goo blog サービス終了のお知らせ 

暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「さくらの茶事」・・・(4)終章・後礼の手紙

2022年04月11日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

      (枝垂桜が満開です・・・散歩道にて4月5日撮影)

つづき)

「さくらの茶事」の当日(4月3日)は気が張っていたのでしょうね・・・翌日は朝から腰痛がひどく、ひたすら安静に努めました。そんな中でいただいたメールや手紙は何よりの薬となり、感謝感激しています。

茶事の思い出として掲載させていただきます。よろしかったらご一読ください。

          

 SKさまより

暁庵様

 過日は夢のようなさくらの茶事の一日をありがとうございました。

 ご趣向を凝らした設えそしてご亭主様、水屋の皆様のお心配りに感服いたしました。

 寄付きのお歌そして本席の白秋の薔薇の歌が心に響いて参りました。

 美しい御膳そして温かなお椀が連客の皆様との楽しいひとときを作ってくださいました。

 そして後席の見事な展開には眼を奪われました。

 お花と普賢菩薩様に守られ心安らぎこの上ない濃茶を頂戴いたしました。

 お仕舞の散華には感涙の思いでした。

 忘れがたき日を感謝申し上げます。

 義母の故郷のお菓子との出会いも一層嬉しゅうございました。

 不白に因んだお心のこもった銅鑼の音にまたのお目もじを祈りました。

 どうぞ暁庵様におかれましてはお疲れが出ませんように願っております。  SKより

 

       Rさまから写真が届きました)

 

 

 EKさまより

昨日は暁庵の茶事クロスロード400万頁突破記念の「桜の茶事」にお招きいただき、本当にありがとうございました。

 ご心配されていた天気の移りに、準備が変わって大変だったと思いますが、このところの寒の戻りと小雨で桜も葉桜にならずにすみました。また雨のおかげで蹲の場所が変わり、公園の春雨に舞う桜を見ながら手水を使うことができました。思わず雨に舞い散る桜花を惜しむ謡曲「熊野」のような情趣を味わいました。

 さてお茶事について・・・もう感動したことがいっぱいで書ききれません。まず思ったことは「さくらの茶事」ですから、単純な私でしたら桜に因んだ道具をこれでもかと出してしまうのですが、もろに桜だったのは香合だけだったような。しかも先生が茶道に没入していくきっかけとなった思い出の香合だったとは。

 その後もいろいろなお道具、特に各服点のおかげで沢山、お茶碗が出ました。先生が説明してくださいましたが、ブログの愛読者である客から見ると、あ、あれはあの時の・・このエピソードは・・・と、先生の茶道生活の歴史をいっしょにたどることができて、とても楽しかったです。

 客は先生のブログを通して啓発されたりご縁をいただいたりした者ばかりですから、先生ともっとお話ししたい!という気持ちでいっぱいでした。

その気持ちを知ってか、優秀な社中のスタッフが助けてくださいました。凛々しい半東さんの行き届いたご案内やお心遣い、また肌寒い日に美しい後炭はとりわけ御馳走でした。京都人には懐かしい壬生寺の炮烙が灰器になっていたのも嬉しかったです。

薄器は春の花の野辺に跳び遊ぶウサギさん。薄茶は存在そのものが薄墨桜のようなお点前さんが点ててくださり、心をこめて選ばれたお菓子など、先生は安心してお任せできたことでしょう。お蔭様で先生とたくさんお話ができて、本当に感謝でした。

 そういえば見事なお掛物も社中の方のお手でしたね。薔薇の茶会のコンセプトであった白秋のうた。かの茶会でご一緒した方も多かったので、楽しかった薔薇の茶会も思い出しました。

 お客様もお正客をはじめ素晴らしい方ばかりで、こういうご縁を結んでいただけることも、先生のブログのおかげです。寄り付きに掛けてあった先生のお好きな歌のように、春の山辺の桜の下で亭主もお客ものんびりと花の宴を楽しみましたね。

 最後に床に掛けられた雲中供養菩薩に散華が降りかかり、コロナや戦争や災害で苦しむ人々が多い中、こうして茶道を続けていられること、素晴らしい茶友のご縁にあずかれることへの感謝の念に心がいっぱいになってしましました。

こんな感激をより多くの方にも味わっていただきたいので、是非、500万頁を目指して頑張ってくださいませ。またの御目文字を楽しみにしております。   EK拝

 

