暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

楽美術館茶会ー2  茶碗との出合い

2014年05月20日 | 献茶式&茶会  京都編
(つづき・・・やっと
5月11日の楽美術館茶会から1週間以上経ってしまいました。

茶会で出合った6つの茶碗は
1)不二乃絵赤楽茶碗 (流芳五十之内)

  大きく口縁がうねっているような歪みのある造形、とても重く、
  思わず両手で扱って、この茶碗で薄茶を頂戴しました。
  赤楽ですが肌色に近く、胴に白い不二らしき画があります。
  ・・・覚々斎手造り50の茶碗の一つで、他に江岑50年忌に使われた
  「鈍太郎」という黒楽茶碗があるそうで、前に拝見したかも?

2)赤楽茶碗 伝来「武蔵野」写  9代了入

  実はあまり感動なく拝見、その様子をみてか、当代が・・・
  「この茶碗は表千家に伝来されている古萩「武蔵野」の写しですが、
   実によく雰囲気や三つ割高台が写されている茶碗です」と力説。
   さらに
  「楽茶碗は手づくねですが、萩は轆轤を使います。
   この茶碗は手づくねですが、轆轤をひいたように見せ、このように
   石ハゼまでそっくりに写しています」
   ・・・飛び上がってもう一度拝見し、帰宅後、「武蔵野」を茶道大辞典で
   すぐに調べましてございます(汗)。

3)御本写楽茶碗  10代旦入作
  肌色に御本の赤が美しい、赤楽茶碗だったと思う・・・。 

            

4)鷺之絵赤楽   狩野永岳画 11代慶入作
  鷺の絵は大好きなので、雰囲気のある茶碗でした。
  高台を見せながら
  「これは茶碗ではなく向付か小鉢として作られたものですが、
   赤や黒の楽茶碗ばかりではつまらないので、遊びを入れました」

5)菖蒲之画赤楽茶碗 即中斎画賛 14代覚入作
  大きく、力強く、一目で覚入らしい作風と思いました。
  見込みに「五月」とあり、菖蒲画と共に即中斎の手によるものです。
  「杜若づくし」の茶会にぴったりの茶碗でした。

6)黒楽茶碗 銘「初冠(ういこうぶり)」 
  襲名初造之内  大印在  15代吉左衛門(当代)

  必ず一つ、当代の茶碗がでますが、若き日の作「初冠」は
  在原業平のカキツバタの和歌と重なって、嬉しい趣向でした。
  しかも、この茶碗はとても凝っていて、釉薬が二重掛けされています。
  艶のある黒釉の上にカセた釉薬が掛かり、
  黒の役者たちの競演を見るような、深い味わいを感じる茶碗です。
  楽印は大小二つあって、今は高台内に小を使っているそうですが、
  大印を使った数少ない一つとか。

他にも楽茶碗に使う「土」を世代を超えて寝かせ、大事に使っている話や、
展示中の「あまやき(尼焼)」にまつわる話など興味深く伺いました。

            

茶会後、2階の展示を拝見、次の2つの茶碗を書き留めておきます。

1)比丘尼  黒楽茶碗(尼焼)
  元伯宗旦  武者小路千家・5代文叔書付  

  先ず形に魅せられる・・・ほっそりとした胴長(半筒?)で小振り。
  今まで遭ったことのない形と柔らかい雰囲気を持っています。
  黒の釉薬の半分は光沢もあり滑らかな反面、もう半分は
  茶色に近くカセていて、肌も荒々しく、二面性が何とも・・・。

  解説・・・「尼焼」は長次郎の妻の作とされる。
  作行き、上味、釉調から判断して、道入以前の古楽の作品と考えられるが、
  作者の特定はむずかしい。

2)十五代吉左衛門(s.24~)
  焼貫黒楽茶碗  銘「砕動風鬼」

  解説・・・「激しさの中にあえて身を置き、己を見つめた。
  長次郎とは真反対の方向、装飾の彼方へ投げ出す。
  形は鬼なれども心は人なる風体。
  世阿弥の「二曲三体人形図」から、その時の心情を銘に託して
  「砕動風鬼」と名付けたという。
  焼貫の技法で、しかも楽茶碗において初となる金彩、銀彩により
  装飾された一碗」

  感想・・・茶碗と解説を見ながら、次のフレーズが頭を横切っていきます。
  能  能舞台  能役者の光と影  栄光と挫折と 百鬼夜行・・・
  手に余る大きさの茶碗、形も印象も鋭く激しく、
  金彩と銀彩の肌に、眉間の縦じわを連想する深い黒、
  心血をあらわすような赤のまじわり・・・好悪いろいろな感情が消えては現われる
  不思議な茶碗にしばし魅せられ、見つめます。

  圧倒されながらも
  「この茶碗でお茶を喫んでみたい!」
                             

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