鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

日本でも世界一流のオペラ歌手の歌が聞ける」ようになったことを実感させてくれたオペラ「ルチア」

2017-03-19 | Weblog
 18日は東京・初台の新国立劇場で、ガエターノ・ドニゼッティのオペラ「ルチア」を観賞した。オペラ観賞はほぼ2年ぶりで、3階席の一番後ろに陣取り、幕が開くのを待っていると、指揮者のジャンパオロ・ビザンティが出てくると万来の拍手が起き、異常に盛り上がっている感があった。その理由は幕が上がってすぐにわかった。主役の一人である城主のエンリーコを務めるアルトゥール・ルティンスキー、続いて登場したルチア役のオルガ・ペレチャッコ=マリオッティの声、ならびに歌唱力が素晴らしいの一語につきるものだったからだ。オペラを最初に見たのは1999年の「カルメン」が最初だが、やっと日本にも世界の一流のオペラ歌手が来てくれるようになったのだ、と実感した。
 
 オペラ「ルチア」はスコットランドのランメルモールの領主、エンリーコが波の押し寄せる城壁で家来のライモンドらと妹のルチアを裕福な豪族アルトゥーロと政略結婚させようと策をめぐらすシーンから始まる。しかし、ルチアは仇敵のエドガルドと恋仲にあることを告げられ、エンリーコは怒りにかられる。そのルチアは深夜にエドガルドと逢引きのため、城の庭に出てきて、エドガルドと会うが、エドガルドはすぐにフランスへ旅立つと宣言する。それを聞いたルチアは悲しみに暮れるが、「永遠の愛を誓ってくれ」と頼むエドガルドと指輪を交換する。

 第2幕で、エンリーコはエドガルドが別の女性に宛てた手紙を偽造し、それをルチアに見せてエドガルドを諦めるよう説得する。それを信じたルチアは兄の薦めるアルトゥーロとの結婚にも承諾し、結婚契約にも署名してしまう。そのまま婚儀が進んでいくが、そこへ現れたエドガルドはルチアが本当に裏切ったと思い、彼女の指から指輪を奪い取り立ち去っていく。第3幕ではエドガルドのもとをエンリーコが訪れ、2人は決闘の約束を交わす。宮殿ではルチアとアルトゥーロの祝宴が続いているが、その場に突如、従者が駆け込んできて、「ルチアさまが正気をなくし、アルトゥーロを刺し殺してしまった」と告げ、騒然となる。続いて場に現れたルチアは血のついたドレスのまま、婚約者の首を刺した槍を持って錯乱した状態で、それでもエドガルドの名を呼び、「まだ愛しています」とつぶやくように歌う。有名な「狂乱の場」であり、約8分間にわたってモノローグのような愛のセリフを歌い続けるシーンは圧巻であった。

 場面は変わり、エドガルドは先祖の墓の前に膝まづき、ルチアのことを思いめぐらすが、そこへ人々が現れて「不幸な乙女よ」と歌うのを聞いて、一体だれのことを言っているのかと問い、ルチアのことだと知ると悲嘆に暮れて、葬られたルチアの死体を奪い取り、ルチアを両手に抱え、そのまま崖からとび降りようとするところで幕となる。

 全部で3幕の舞台だったが、3幕ともメリハリのある歌いまわしで、主役の3人がいずれも会場いっぱいに響き渡る声量の持ち主で、聞きほれる歌声に観客は歌い終わる旅にせいいっぱいの拍手を送って時間の経つのを忘れさせてくれた。特にルチア役のオルガ・ペレチャッコ=マリオッティの「「狂乱の場」での歌いっぷりは見事としか言いようのない歌で、満場の拍手を浴びていた。これだけの歌はいままできいたことがない、といっていい歌で、終わってロビーで売っていた「狂乱の場」の歌の入っているペレチャッコのCDを即座に購入した。

 鈍想愚感子はこれまでそんないオペラを見てきたわけではないが、これまで見てきたオペラで感じていたのは日本でのオペラ公演は年のいった中年のでっぷり太ったお世辞にも美人とはいえないオペラ歌手で、相手役の男性も中年の太ったおっちゃんといったもので、どう見ても世界では二流のオペラ歌手ばかりだった。今回のペレチェンコもルティンスキーもスラリとした若き美男美女で、スタイルもいい、声もよく透り、パンフレットによれば世界の劇場から出演してほしいと声のかかる超一流のオペラ歌手である、という。日本でも世界一流のオペラ歌手の歌が聞けるようになったことを素直に喜びたい。

 さらに今回の「ルチア」は幕開けの絶海に臨む海岸のシーンがCGであろう海の波の音が聞こえ、まるで本当に波が押し寄せているかのような舞台のつくりで、全体によくできている感じであった。あと、主演の3人の海外からのオペラ歌手に見劣りしない妻屋秀和はじめ新国立劇場合唱団も群衆シーンをうまく演じていて、よくやっていたことも特筆すべきこととして付け加えておきたい。今後も年に1回くらいはオペラを観賞していきたい、と深く肝に銘じた次第である。
 
 
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