 SEさまより

さくら花散りぬる風のなごりには水なき空に波ぞたちける  紀貫之

「風」ではなく「雨」といった風情でですね。

暁庵先生におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

昨日は桜の茶事にお招きいただき、誠にありがとうございました。

「400万頁閲覧数の記念茶会」、先生の歩みが・想いが全て反映したお茶事に

私の力量でお礼状が書けますでしょうか。

 寄付きで「いざ」と皆で手を取り合いはいった山辺は、想像したよりも遥かに深山であり、

咲き誇る「薔薇の花」で諸行無常の中での自分の在り方を再認識し

目にも鮮やかなお料理の後は桜前線で濃茶の期待が高まり

雲中観音とろうそくの灯る茶室での薫り高く滑らかで清らかな濃茶

終焉に向けて喉を潤わせる清涼感のある薄茶

雲中観音に散華をと‥

室礼とお点前と演出とすべてに亘って先生の息吹を感じ

その中でお道具にも先生の歴史があり、伺う物語の楽しさに私もそこに参加しえた喜びを感じております。

釣釜の揺らぎと湯気、炎の揺らぎと煙、それらにのっている観音様

先生のお茶事でのストーリーが、一滴の雫が、川に大河になり海に注ぎ、雲になって雨に変化しまた雫となる、不思議な循環をお茶室で体験しました。

 不相応ではございますが、 この後も先生のお茶会・お茶事がありましたら

参加したい所存です。少しでも「すべて世は 事もなし」と胸を張れるように。

 パワーのあるお茶事、先生におかれましてはお疲れがでていないか・・只々案じております。

寒い日が続いています。どうぞご自愛くださいませ。    SEより

       (Rさまから写真が届きました)

 暁庵より  

お客さま、スタッフの皆さまに支えられてのブログ400万頁記念「さくらの茶事」、楽し ゅうございました。毎回、「これが最後かしら?」と思いながら茶事をしています・・・。

皆さま、ありがとうございました! 

 

     「さくらの茶事」・・ (1)へ戻る  (2)へ戻る  (3)へ戻る

                 「さくらの茶事」の支度中です

 


「さくらの茶事」・・・(3)後炭と薄茶

2022年04月10日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

        (後座の床と点前座)

つづき)

・・・濃茶が終わりました。既に膝と腰が限界なので、後炭は半東M氏に、薄茶はAYさんにお願いしました。そして茶室を少し明るくしてから末席に入ると、お客さまが温かく迎えてくださいました。

後炭になり釣釜を上げると、細目の炭を選んだせいでしょうか、胴炭までよく火が回っています。

M氏は手早く炉中の炭を直し、灰器の焙烙から匙香が焚かれ、湿し灰がサラサラと撒かれました。初掃きで炉辺に寄り、輪胴から炭が初炭と逆回りに継がれていく様子を皆で見守ります。

残り火の風情やM氏の手前所作を味わいながら・・・このままいつまでも皆で見ていたいと思いました。

薬缶が運ばれ、釜が濡れ茶巾で浄められると、湯気がほのぼのと上がり、お客さまからため息が聞こえます。車軸釜の美しい糸目や胴に鋳込まれている文様が濡れて浮き上がり、釜が喜んでいるようで暁庵も嬉しかったです。

 

       (後炭の稽古中です・・・半東M氏)

薄茶になり、煙草盆と干菓子が運ばれました。

干菓子はお点前のAYさんに選んでもらったもので、橘餅(きっぱん、沖縄・謝花きっぱん店)と源氏香(会津葵製)です。

橘餅は初めてで、柑橘類の砂糖漬けのようなお菓子の味が珍しく、とても美味しかったです。

源氏香(落雁)は52種類の中から季節によって変わるそうで、今回は「花宴(はなのえん)」と「若紫」でした。

薄茶はAYさんが三服までお点てし、四客さまからは水屋でお点てして運び出しました。薄茶は「舞の白」(星野園)です。

 

       (薄茶の稽古中です・・・AYさん)

各服点なので6個のお茶碗が並びましたが、ブログに登場したものあり、お客さまを思いながら選んだものありで、茶碗の話に花が咲いて嬉しかったです。

ブログを始めた頃に入手した祥瑞の茶碗、昨年5月の「薔薇の茶会」で使った茶碗(薔薇とすみれ)、歌舞伎に縁のある茶碗(「うずまき」)、京都御所の桜の茶碗、そして「茜雲」の茶碗でした。

薄器は花兎大棗、輪島塗の村田宗覚作、茶杓は高桐院の松長剛山和尚の銘「花の宿」です。

 

       (祥瑞と薔薇の絵の茶碗)

      花兎大棗と茶杓「花の宿」

最後になりましたが、花のことを書いておきます。

先日生けた土佐ミズキの黄色い花が終わり、新芽が出始めました。黄色の花房も見事でしたが、若緑の新芽の美しさも捨てがたく、枝を少し整理しピンクと白の椿を入れて「さくらの茶事」で使うことにしました。

