麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第128回)

2008-07-13 22:05:34 | Weblog
7月13日


トルストイの「アンナ・カレーニナ」の新訳が、光文社文庫から出ましたね。私は10年ほど前にはじめて、ようやく、新潮文庫で読みました。おもしろい小説でした。

この小説の柱は、アンナの不倫ではない、と私は思います。アンナの不倫は、キャッチに過ぎず、作者が本当に書きたいのは、リョーヴィンとキチイのカップルであり、突き詰めれば、リョーヴィンひとりなのだと思います。読んでいるときも、最後まで、アンナがこの不倫に走った動機はよくわからなかったし、もっと言えば、アンナはただの人形のようにしか感じられませんでした。伝わってくるのは、リョーヴィン(トルストイ自身がモデルといわれています)が、いかに頭がよく、価値のある人間かということだけ。
すごく整った書き方で、ドストエフスキーの混とんとした書き方とはまったく違います。

たぶん、もう一度読むことはないと思います。



新しいカフカコレクションがちくま文庫で出始めました。全3巻のようです。とりあえず、白水社のUブックスで池内紀訳の小説全集は出ていますが、また違う方針でまとめられたもののようで、翻訳者には柴田翔なども名を連ねています。

カフカは、若いときほど好きではなくなりました。(これはカミュに対する気持ちとぜんぜん逆で、カミュは、若いころよりいまのほうがなお好きかもしれません。とくに「手帖」は汲めども尽きない魅力にあふれています。もちろん「異邦人」もです)。「変身」は、最高。「城」も「アメリカ(失踪者)」も好きですが、「審判」は最後まで読んだことがありません。退屈です。
「中年の独り者ブルーム・フェルト」などの、ちょっと変わった短編がいいですね。まだ買ってないけど、読んでみようと思います。



暑いですね。

今日は、ひさしぶりにカメラマンの宮島径氏から電話をいただきました。
ひと言交わしただけで、「やっぱりかけるんじゃなかった」と後悔している宮島さん独特のニュアンスが聞き取れて、よかったです。「武蔵野」をテーマにした写真、なによりも楽しみにしています。

では、また来週。
コメント
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