暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

聴花の茶事・・・(1)無我

2024年05月27日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

           (岐阜県根尾谷の淡墨桜)

 

令和6年5月19日(日)に聴花の茶事をしました。

「聴花の茶事」は初めてなので、あれこれ迷いながらもお客さまやスタッフのご協力のお陰で、楽しい茶事になりました。

先ず道具組ですが、花に因むものは避けようと心がけました。でも、後から考えると3つだけ花のものがありました。

1つは点前座の水指です。揖保川焼の女性陶芸家・池川みどりさん作で草花文が描かれています。池川みどりさんの個展へ初めて行った時に気に入って求めたもので、「黙坐」という銘が付いています。

花の心、言葉、色、香りに耳を傾ける茶事なので、この水指「黙坐」を使いたいと思いました。

2つ目は貝の香合。ウン十年前、最初にお習いした先生から頂戴したもので、ある先輩の手作りの御品です。新米の私がその先輩の前で薄茶点前をすることになり、自分でも信じられないくらい緊張して茶筅を持つ手がブルブル震えてしまいました。

その時に「こんなに緊張感をもたらすお茶ってなんて素晴らしいのかしら! もっともっとお茶を究めたい・・・」と思い、茶の道へのめり込むきっかけになった記念品です。

全体が黒漆で塗られ、表に桜の漆絵が描かれているので、岐阜県根尾谷の「淡墨桜」にあやかって「淡墨(うすずみ)」という銘をつけています。

根尾谷の「淡墨桜」、樹齢1500年以上の枝垂れ桜の老木です。蕾はピンク、満開時は白、散り際は淡墨色に変わるそうです・・・・。

     (「淡墨(うすずみ)」と名付けています)

3つ目は濃茶の茶杓です。紫野高桐院・松長剛山師の御作で銘を「花の宿」といいます。宇和島市在住のK先輩から「花のお茶事の時に使ってね・・・」とだいぶ前に頂いたのですが、「今使わなくっていつ使うの?」と喜び勇んで使いました。

 

前置きが長くなりましたが、お客さまは、正客Ⅰさま、次客SAさま、三客FIさま、詰KMさまの4名様です。

詰KMさまの打つ板木の音が聞こえ、いよいよ茶事のスタートです。

待合の掛物は坐忘斎お家元の寿扇「松風傳古今」、教授拝受の折に頂いた宝物です。

半東KTさんが冷たいレモングラスをお出しし、お客さまの持参した「花に因むもの」をお預かりし、腰掛待合へご案内しました。

実はご案内の手紙に「当日、花に因むものをお持ち出し下さい。そして貴女の花ものがたりを席中でお聞かせください」とお願いしていたのです。

当日までどのような花に因むものをご用意くださるかわからなかったので、亭主側にとってもドキドキでした。いろいろ想像しながら花台一式と花入2つ、茶道具だったら床に莊る古帛紗や帛紗などを用意し、席入り前に持参の品々を床に莊りました。

 

初座の席入り後、4人のお客様と嬉しくご挨拶を交わしました。 

床の掛物は「無我」、林昌寺住職でいらした周藤苔仙師の御筆です。「無我」の意味するところの奥深さに惹かれ、字の読みにくいところも気に入っています。

何か心にひっかかることがある時、この御軸に対面すると「それは全て自分の我にこだわるせいではないか、我の欲望(自尊心、慢心、自己中心など)を捨て去り、無になりなさい。そうすれば心穏やかで閑かな境地へ導かれるでしょう」と言っているように思うのです。

それに今日は「聴花」の茶事です。「無我」の境地にならないと、花が発する声は聞こえないかもしれません。花の声はとてもひそやかなので・・・そんなことをお話ししました。

 

最初に初炭をしました。

都合により後炭を省略するので、朝茶事のように初炭で風炉中の拝見をしていただきます。それでいつになく灰形を頑張り、一つ山前谷の灰形に挑戦してみました。

炭斗はミャンマー籠、火箸は龍玉頭(16代大西清右衛門造)です。「ひねもすのたり正午の茶事」の後にお正客KS様から「これからの立礼の茶事で縁起の良い龍玉頭火箸を是非使ってください」と恵贈されたもので初使いでした。 

香合は貝で銘「淡墨」、香は沈香(松栄堂)です。  つづく)

 

     聴花の茶事・・・(2)花ものがたりへつづく  (3)後座と花へ  

             (4)後礼のお手紙へ

     聴花の茶事の支度中です

 


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