鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

最後のどんでん返しで、楽しいラブコメディだった三島由紀夫原作の演劇「白蟻の巣」

2017-03-05 | Weblog
 4日は東京・初台の新国立劇場で三島由紀夫原作の演劇「白蟻の巣」を観賞した。おそらく三島由紀夫がブラジルに住んだいる人から聞いた話をもとに戯曲にしたのであろうと思われる演劇で、白蟻の巣という日本ではまず見られないものをタイトルにしたことに得体のしれない魅力があるような感じがあする。ブラジル・リンス郊外でコーヒー農園を営む日本人夫婦が結婚したばかりの運転主夫婦と奇妙な三角関係になっていることから始まるが、意外な展開をたどり、最後にどんでん返しが待っている、という見ていて面白い、楽しい演劇であった。

 「白蟻の巣」は運転手夫婦の居室でベッドで寝ている夫百島健次のもとで、妻啓子が泣いているシーンから始まる。啓子は夫の首にかつて旦那さん刈谷義郎の妻妙子と納屋で心中事件を起こした際につけた傷あとをみつけ、さめざめと泣き崩れているのだ。起きた健次は「もう終わったことで、いまはもう忘れてしまっている」と力説しても啓子は納得しない。で、農園主夫婦とともにする朝食の場で、夢で見た花の話に例えて、夫の浮気に苦しんでいることを訴える。朝食後に農園主に悩んでいることを直訴し、辞めることを言い出す。啓子に気がある義郎はなんとか啓子をなだめようと策をめぐらしあれこれ提案するが、啓子は納得しない。

 そこで、たまたまリオのカーニバルが迫っていることを思い出し、リオに出かけ、その間に妻の妙子が健次とよりを戻さないか試してみることを提案し、出かけてしまう。しばらくは何も起こらず、困った啓子は同僚とカーニバルの祭りに出かけてしまう。それを見た妙子はいい機会が訪れた、と早速健次の部屋を訪れ、誘いかけるが、健次は乗ってこない。しかし、そんななか帰ってきた啓子は夫の部屋から農園主の妻が出てくるのを目撃し、泣き崩れる。健次は「何もなかった」と釈明するが、啓子は聞かない。

 一方、リオでミスリオなどと浮名を流し、散々遊んできた義郎は家に帰ってきて何も起きなかったことを聞いて目論見が外れたことを知ってがっかりするが、翌朝になって、妻が書置きを置いて健次と出かけて、おそらく崖から自動車で飛び込んでしまったのは間違いないと思い、啓子にこれまでの妻の不貞を報告し、併せて結婚を申し込む。傷心のはずの啓子はそれを聞いて驚く一方で、農園主夫人になれることを思って承諾してしまう。ところが、そんな幸せの絶頂に上り詰めたと思った矢先、意外なことが起き、そこで幕となる。

 見ていて昨年ブラジルのリオのカーニバルを身に行った際にブラジル人は毎日コーヒーを飲み、週末になるとサkッカーを観戦し、2月になるとカーニバルで踊ることでストレスを解消しているのだ、と聞いたことを思い出した。この演劇も熱帯のブラジルならでは起こりうると思わせるラブコメディで、存分に楽しめた。宝塚出身の安蘭けいが妙子役を務めているが、啓子を演じた村川絵梨の方が熱演していたように見えた。主役の農園主を演じていた平田満が最後になって主役らしい振る舞いを見せていたが、なにか物足りなかった。あと幕間にするするとベッドと応接セットが音もなく左右に移動していたのにはやや驚かされた。終了後なぜ動くのか触ってみたが、どういう仕掛けになっているのかわからなかった。
コメント
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