暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

千住博展(高野山金剛峯寺・襖絵完成記念)・・・そごう美術館

2019年03月18日 | 美術館・博物館




しきりに誘うものがあった。
なにもかもどこかに追いやって四国路を踏みしめたいという思いが年を追って深まっている。
そう思いながらも一方で、まだ機が熟さないというためらいがあり、なかなか踏み切ることができなかった。・・・後略


四国遍路のバイブル、辰濃和男著「四国遍路」(岩波新書)の冒頭の一節です。
「四国をまわりたい」病がむずむずと頭をもたげだした昨今のある日、そごう美術館で開催中の「千住博展」へ行きました。
昨年7月はじめに「アートをめぐる旅」の途中、直島の家プロジェクトで初めて千住博氏の作品「ザ・フォールズ」に出合い、いつか軽井沢千住博美術館を訪れたいもの・・・と思っていましたが、横浜で作品が見られるというのでツレを誘って出かけたのです。

入ってすぐに千住博の世界へ惹き入れられました。
高野山金剛峯寺奉納襖絵「瀧図」(5枚)と「断崖図」(4枚)が広い空間にゆったりと展示されていて、私を一気に異次元空間へ連れて行ってくれました。
それは、以前歩いた四国路で出会った人々であり、さまざまな経験や事象であり、それらを飛び越えた向うに弘法大師・空海(お大師様)の偉大で身近な存在(同行二人)がありました。


    「龍神Ⅰ・Ⅱ」   (撮影許可あり)
 (蛍光塗料を使っているので、明るい所では白い滝)

再び、辰濃和男著「四国遍路」から
 空海が山で得たのは、野性の生命力であり、自分が宇宙という生命体の一部だという認識だったろう。
雷雨があり、嵐があり、長雨の日々もあったろう。木々の萌える季節もあれば、日照りの続く季節もあったろう。
その自然界の移ろいのすべてが宇宙観の礎になった。



四季の「瀧図」の水の冷性に心身を清められ、断崖図」の前の腰掛けに座り、長い間飽きもせず眺めていました。
すると、焼山寺への遍路道を一人歩いている自分が脳裏に浮かんできて、「断崖図」の雲海の中から今にもお大師様が現われるような気がしました。
「遍路ころがし」と呼ばれる焼山寺への遍路道、びっしょり汗をかき、喘ぎながら魅了された、空と山と風と雲と木々と岩と・・・雄大な光景や自然が奏でるサウンドを体感した、あの時ほどお大師様を身近に感じたことはありません・・・。





    「龍神Ⅰ・Ⅱ」  (撮影許可あり)
(蛍光塗料を使っているので、真っ暗な中でブラックライトを当てると、青く輝く)

弘法大師開山の金剛峯寺、長年白襖となっていた大主殿の「茶の間」と「囲炉裏の間」に「断崖図」と「瀧図」の襖絵が奉納され、その完成記念の展示会に巡り合ったご縁に感謝です。
和紙(?)に胡粉を塗り、乾いてから揉み紙にして「断崖図」の質感や量感を工夫したエピソードや、「瀧図」の斬新な描き方など、千住博氏によって解説される制作工程のビデオも興味深く必見です。
「断崖図」の襖絵を開けると、奥の間(茶の間?)に「瀧図」の襖絵があり、その中心の滝の向こうに千住博氏が出逢ったお大師さまがいらっしゃるそうです・・・。(ステキですね 




高野山金剛峯寺 襖絵完成記念「千住博展」
 
  2019年3月2日(土)~4月14日(日)  開館時間:10時~20時
  そごう美術館(会期中無休)

    構成 1.高野山金剛峯寺奉納襖絵
       2.龍神
       3.千住博の歩み 1980-2018




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