蕾が朝に開いてしまいましたが・・、花入は京都・嵯峨野の竹寸切です。

 

          (さくらの花びらを散華しました)

拝見に出した棗と茶杓を水屋へ引いてから

「散華をさせていただきます」 

AYさんが桜の花びらを懸け仏さまに感謝を込めて散華しました。

散華の後だったので皆さまがまだ興奮冷めやらぬ中、スタッフも全員同席して、お一人お一人とご挨拶を交わしました。

「本日は本当にありがとうございました・・・(感無量です)

・・こうしてブログ400万頁記念「さくらの茶事」が無事に終了しました。 

 

   「さくらの茶事」・・(4)へつづく  (1)へ戻る  (2)へ戻る

               「さくらの茶事」の支度中です

 

 


「さくらの茶事」・・・(2)初炭と濃茶

2022年04月08日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

  (春雨が翌日も一日中続きました  4月4日撮影)

つづき)

4月ですが、大好きな糸目桐文車軸釜(釜師・長野新造)を釣釜に使い、根来塗りの炉縁にしました。

炭斗はミャンマー籠、外側は黒漆、内側が根来のような朱の漆塗りになっています。ミャンマーの仏教寺院を連想させるお気に入りです。

灰器は京都・壬生寺の大念佛と書かれた焙烙、灰匙は仙叟好み大判、羽根はフクロウです。

香合は蛤香合、蛤を黒漆で塗り、桜の一枝が金の漆絵で描かれています。
お茶を始めた頃にH先生から頂いた社中先輩の手づくりで、私にとって「緊張感を慈しみながらお茶を続けたい・・・」という原体験を思い出させる香合でもあります。
岐阜県根尾谷の「薄墨桜」をイメージして「墨染」と名づけて愛用しています。
香は松栄堂の坐忘斎家元お好みの「松濤」です。

            

               思い出深い香合「墨染」

初炭が終え、EKさまがブログ400万頁をお祝いして謡曲「鞍馬天狗」の一節を謡ってくださるというので、スタッフの方も一緒に茶席へ入らせて頂きました。

「鞍馬天狗」は、鞍馬寺の稚児(牛若丸)に平家打倒の兵法を授ける大天狗のお話です。

「・・・花に三春の約あり 人にひと夜を馴れ初めて 後いかならんうちつけに・・・」

「さんしゅん(三春)の約」とは、春が来て、花が咲くという自然の摂理を表していて「薔薇の詩」に相通じています。

鞍馬山の花見を臨場感たっぷりに朗々と謡いあげてくださり、長年にわたり鍛えられたお謡はさすがでございました。鞍馬山だけでなく京都の桜を懐かしく思い出しながら聞き入りました。

何よりの思い出になりました・・・ありがとうございます 

 

待合の椅子席へ動座し、昼食の松花堂弁当を召し上がって頂きました。お祝いなので赤飯付き、吸物だけでは・・・と思い、味噌汁をお出ししました。お酒は「越の寒梅」です。

給仕と接待は社中のY氏にお願いしました。

 

「観自在菩薩・・・」

掛け仏様が見守り、灯火が暗闇を照らす中、精神を集中して濃茶点前をしました。

帛紗を四方に捌き、茶入と共に心を清めて点前に没頭していく瞬間・・・いえ、もっと前から襖の前で茶碗を置いて席が静まるのを待っているあの時から・・・大好きな緊張感に満ちた濃茶点前が始まっていました。よろめきながらのお目だるい点前ですが、どうぞお許しください・・・

濃茶を茶碗に掬うと、たちまち薫りが茶室に漂い、心を込めて練りました。

各服点なので三客様まで暁庵が練り、四客様から水屋にて練った濃茶をお持ち出ししました。

濃茶は「延年の昔」(星野園)です。
前席の主菓子は「さくら前線」(金団)、いつも生菓子をお願いしている石井菓子舗(旭区都岡)に特注しました。桜の満開情報は関東地方北部へさしかかっていました。

主茶碗は御本三島、銘「伊備津比売」、次客様のお茶碗は一入作、銘「不老門」です。

     御本三島、銘「伊備津比売」

各服点なので一つ一つお客さまに合わせて茶碗を選び、それぞれの茶碗に因む「茶道具怖い?」のエピソードをお話しさせて頂き、楽しかったです。
茶入は唐津焼・井上東也作の朝鮮唐津の胴締め、仕覆は小真田吉野間道です。ブログでお馴染みの「迷っていたらツレが購入を勧めてくれた・・」というエピソードをご披露しました。

