鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

ネット配信時代を控え岐路に立つ新聞社経営

2009-12-19 | Weblog
 18日付けの朝日新聞に特ダネとして、ソニーが来年から米国で新聞のネット配信サービスを開始する、との記事が掲載された。それによると米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が月額14.99ドル(約1350円)で購読できる、という。日本では新聞各社がシステム的に対応が遅れているため、米国が先行した形となっているが、衝撃的なのは月額購読料金が宅配で購読する料金の3分の1となっていることで、新聞社経営が重大うな岐路に立つことになるのは間違いない。
 朝日新聞によると、ソニーが米国で発売する電子新聞購読装置はタッチパネル方式の7インチ(約18センチ)のワイドスクリーンで、通信装置も付いている。新聞紙面から広告を除いた内容が毎朝5~6時に閲覧できるようになる、という。ソニーではWSJ紙に続き、ニューヨークポスト紙、WSJ夕刊、さらには英ファイナンシャル・タイムズ紙などの配信を順次行っていく計画という。
 米国ではすでにアマゾン・ドットコムがデンシ端末装置「キンドル」を用いて新聞のネット配信サービスを始めており、「キンドル」のような電子新聞を受信できる装置は国内で300万台普及している、とみられている。このうちキンドルが60%、ソニーが35%のシェアを占めており、これが来年には600万台になる、とみられている。
 ソニーは日本での展開を考えたが、日本の新聞各社がまだシステムが整っていないことを理由に紙面の電子提供を断ったため、米国から先行させることにしたようである。
 日本の場合、日本全国で約6000万部販売sらえている新聞はほとんどが街の新聞販売店を通じて家庭に宅配されている。国民1人当たり0.5部という世界でも驚異的な新聞購読率を記録している最大の理由はこの宅配制度によるところが大きい。しかも駅やコンビニなどで1部づつ購入するようりも月決めの宅配で購読する方が料金が安いという経済合理性に反する制度に乗っかってのものである。
 新聞社が電子新聞によるネット配信サービスを開始するということは自らの手でこの宅配制度に風穴を開けるということになる。しかも、もうひとつの難問はネット配信サービズの料金で、WSJの場合、宅配による購読料金に比べ3分の1という安さである。仮に全読者がネット配信に切り替えたとしたら、新聞社の売り上げは3分の1になってしまうことになる。そんなことはないだろうが、ネット配信に切り替わっていけばいくほど売り上げは減少していくことになる。
 まさに新聞経営にとっては前門の虎、後門の狼である。時代の流れから電子新聞に対応しなければ取り残されることになるし、さりとて永年付き合い支えてきてくれた新聞販売店を切り捨てることもままならぬ。
 日本経済新聞はすでに来年春から電子新聞なるものを創刊することを発表している。まだ、提供方法、価格など詳細は明らかになっていないが、その前段として先日、一部売りの料金を来年から朝刊は従来の140円から160円に、夕刊は50円から70円に値上げする、と発表した。日経の一部売りの部数は朝夕刊合わせて約20万部といわれているので、このうち半分売れるとして年間約5億円の増収になる勘定だが、本体の月の購読料金を据え置いて即売だけを値上げするのは姑息な手段としか思えない。電子新聞をにらんでの戦略だとしても時期を含めて意図のわからない値上げである。
 
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