千本格子の古い家並みが続く金屋町を訪れました。

すると、「釜師 畠 春斎」の看板を見つけたのです。
「ここだわ!あのお釜の作者さんの家だわ」
恐る恐る中を覘くと、店のような玄関のような一角に
棚があり、釜が並んでいました。

佐藤美術館で見た糸目の筒釜に似たものがあります。
夢中で中へ入り、奥へ声を掛けました。

年配のご婦人が出てこられたので、早速お値段を尋ねると
「○○万円です」
「はぁ~」
お茶を再開したばかりの私にはとても手の届かない金額でした。
そのご婦人に
「実は富山の佐藤美術館でこれとそっくりのお釜を見て
 急遽高岡へやってきました」
と言いますと、
「まぁ、それはそれは・・・。ちょうど春斎もおりますし、
 休憩の時間ですからどうぞ上ってください」

その方は畠春斎さんのお母様でした。
御本人と交渉すれば、もう少しお安くなるのでは・・・
という思いもあり、図々しく二人で上りこんで、
奥様が点ててくださった抹茶と菓子をごちそうになりました。

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     写真は、秋の七草の一つ「オミナエシ」です。