 

 

茶杓は、聚光院の先の住職であった隋応戒仙(雪山)和尚の銘「雲錦」です。戒仙和尚の奥様は「薔薇の詩」を書いた北原白秋の二番目の妻の江口章子(歌人)でした。そんなことにご縁を感じて選んだ茶杓です。(つづく)

 

  「さくらの茶事」・・・(3)へつづく  (4)へつづく (1)へ戻る

               「さくらの茶事」の支度中です

 

 


「さくらの茶事」・・・(1)薔薇の詩

2022年04月06日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

      さくら雨に煙る「私のサクラ」(左側です)

 

令和4年4月3日(日)にブログ400万頁記念「さくらの茶事」をしました。

その日はやわらかな雨が降っていてさくら雨でしょうか?

   裏庭の公園に染井吉野が十数本あるのですが、
   その一本に一際見事な枝振りの桜がありまして、
   「私のサクラ」と名付けて愛でております。
   大きく開口している台所の窓から洗い物や野菜を切りながら、
   朝な夕なに「私のサクラ」を眺め暮らしています。
   ・・・平和を感謝し、胸キュンになるくらい幸せな一時です。以前のブログより

満開の「私のサクラ」も春雨の中で大地に足を踏ん張って、散るのを我慢しているようでした。

 

待合に和歌の書かれた色紙を掛けました。

  いざけふは 春の山辺に まじりなむ

     暮れなばなげの 花の陰かは      素性法師(古今集)

  (さぁ今日は 春の山辺に出かけて皆で楽しみましょう
   日が暮れたら 花(サクラ)の他には何もない 花の陰で宿りましょう)

英訳(お正客Rさまよりご披露して頂きました)

    Come, just for today

   Let us lose ourselves in wandering

   Deep in spring hills—

   If darkness falls, how can we fail to find

   A place to sleep beneath those blossoming boughs?

 

     (玄関前の蹲から公園の桜を見る)

12時の席入りです。板木が打たれ、いよいよ茶事のスタートです。水屋でスタッフ共々気を引き締めます。半東M氏が桜湯をお出しし、ご案内しました。

「玄関前の蹲をどうぞお使いください。その後、茶道口から席入りをお願いします」

修理したベランダの腰掛待合や露地の蹲は使えませんでしたが、これもまた良し!といたしましょう。

お正客Rさまから順番に次客IHさま、三客SKさま、四客EKさま、五客SEさま、詰YSさまと親しくご挨拶を交わしました。

「さくらの茶事」のお客さまは6名様、今までに暁庵の茶事や茶会などにいらしてくださった方ばかりで、三客SKさまは京都・灑雪庵で催した「ブログ100万頁記念茶会」へも馳せ参じてくださいました。

・・・それで、最初から「さくらの茶事」で皆様に再会できた喜びでいっぱいでした。

 

床の掛物は、北原白秋の「薔薇の詩」です。

   薔薇の木に 

     薔薇の花咲く

         なにごとの不思議なけれど 

何度読んでも、なんて!さりげなく、生きることを後押ししてくれる「薔薇の詩」なのでしょうか。

季節がめぐって来ると、まるで何事の不思議も無いように薔薇の木に薔薇の花が咲きます。

当たり前のことのようですが、コロナウイルスやウクライナの戦争など思いがけないことが起っている昨今、薔薇の花が咲き、それを愛でることのなんと!素晴らしく、かけがえのないことか・・・としみじみ思います。

コロナウイルスの急速な蔓延で昨年の暁の茶事で掛けることが出来なかった「薔薇の詩」のお軸を「さくらの茶事」で掛け、皆で見ることができる幸せを思いました。  

(つづく)

 

   「さくらの茶事」・・・(2)へつづく  (3)へつづく    (4)へつづく 

              「さくらの茶事」の支度中です

 

 


暁の茶事 in 2022 ・・・(その3) 夜明けと濃茶

2022年02月14日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

    

つづき)

2月5日の日の出(横浜)は午前6時37分でした。

日の出から逆算して席入りの時間などをおおよそ決めていきます。挨拶、前茶、初炭はまだ真っ暗ですが、懐石の途中で夜が明けてきます。

懐石を食しながら夜明けの気配や障子の色の微妙な移り変わりを楽しんでいただけたら幸いです。

日の出頃に本来なら突き上げ窓を開けて朝の日の光を茶室に取り込むのですが、あいにく突き上げ窓がないので、障子とガラス戸を7時過ぎに次客Iさまに全開してもらいました。(本当は午前6時37分の日の出と合わせて・・・と考えていましたがいろいろあって遅くなりました・・・でも、これで良しです)

