鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

大義のない総選挙は安倍政権への弔鐘となるのは間違いない

2014-11-17 | Weblog

 APEC首脳会議やG20サミットなどに出席した安倍首相は17日夕に帰国し、そのまま公明党の創立50周年大会に顔を出し、その後山口那津男代表と会談した。会談の中身は午前中発表となったことし7-9月のGDP成長率が予想をかなり下回る年率1.6%のマイナスとなったことから、消費税の来年10月からの2%増税を1年半遅らせ、そのことの信を国民に問うため、衆院の総選挙を実施に踏み切る決意を固めたようである。正式な表明は明日18日になり、来月2に公示し、14日に投開票となる見通しである。この間、前日に行われた沖縄知事選の結果については一切言及がなく、総選挙の断を下したのは沖縄知事選の敗退をを払拭するため、と言われても仕方がないだろう。

 そもそも消費税増税を1年半先延ばしにするため、国民に信を問うため総選挙を行うというのは大義になるのであろうか。民主党政権下で自公民3党の間で消費税を10%に2段階で上げるというのは合意されていて、そのうえで2年前に総選挙が行われ、民主党から自民公明党へ政権が移った。消費税増税については景気後退などの場合には政権の判断で実施遅らせることができる、との景気条項がついていた。

 だから今回の1年半先送りについてはいまの政権の判断でできることとなっている。それをいかにも国民に信を問うというような表現のもとに総選挙を実施するというのは他に理由があるからと言わざるを得ない。まずはデフレから脱却し、年率2%の成長をめざすというアベノミクスが予期した成果を生み出さずに崩壊しつつあるのを隠そうというねらいがあるのは間違いない。それと沖縄知事選の敗退の印象を払拭したい、との思いもあるのはもちろん、9月の第2次改造内閣のうち女性活用の名のもとに起用した小渕経産、および松島法務大臣がそろって辞任し、代わりに指名した宮沢経産大臣がSMバーでの飲食費への政務費使用などで野党の追及に遭うなど不祥事続きでつまづいたのをリセットしたい、との思いもあるようだ。

 安倍首相はオーストラリアで記者の質問に答えてか、2年前の総選挙で民主党が消費税増税を掲げて選挙に臨まなかったことを非難しているようだが、それを言うなら衆院の定数削減、および議員報酬のカットを野田代表と約束したのをなんら果たしていないことこそ責められるべきである。民主党に対してそう言うのなら、自民党こそことし4月の5%から8%への消費税増税の際に国民に信を問わなかったではないか。2年前に自民党は消費税増税を旗印にして戦ったとは言えない。安倍首相は自らの言は自らに向けるべきである。しかも衆院の定数削減と議員報酬削減にはなんら手をつけていない、重大な公約違反と言わざるを得ない。

 総選挙には700億円もの費用がかかるという。そんな巨額な費用をいまここで投じるべきか、安倍首相は胸に手をあててじっくりと考えてほしい。加えて、アベノミクスの失敗については野党のみならず自民党内にもそれを指摘する声が出ている、というではないか。

 選挙には思わぬ風が吹く、という。安倍首相がなぜいま総選挙に思いが至ったのか、全くわからない。明日18日にも言明するという児戯に等しい釈明など聞きたくもない。国民はそんな釈明をまともに受け取るほど馬鹿ではない。沖縄県民は安倍首相の考えを見事に見抜き、しっぺ返しをしたではないか。安倍首相はいま総選挙をすれば、野党の足並みがそろわないので、それほど議席を落とさずに引き続き安定政権を維持できる、とでも思ったのだろう。だが、先ごろのNHKの世論調査で安倍内閣の支持率は44%と過去最低の水準となった。なのにわけのわからない総選挙に踏み切って、さらに支持率は低下するのは間違いない。安倍政権は自ら墓穴を掘って、崩壊への足取りが始まった、とみるべきではなかろうか。その意味で今回の総選挙は安倍政権への弔鐘となることだろう。

追記 18日の安倍首相の解散・総選挙へ向けての記者会見は思った通りの自分のご都合を延々と述べるだけのもので、とてもなぜいま解散かとの疑問を解消できるものではなかった。特に記者からの質問に答えて、持論の「民社党は消費財導入をマニフェストに入れて前回の総選挙を戦わなかった」と、まるで消費税増税実施後不況の責任は民社党にある、といわんばかりの主張をしたのはいかがなものか、と思われた。自民党こそ今年4月の消費税増税について国民の信を問わなかったではないのか。責めている民主党の乗っかって増税を果たしたのは公約違反ではなかろうか。聞いていた内閣記者会の諸兄はこの点についてそれ以上突っ込まずに聞くだけに終わったのには重ねてがっかりさせられた。大義なき解散について、安倍首相にもっと迫るべきなのに黙って聞くだけでは内閣記者会の看板が泣くというものだ。

 それと安倍首相は自公で過半を割れば、責任を取るといったが、議席を100近く(実際には98議席)も減らすまで総裁の場に居ることが許されると思っているのはどう考えてもおかしい。日大の岩井奉信教授が言うように「勝敗ラインは自民党の294議席維持」とすべきだろう。自民党が294議席を割ったら責任を取って、安倍首相は自民党総裁の座から退く、というのがもっともふさわしい。こんな時期に大義なき解散に踏み切り、国費のムダ遣いである総選挙を敢行するのだから、それくらいの気概を見せてほしいものだ。 

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