暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

北条節句まつりの茶事ー2

2014年04月12日 | 思い出の茶事  京都編
             桜と土筆の干菓子(特別に撮らして頂きました)
(つづき)
初炭で炭が置かれ、懐石と続きます。

近所の野原で摘まれた土筆(つくし)があちこちに登場です。
最初は汁、蓬団子の上に辛子と共に、
次は八寸、土筆を油でいため、つくだ煮風に煮込んだもの。
最後は干菓子、土筆の砂糖菓子・・・これも自製と伺い、もうびっくり!

毎回違う懐石道具が登場するのも嬉しいご馳走です。
絵唐津の向付に貝と春野菜のヌタ、美味しく平らげると、
春風に吹かれる柳が描かれていて、風情よく気に入りました。
すると、ご亭主から
「この向付は10枚あるので、よかったら半分お分けしますよ」
「はい、頂きます」
即答でした・・・こうして、柳の向付が我が家へやって来ました。
物を増やしたくないのに・・・と反省しながらも嬉しい出合いです。

中立の頃、東西2基の神輿が威勢よく練り歩いてきました。
担ぎ手は30人位、揃いのはっぴ姿に伝統を継承する心意気を感じます。
2階から神輿を見物するとは、なんと畏れ多くも贅沢なことでしょう。

            

銅鑼の音で後座の席入です。
床の花は、利休梅と貝母と椿、趣きある竹一重切に露を含んで・・・。

濃茶点前が始まりました。
運び出された大きな茶碗が目を惹き、建水は槍の鞘です。
火相、湯相もよく、茶香が立ちのぼる中、濃茶が煉り上がりました。
一口含むと、まろやかな甘みが口内に広がっていきます。
「大変おいしゅうございます」
濃茶は姫路・成瀬松寿園の「松寿」、
菓子は銘「ひとひら」、さくら一片の練り切り(?)です。

茶碗を拝見すると、見込の目趾がこんもりと緑に盛り上がって、
初めて感じる濃茶の景色です。
大きな茶碗は高麗、瀬田掃部(かもん)所持の「水海(みずうみ)」を連想しました。
「水海」は畳目十四半の大きさの平高麗茶碗だったとか。
そこまで大きくないにしても、いろいろ想像をめぐらせて愉しみました。
小振りの茶入は高取焼、形は文琳でしょうか?

            

            

後炭で炭が直され、薄茶になりました。
この頃、笛や太鼓の祭囃子が近づいてきて、落ち着きません。
ご亭主は心得ていらして、薄茶の合間に屋台見物をさせてくださいました。

なんせ、初めての北条節句まつりの屋台巡行ですもの!
先導するのは山高帽をかぶり正装の区長さん、屋台を取り囲む着物姿の男衆、
天女の刺繍のある垂幕が目を楽しませてくれます。
「この目線で、手が届く近さで屋台が見られるなんて・・・」
みな異口同音、お祭り気分も最高です。

それに、何と言っても担ぎ手やお囃子の若者が粋でかっこいいです!
着物をはしょっているので、長襦袢がみえるのですが、
遠目にもお洒落で色っぽいです。

         

十分拝見したので障子を閉め、薄茶二服を頂きました。
祭囃子が遠く近く聞こえる中、何とも言えぬ心豊かな時間が過ぎていきました。
北条町に長く伝承される祭りや地域の文化、日本(京都)に住む幸せ、
この日の一期一会のご縁を感じながら・・・。

ご亭主に自服して頂き、お道具拝見です。
棗の内側に何やら蒔絵で描かれていますが、よく見えません。
お尋ねすると、桜の一片を特注されたそうで、作者は岩淵祐二さんです。
干菓子(さくらとつくし)が乗る盆にも桜を抜いた意匠があり、
こちらも岩淵さんの作でした。
松の材で作られた茶杓はその銘も「まつりばやし」です。

この佳き日の茶事へお招きくださったGさまに感謝しながらお暇しました。
祭りに浮かれて落ち着かない正客でしたが、ご勘弁くださいまし。
Kさま、Hさま、Mさま、お世話になり、ありがとうございました。

まだ、あの時の祭囃子が耳に残っています・・・。         


           
            車で明石まで送って頂き、
            8時過ぎに帰宅しました
            

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