暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

伊勢神宮 献茶式

2010年05月15日 | 茶道楽
5月10日に伊勢神宮で行われた坐忘斎お家元の献茶式へ
初めて参席しました。

前日早くにKさんと伊勢市駅へ着き、外宮へお参りし、
それからバスで内宮へ向いました。
五十鈴川に架かる宇治橋はヒノキの香りが満ち溢れています。
橋を渡ると伊勢神宮の聖域です。

深い森の「気」を感じて思わず深呼吸し、
五十鈴川御手洗場(みたらし)で手を清め、俗塵を洗い流しました。
御正宮のお参りを済ませてから献茶式が行われる神楽殿を確かめ、
夕食会場の松阪「和田金」へ・・・(さすが松阪牛、美味でございました!)。

             

献茶式当日、二十回以上参席している先生のご指示に従い、
朝八時から式場の神楽殿前に並び、整理券をもらいました。
番号は007です。
献茶式が始まる前に参集殿の茶席へ入りました。
待合の掛物は「蝦夷鶴ノ舞」、
本席は坐亡斎お家元筆で「花鳥風月宿」。
菓子銘は牡丹の別名「深見草」です。

先生が正客をつとめられ、四客で薄茶を頂きました。
小振りの茶碗にたっぷり点てられた薄茶は何よりのご馳走です。
茶碗は絵高麗で、色、絵、土、形、高台が味わい深く、
「絵高麗ですが中国のもので、見立てらしいです・・」
と席主から説明がありました。
お隣から「是非、お茶碗の拝見を」
と声が掛かりました。山形からいらした方でした。

           

朝早くから並んだ甲斐があって、最前列の席で
献茶式に参列する事が出来ました。
桐台子の天板に茶碗がのせられた台が左右に二つ、
中央の盆には白い仕覆に入った茶入が二つ荘られています。

献茶式は、神官が祝詞を奉じたあとに真の炭手前で始まりました。
先ず濃茶、次に薄茶が点てられ、
神官が取り次いで神前に運ばれました。
同行のKさんは、お家元の釜カンを扱う手の動きに感激したそうですが、
羽箒の扱いと掃き方、厳かな中にもリズムを感じる所作が印象に残りました。

献茶のあとに御神楽(みかぐら)が奉納され、
四人の巫女が榊を持ち、赤い袴の裾捌きも見事に舞いました。
雅楽の調べにのって、ゆったりとしたシンプルな舞です。

次いで頭冠束帯姿の若き舞官が一人舞いました。
今まで見たことのない足の動きや振り付けに驚き、
2メートル近い裾をひるがえして大らかに踊る姿は
優雅な中にも迫力を感じました。

お家元の献茶、雅楽の調べ、神楽の舞い・・・
日常の佇まいとはかけ離れた世界に浸ることが出来て
とても良い時間を過ごす事ができました。
Kさんと神楽殿を名残惜しく振り返りながら
「伊勢神宮の献茶式には着物より十二単が似合うわね」

平安時代にタイムスリップしたような厳粛かつ典雅な献茶式で、
今まで参席した中で一番心に残る献茶式となりました。