暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

正午の茶事-風吹南岸柳 (2)

2014年04月20日 | 思い出の茶事  京都編
                  散り椿   府立植物園にて
(つづき)
銅鑼の音を聴くのも茶事の楽しみの一つです。
音色と間合いの良さが好ましく、Yさまの日頃の精進が伺えました。

後座の床に、白い鯛釣り草と紅い椿が春の歓びを謳い上げていました。
美しく自然釉がかかる花入は伊賀焼の旅枕でしょうか。
誰が袖棚にたっぷりした染付の水指が爽やかに映えています。

           
                    鯛釣り草と紅い椿

黒の楽茶碗が運び出され、濃茶点前が始まりました。
袱紗捌きの衣擦れの音に心地好く耳を傾けていると、
ゆらゆらと釣り釜が揺らいで、なにやら眠気が・・・。

佳い薫りがして来て、眠りの谷底から覚醒しました。
湯を汲み、しっかりと練ってくださった濃茶の美味しかったこと!
湯の温度も熱すぎず、たっぷりと頂戴しました。
茶銘は錦上の昔、詰は柳桜園です。

前席のお菓子は、白と黄色のきんとん、黄身餡が珍しく新鮮でした。
ご亭主の手づくりの一品でした。

           
                   菜の花畑

黒の楽茶碗を手に取ると、釉薬が二重掛けされているのでしょうか。
なだれが胴を一巡りして、独特の景色を作り出しています。
窯元は玉藻焼(たまもやき)、作者は初代・氏家常平でした。

香川県高松市にある高松城は海に面していて、玉藻城と呼ばれています。
柿本人麻呂が讃岐の国の枕詞に「玉藻よし」と詠んだことから、
このあたりは玉藻の浦と呼ばれ、名の由来となったそうです。

私にとって玉藻焼は懐かしい思い出があります。
四国遍路の折、玉藻城へ寄って、疲れた足を休めたことがありました。
そのことが忘れられず、玉藻焼の赤楽茶碗を入手し、今も愛用しています。

玉藻焼の黒楽で濃茶をいただけたことに嬉しいご縁を感じました・・・。
茶入は朝日焼の肩衝、粋な縞模様の仕覆は青木間道です。
茶杓は、方谷文雅和尚作の銘「華衣(はなごろも)」、
中節から下の景色が古代衣裳の「裳(も)」を連想させるステキな花衣です。

           

煮えが落ちてきたところで、後炭となりました。
釣り釜の初炭も久しぶりでしたが、後炭はさらにご無沙汰しています。
釣り釜が上げられると、炭が綺麗に流れていて、五徳がないせいか、
残り火の姿は一段と胸に迫るものがありました。
炭がご亭主の意のままに選び置かれ、輪胴止めでした。

この時の後炭の風情に心惹かれ、いつかしてみたい・・と思います。

           
                六角堂(頂法寺)の柳

すぐに煮えがついてきて、薄茶になりました。
干菓子は野菜の砂糖漬け、ハス、サツマイモ、人参、柚子など5種、
これも手づくりです。
ステキな薄茶茶碗が次々と登場し、干菓子をモリモリ賞味しながら、
2服ずつ美味しく頂戴しました。
最後にご自服して頂き、はやお別れの時が近づいて来ました・・・。

相客のMさま、Sさまと愉しく過ごさせて頂きましたが、
ご亭主から懐石のヒントやお点前の刺激をたくさん頂戴しました。
お心こもるおもてなしに感謝しております。                      
                                 

                          
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