鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

原告、被告、裁判官とも三者三様に攻めきれていない煮え切らない民事訴訟だった

2014-12-10 | Weblog

 10日は東京・霞が関の東京地裁へ裁判の傍聴に出かけた。午後1時半からの530号法廷での国際医療福祉大学が出版社のダイタモンド社を損害賠償請求で訴えている民事裁判を傍聴した。ダイヤモンド社が2年前の週刊ダイヤモンド誌で、大学特集をし、そのなかで「財務力で見抜く危い大学ランキング」を掲載し、国際医療福祉大学を23位にランクし、それで大きな損害を蒙ったというのが訴えの中身で、当初は1位や一ケタの順位ならともかく23位でなぜ、という気がしていたが、双方の証人尋問を聞くうちに実態が見えてきた。

 最初に証人席に就いた国際医療福祉大学の職員は代理人の質問に応じ、国際医療福祉大学が看護士はじめ医療関係の国家試験への合格率が100%近いことが学生に人気であることを強調し、それだけに週刊ダイヤモンドの特集で大きなイメージを蒙った、と語った。記事が出た早々にダイヤモンド社に強い抗議を申し入れるとともに大学側では理事長、学長ら幹部が連日、対策会議を開き、父兄や全国の高校に記事が全くの誤りであることを説明するとともに新聞はじめ各種媒体に訂正の広告を打つなどの手を打った、という。

 ダイヤモンド社からはダイヤモンド誌の副編集長が釈明に来たものの、謝罪文は提出しなかった、という。それでもダイヤモンド誌は問題の記事が掲載された2週間後の発行号で「国際医療福祉大学の自己資本比率は10%でなく61%で、ランキングから国際医療福祉大学は除外する」との訂正記事が掲載され、ダイヤモンド社のホームページにも訂正の旨を掲出した、という。それでも報道された時の衝撃を打ち消すには至らず、堪らず訴訟に及んだ、という。ただ、具体的な損害賠償額は明らかにされなかった。

 続いて証人席に就いたダイヤモンド誌の副編集長は記事は各大学へのアンケートに基づいて作成されているが、国際福祉医療大学の財務データを入力する際に担当者がFAXで受け取った数字のケタを読み違えていたことが間違ったランキングをしたことにつながってしまったことを明らかにした。その旨を大学側に伝え、やりとりをするうえで、「大学が関係先に配布する文書のなかに『ダイヤモンド社は国際医療福祉大学の名誉を回復するため、できる限りの方策を講じたる』との一文を入れることを了承すれば、万事丸く収める」と言われ、それを信じていたが、実際に謝罪に訪れた際に「そんなことは覚えていない」と言われ、用意してきた謝罪文を渡さずに帰ってきてしまった。

 ただ、副編集長は持っていった謝罪文に印鑑を押さないままにしていたようで、どこまで本気だったのか疑わしい面もあり、白々と「訂正文を本誌とホームページに出す以上のことは考えていなかった」と語るあたり、どこまでミスを認めていたのかわからない。

 国際医療福祉大学は実際に損害について質問されても「私は聞いてない」と言ったり、組織として把握していない点が問題だし、被告のダイヤモンド社は訂正記事を掲載する際の社内での手続きが曖昧だったり、お互いに組織のガバナンスが行き渡っていないのが露呈されていたのが気になった。裁判長もどちいもどっちと思っているのか、着地点を見定められないような感じがして、三者三様に攻め切れていない煮え切らない裁判であった。

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