(午前5時過ぎはまだ真っ暗です)
お席入りの茶室は八畳の広間。なるべく暗さを感じてほしく、座敷行灯と床の手燭だけとしました。
お客さまお一人お一人とご挨拶を交わしました。
お正客IさまはS先生の同門社中です。1年お待たせした暁の茶事を楽しみに待ち望んでくださって、こちらも今回お招きできたことが涙が出るくらい嬉しゅうございました。
その日は、Iさまと初めてお会いした時の思い出の着物、黒地に白鳥の模様のある付け下げを着ました・・・。
次客Iさま、三客Aさま、詰M氏は暁庵の社中です。一生に一度できるかどうかの暁の茶事、社中の方に体験し、楽しんで頂けたら・・・と思いました。何かとお手伝いをお願いするかもしれませんが、先ずはゆったりくつろいでくださると嬉しいです。
本席の床は「曉雪満群山」。坐忘斎お家元の御筆です。
昨年4月に教授拝受のため今日庵を訪れた折に、坐忘斎お家元にお願いしていた御軸で、昨年のクリスマス・イヴに我が家に到着しました。
1月8日の初釜に次いで2回目の使用ですが、実は「暁の茶事」のために・・・と、お家元が心を込めて書いてくださったものです。
暁、雪を冠した山々が連なり、暗い山の端が徐々に茜色に染まっていきます。日が昇り、雪山の頂を明るく照らし、その暁光は群れている山々を普く照らし、どの山も見事に輝きはじめました。
・・・壮大な暁の景が目の前に浮かんでくるようです。
「前茶を差し上げます」
点前座に旅箪笥を置き、茶碗4個(絵高麗写しの数茶碗)、木地棗、柄杓、蓋置(赤楽、つくね)を中に用意し、建水を運び出しました。
茶碗をしっかり温めながら各服点で薄茶をお出ししました。行灯と手燭の灯だけなので、泡が細かく点っているか自信がありません。それでも、お客さまは「美味しくあたたかいです・・・」と優しいです。行灯と手燭のほの暗い闇が皆を包み込んで、時が経つのを忘れてしまいそう・・・いつまでもゆるゆるとお話していたいところですが、初炭をしました。
「お炭を置かせて頂きます」
炭斗はミャンマー籠。内側の朱塗が根来塗を連想し、ミャンマーの人が編んだという籠は民芸の持つ力強さがあります。昨年12月に東京美術倶楽部で購入し、今回が初使いです。
釜を上げ初掃きをすると、お客さまが炉辺に寄ってきて炉中や炭の様子を仲良くご覧になります。ほの暗い中に前夜から熾していた残り炭がキラキラと輝いて・・・。
巴半田を持ち出して炉中の炭を上げます。炉中を整えてから下火を大小3つほど選んで入れました。
灰器を持ちだし、炭斗を戻し、いつものように湿し灰を撒きました。灰器は京都壬生寺の焙烙です。壬生寺では年に数回、壬生狂言(正しくは壬生大念仏狂言)「節分」が上演されます。「節分」では、願い事が書かれた焙烙を次々と落として割る、厄払いの「焙烙割り」が行われ、それはそれは痛快な一瞬です。・・・そんなことを懐かしく思い出しながら、焙烙を使いました。
胴炭から順に炭を置き、香合を拝見にお出ししました。
釜を炉縁近くまで引き、カンを置いて、灰器を水屋へ下げます。本来なら水屋から薬缶を持ち出し、水を入れ、釜を濡れ茶巾で清めるところですが、「暁の茶事」では釜を水屋へ下げます。
釜に水を足して溢れさせ、濡れ釜にして、釜肌から蒸気が上がっている状態で釜を持ち出します。濡れ釜と釜肌から上る蒸気が何よりのご馳走と考え、亭主はいろいろ工夫を凝らします。
五徳に釜が乗せられ、蓋を切って、炭斗を引き、襖を閉めると、香合の拝見が始まりました。
染付の梅香合は銘「一輪」です。江戸前期の俳人・服部嵐雪の俳句「梅一輪 一輪ほどの あたたかさ」から名付けました。香は「花暦」(京都・薫玉堂)です。
こうして初炭が終わりました。
(10日は雪になりました。雪の中、来てくれたのに蜜柑が無くってごめんね!9日撮影)
次に懐石ですが、もう時間との戦いでいろいろハプニングがあり、思うように進みませんで、大変お待たせしてしまいました。「あたたかく」「美味しく」「少な目」がテーマでしたが、いずれも難しいです・・・。
奮戦の様子はご想像いただいて、献立を記します(もちろん、写真を撮る余裕などありません・・・)
① 折敷に、飯椀(おかゆ)、汁椀(シジミ味噌汁 八丁味噌仕立て)、長皿にいろいろ(里芋の煮物、鳥の丸、ヨモギ麩に白味噌添え、紅白かまぼこ、黒豆の松葉刺し)、小皿に季節の野菜の和え物をのせ、おだししました。
② 漬物(沢庵、野沢菜漬、梅干し、塩昆布)
③ ふろふき大根、鳥赤味噌
④ 土瓶蒸し(しめじ、海老、花麩、銀杏、菜の花、柚子、カボス)
懐石は以上ですが、お客さま、いかがでしたでしょうか??
折敷や長盆を何度も運んで座るのは膝に負担がかかるので、詰M氏にお運びを手伝っていただき、とても助かりました。(汗・・・) (つづく)
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