尺八さんとの最初の出会いは第十二番札所・焼山寺です。
焼山寺宿坊を出立すると、遍路道への分岐点に
お遍路さんらしい男性が立っていました。
遍路道を進むと、なんとその人が後から付いて来ます。
鬱蒼と杉の木立に覆われ、シャガが咲き乱れる遍路道は
急坂で、転びそうになりながら下りました。
すると思いがけず、尺八の音色が聞こえてきたのです。
遍路道のBGMにぴったりと思いながら、足を緩め
哀調を帯びた尺八の音色に聞き惚れました。
高く、低く、心の奥深く染み渡る曲です。
焼山寺下の「杖杉庵」を過ぎると、
その人の姿は急に見えなくなりました。
尺八さんと再会をしたのは第十九番札所立江寺です。
寺へ着くと尺八が聞こえたので「もしや?」
やはりあの時の尺八さんでした。
私のことを覚えていてくれて、焼山寺遍路道の心に沁み入る尺八は
「たむけ」という曲だと教えてくれました。
「これから献茶をするので、あとで一服差し上げたい」
と申し出たら、とても喜んで、私の点前を静かに見守っています。
「美味しいお茶を頂いて、何かお礼をしたいのだけれど・・・」と尺八さん。
「お礼はいりません。でも、よかったら一曲吹いていただけませんか?」
「それでは、はぜ取り唄を一曲。」
「はぜとり唄」は九州の民謡です。
はぜ(和蝋)を取るには、幼い時からはぜに身体を慣らし、
かぶれない体質にしていくそうで、過酷な労働の唄なのだそうです。
「はぜ取り唄」は静かに物悲しく、参拝者が少ない境内へ、
そして私の心の中へと拡がっていきました。
尺八さんとの出会いと再会。
無心に吹いている尺八の音色。
何とも言えないシアワセを感じて、涙が出そうになりました。
「そうだ! 私はこういう瞬間を求めて遍路の旅へ出たのだ!」
立江寺の前で尺八さんと握手をして分かれました。
戴いた「納め札」で静岡県菊川の人と知りました。
(前へ) (つぎへ) (この項トップへ)
焼山寺宿坊を出立すると、遍路道への分岐点に
お遍路さんらしい男性が立っていました。
遍路道を進むと、なんとその人が後から付いて来ます。
鬱蒼と杉の木立に覆われ、シャガが咲き乱れる遍路道は
急坂で、転びそうになりながら下りました。
すると思いがけず、尺八の音色が聞こえてきたのです。
遍路道のBGMにぴったりと思いながら、足を緩め
哀調を帯びた尺八の音色に聞き惚れました。
高く、低く、心の奥深く染み渡る曲です。
焼山寺下の「杖杉庵」を過ぎると、
その人の姿は急に見えなくなりました。
尺八さんと再会をしたのは第十九番札所立江寺です。
寺へ着くと尺八が聞こえたので「もしや?」
やはりあの時の尺八さんでした。
私のことを覚えていてくれて、焼山寺遍路道の心に沁み入る尺八は
「たむけ」という曲だと教えてくれました。
「これから献茶をするので、あとで一服差し上げたい」
と申し出たら、とても喜んで、私の点前を静かに見守っています。
「美味しいお茶を頂いて、何かお礼をしたいのだけれど・・・」と尺八さん。
「お礼はいりません。でも、よかったら一曲吹いていただけませんか?」
「それでは、はぜ取り唄を一曲。」
「はぜとり唄」は九州の民謡です。
はぜ(和蝋)を取るには、幼い時からはぜに身体を慣らし、
かぶれない体質にしていくそうで、過酷な労働の唄なのだそうです。
「はぜ取り唄」は静かに物悲しく、参拝者が少ない境内へ、
そして私の心の中へと拡がっていきました。
尺八さんとの出会いと再会。
無心に吹いている尺八の音色。
何とも言えないシアワセを感じて、涙が出そうになりました。
「そうだ! 私はこういう瞬間を求めて遍路の旅へ出たのだ!」
立江寺の前で尺八さんと握手をして分かれました。
戴いた「納め札」で静岡県菊川の人と知りました。
(前へ) (つぎへ) (この項トップへ)