障子とガラス戸を開けると、夜明けの朝の空気がぴりっと冷たいけれど清々しく、東の空が茜色に輝いているのを見ることが出来ます・・・そのころまでには行灯も手燭も引いてしまいます。

深呼吸をして、冷気を胸いっぱい吸い込んで「新しい一日が始まるのだ・・・」と。

暁も夜明けも毎日同じようにある筈ですが、この日は特別の暁であり、夜明けのように思えました・・・。

 

懐石(朝食)が終わり、主菓子をお出しし、腰掛待合へ中立をお願いしました。

 

     (春曙光と猫柳、花入は揖保川焼で池川みどりさん作)

銅鑼の合図で後座の席入りです。

後座は梅の屏風を広げて、八畳の広間を四畳半の小間仕立てにしてみました。

床に春曙光(しゅんしょっこう)と猫柳を池川みどりさん作の揖保川(いぼがわ)焼の花入に生け、点前座には木屋町棚(表千家流)を設え、水指は唐津焼です。

 

 

濃茶を各服で練ってお出ししました。

初座の懐石まではゆるゆると、夜が明けて後座の濃茶と薄茶はさらさらとなすべし・・・と指南書にありました。

でも、濃茶は茶事のハイライト、美味しい濃茶を差し上げたいです。茶碗を運び出し、茶入と置き合わせてから、盆に茶碗3個を並べ運び出し、床の板の間に(亭主床なので)置きました。次いで建水と柄杓を運び出し、いつものように濃茶点前をしました。ただ、控えの茶碗にも適宜湯を入れて、茶碗をしっかり温めました。冬季には温かくよく練られた濃茶が何よりのご馳走だと思うので・・・。

濃茶は「延年の昔」(星野園詰)、前席の主菓子は「雪見車」(練切の白椿)(石井菓子舗製)です。

濃茶の茶碗ですが、利休居士が今焼として楽茶碗を長次郎に焼かせたという故事を慕って、黒楽茶碗と赤楽茶碗にこだわってみました。

お正客さまは黒楽茶碗(楽一入作、銘「不老門」)、次客Iさまは黒楽茶碗(佐々木昭楽作、長次郎「喝喰」写し)、三客Aさまは赤楽茶碗(渡辺陶生作、銘「玉三郎」)、詰M氏は赤楽茶碗(中村康平作、光悦「乙御前」写し)です。いずれの茶碗も縁あって暁庵の手元に来たもので、それぞれのエピソードをお話ししました。

茶入は薩摩焼(黒薩摩の不識形)で、銘「翁」。仕覆は18世紀の島モール、古裂コレクターでもあるNYさまに仕立ててもらいました。
 
茶杓は、利休居士の墓所がある聚光院の梅の古木で作られたもので、川本光春作、聚光院住職・小野澤虎洞和尚の銘で「東北」です。茶杓銘「東北」は能「東北」をイメージして特別にお願いして命名してもらいました。一見、何の変哲もない梅の古木の茶杓ですが、よく見ると・・・・。
 
 
 
薄茶になり、膝が危険信号だったので三客Aさまにお点前をお願いし、薄茶3碗を点てて頂き、Aさまの薄茶と仕舞い付けはM氏にお願いしました。お二人とも快くお引き受けくださり、助かりました。
 
濃茶茶碗もそうですが、お客さまに合わせて薄茶の茶碗を選ぶのがとても楽しかったです。
お正客さまは染谷英明作の白楽で銘「小鷺」、次客さまは上野焼・渡窯の銘「荒磯海(あらそみ)」、三客様は京焼・相模竜泉作の銘「さきがけ」、お詰さまは長春太山作の銘「宝龍」です。
 
   (干菓子は「北条みつうろこ」と「万葉の花」)
 
薄器は「つぼつぼ蒔絵」中棗、茶杓は濃茶と同じです。
薄茶は「舞の白」、星野園詰です。
2種のお菓子は、「北条みつうろこ」(鎌倉・豊島屋)と「万葉の花」(金沢・諸江屋)をお出ししました。「北条みつうろこ」はNHK大河ドラマに因んだ新製品らしく、伊豆、相模、鎌倉などの舞台で展開する「鎌倉殿の13人」を暁庵も楽しみに応援しています。

こうしてゆるゆると・・・さらさらと・・・そして和やかに「暁の茶事」が終わりました。
 
お客様、本当にありがとうございました・・・皆さまに助けられての「暁の茶事」でした。・・  
 
 
        暁の茶事  in  2022 ・・・(その1)へ戻る  (その2)へ戻る