暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

暁の茶事 in 2022 ・・・(その3) 夜明けと濃茶

2022年02月14日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

    

つづき)

2月5日の日の出(横浜)は午前6時37分でした。

日の出から逆算して席入りの時間などをおおよそ決めていきます。挨拶、前茶、初炭はまだ真っ暗ですが、懐石の途中で夜が明けてきます。

懐石を食しながら夜明けの気配や障子の色の微妙な移り変わりを楽しんでいただけたら幸いです。

日の出頃に本来なら突き上げ窓を開けて朝の日の光を茶室に取り込むのですが、あいにく突き上げ窓がないので、障子とガラス戸を7時過ぎに次客Iさまに全開してもらいました。(本当は午前6時37分の日の出と合わせて・・・と考えていましたがいろいろあって遅くなりました・・・でも、これで良しです)

障子とガラス戸を開けると、夜明けの朝の空気がぴりっと冷たいけれど清々しく、東の空が茜色に輝いているのを見ることが出来ます・・・そのころまでには行灯も手燭も引いてしまいます。

深呼吸をして、冷気を胸いっぱい吸い込んで「新しい一日が始まるのだ・・・」と。

暁も夜明けも毎日同じようにある筈ですが、この日は特別の暁であり、夜明けのように思えました・・・。

 

懐石(朝食)が終わり、主菓子をお出しし、腰掛待合へ中立をお願いしました。

 

     (春曙光と猫柳、花入は揖保川焼で池川みどりさん作)

銅鑼の合図で後座の席入りです。

後座は梅の屏風を広げて、八畳の広間を四畳半の小間仕立てにしてみました。

床に春曙光(しゅんしょっこう)と猫柳を池川みどりさん作の揖保川(いぼがわ)焼の花入に生け、点前座には木屋町棚(表千家流)を設え、水指は唐津焼です。

 

 

濃茶を各服で練ってお出ししました。

初座の懐石まではゆるゆると、夜が明けて後座の濃茶と薄茶はさらさらとなすべし・・・と指南書にありました。

でも、濃茶は茶事のハイライト、美味しい濃茶を差し上げたいです。茶碗を運び出し、茶入と置き合わせてから、盆に茶碗3個を並べ運び出し、床の板の間に(亭主床なので)置きました。次いで建水と柄杓を運び出し、いつものように濃茶点前をしました。ただ、控えの茶碗にも適宜湯を入れて、茶碗をしっかり温めました。冬季には温かくよく練られた濃茶が何よりのご馳走だと思うので・・・。

濃茶は「延年の昔」(星野園詰)、前席の主菓子は「雪見車」(練切の白椿)(石井菓子舗製)です。

濃茶の茶碗ですが、利休居士が今焼として楽茶碗を長次郎に焼かせたという故事を慕って、黒楽茶碗と赤楽茶碗にこだわってみました。

お正客さまは黒楽茶碗(楽一入作、銘「不老門」)、次客Iさまは黒楽茶碗(佐々木昭楽作、長次郎「喝喰」写し)、三客Aさまは赤楽茶碗(渡辺陶生作、銘「玉三郎」)、詰M氏は赤楽茶碗(中村康平作、光悦「乙御前」写し)です。いずれの茶碗も縁あって暁庵の手元に来たもので、それぞれのエピソードをお話ししました。

茶入は薩摩焼(黒薩摩の不識形)で、銘「翁」。仕覆は18世紀の島モール、古裂コレクターでもあるNYさまに仕立ててもらいました。
 
茶杓は、利休居士の墓所がある聚光院の梅の古木で作られたもので、川本光春作、聚光院住職・小野澤虎洞和尚の銘で「東北」です。茶杓銘「東北」は能「東北」をイメージして特別にお願いして命名してもらいました。一見、何の変哲もない梅の古木の茶杓ですが、よく見ると・・・・。
 
 
 
薄茶になり、膝が危険信号だったので三客Aさまにお点前をお願いし、薄茶3碗を点てて頂き、Aさまの薄茶と仕舞い付けはM氏にお願いしました。お二人とも快くお引き受けくださり、助かりました。
 
濃茶茶碗もそうですが、お客さまに合わせて薄茶の茶碗を選ぶのがとても楽しかったです。
お正客さまは染谷英明作の白楽で銘「小鷺」、次客さまは上野焼・渡窯の銘「荒磯海(あらそみ)」、三客様は京焼・相模竜泉作の銘「さきがけ」、お詰さまは長春太山作の銘「宝龍」です。
 
   (干菓子は「北条みつうろこ」と「万葉の花」)
 
薄器は「つぼつぼ蒔絵」中棗、茶杓は濃茶と同じです。
薄茶は「舞の白」、星野園詰です。
2種のお菓子は、「北条みつうろこ」(鎌倉・豊島屋)と「万葉の花」(金沢・諸江屋)をお出ししました。「北条みつうろこ」はNHK大河ドラマに因んだ新製品らしく、伊豆、相模、鎌倉などの舞台で展開する「鎌倉殿の13人」を暁庵も楽しみに応援しています。

こうしてゆるゆると・・・さらさらと・・・そして和やかに「暁の茶事」が終わりました。
 
お客様、本当にありがとうございました・・・皆さまに助けられての「暁の茶事」でした。・・  
 
 
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