WALKER’S 

歩く男の日日

17日目 民宿みま(宇和島市)~ときわ旅館(大洲市)

2015-07-18 | 15年四国の旅


 昨日の距離が長かった分、今日は短い日です。初めの計画では昨日の6kmが今日の6kmだったのでほとんど変わらないいいバランスでした。
 宿を6時50分に出発、16分44秒で41番札所龍光寺に到着です。朝一だというのに時速6.08kmしか出ていません。明らかに動きが鈍いのですが理由はこの時点では全く判っていませんでした。5日前、窪川から中村まで歩いたときと同じで、前日7時間55分も歩いた疲れがはっきり残っていたせいだと気がついたのは帰って1ヶ月以上経ってからでした。



 7時51分、42番札所仏木寺に到着、龍光寺から29分37秒、ベストより1分遅れ、やはり調子が上がりません。
淡々とお参り納経を済ませ、8時08分に出発、いつもは6km手前の宿から出るのでここで一休みするのですが、まだ5km歩いていないので休みません。
 今回も歯長峠は行かずトンネルです。あとから聞いたのですが、峠の方はちょっと崩れた箇所があって不通ではないけれど、それに近い状態だったそうです。トンネルを抜けた後の下り坂は昨年倒木があって、それを越えるのに苦労して尻餅をついてしまったのですが、きれいに取り除かれていました。肱川の手前の休憩所まで56分14秒、ベストより3分遅れでした。本当に見事なまでに少しずつ遅れています。この時は理由が判らなくて少し焦りもあるのですが、理由が判ってみると身体というのは本当に正直なものだと感心するばかりです。
 橋を渡ってしばらく行くと評判の民宿兵頭が右手に見えてきます。来年こそはお世話になります。
 橋から2.9km、地図の7.7km地点にある見守り大師まで27分54秒、またまた1分半遅れ。時速は6.19km、こういう感じだと無理にスピードを上げてやろうという気持ちも起こりません。できる範囲でしっかり歩いて遅れたのならそれを受け入れるだけ。
 大師の前で水を補給して13分ほど休憩、9時47分に出発です。
 宇和の町へ入っていく手前、松山道のICの下をくぐってすぐ岩瀬川に架かる橋が架け替え工事中、仮歩道橋を渡ります。
 宇和高校を左に見て遍路道に入っていきます。最後の舗装道に突き当たって左折、汗をかきかき登り始めると女性の歩きの人が下ってきます、同宿の方でした。やはり電車で来たようです、それはいいけれど下る道が違う、逆打ちでもないはずだし、おかしいと思ったけれど尋ねる余裕もなく挨拶だけしてあっと言う間にすれ違ってしまいました。でもそのあと大洲に着くまで会わなかったから、卯之町からまた電車に乗ったようです。

 10時19分、43番札所明石寺に到着、また写真を忘れてしまいました。後半になってから本当に驚くほど少ないのですが、今年は帰ってからブログを書くことは決めていなくて、当日のブログを長めに書くことに神経を使っていたので、撮影にもあまり執着がなくなってきていました。とにかく今回はすることや考えることが多くて、唯一いい加減にしてもいいかなというのがデジカメの撮影だったので、昨年と比べて本当に少なくなってしまいました。でも結局今年も書くことになって、もうちょっと多めに撮っておけばよかったと後悔しているところです。文章だけでつなぐのは正直骨が折れます。
 お参りと納経を終えて、山門の前のベンチで休んでいたら、ぼくより少し遅れて来た男性二人がお参りを終えて、山門の前の階段をまた下りていきます。宇和の町へ下りていく道を知らないのでしょうか。それとも何か意図があるのか。
 10時40分、に出発です。


 11時30分、明石寺から4.7km地点にある休憩所です。去年5年ぶりに来たときにできていたのですが、そのときは、札所から5kmないのでここで休むことはないだろう(いつもは10km先のバス停まで休まない)と思っていたのですが、ちょっと覗くと夏みかんがあったので吸い込まれるように腰を下ろしてしまいました。この距離でもちょっと疲労感があったし、時間も大部余裕がありました。人はいないけど夏みかんが置いてあるので今年22回目のお接待です。

 休憩所には40分ほどいたのですが、前を通るお遍路さんはいませんでした。今日追い抜くことができるのは龍光寺と仏木寺の近くの宿から出た人だけで、それは明石寺で会った二人だけだったのかもしれません。
 12時10分に休憩所を発ちます。
 そこから5km先、最後の脇道が国道に合流するところがタイムチェックポイント、明石寺から99分20秒、ベストより5分遅れですが、ペースとしては遅いなりに安定しているようです。7巡目まではそこから370m先にあるバス停で休んでいたのですが、今回はさっき休んだばかりなのでスルーします。
 バス停を過ぎるとまもなく鳥坂トンネル、昨年は峠越えでかなり苦労したので、今回はトンネルを歩きます。トンネルには歩道がないので、ちょっとこわい、久万高原の峠御堂トンネルとこのトンネルはできれば避けたいトンネルの双璧。といいながらこのトンネルを歩くのは7回目になります。
 トンネルを抜けたところにある電話ボックスで宿の予約を入れることにします。今日は佐藤さんが高松の宿、ビジネス旅館三鈴に泊まる日なので、三鈴に電話することはずっと前から決めていました。ところが、いくら呼んでも出ることはなく、外出中のようでした。それ以外に、西条市と、四国中央と、最後の宿に予約を入れて無事受けてもらえました。三鈴は明日の朝にかけ直すことにします。


 13時35分、トンネルを抜けてしばらく行くと鳥坂峠を少し過ぎたところから国道に下りてくる道がありました。トンネルを抜けるよりは少し時間がかかるでしょうが、一番安心でかつ楽な道でしょう。峠から先の下りの山道はすごくきびしい、横峰寺、雲辺寺の下りとひけをとらないと昨年歩いて実感しました。
 でもぼくは来年はこの区間は電車で楽させて貰います。
 13時58分、最後の休憩ポイント、札掛ポケットパークに到着、バス停の手前から51分28秒、何とここで本日初のベストタイが出ました。トンネルからの下りが気持ちよくて、いい感じでスピードを乗せることができたのでしょう。
 14時07分、ポケットパークを出発、ここから宿までベストなら52分、ここからしばらくは下りなので最後はしめてやろうという気になってきます。
 下り始めてしばらくして、白いあごひげを蓄えた逆打ちの人がやってきます。ぼくは逆打ちの人はすごく苦手で、こちらから挨拶しても無視されることが圧倒的に多い、嫌な気分になるだけだからもう挨拶をするのはやめようかと思ったのですが、まあ無視するわけにもいかないので、挨拶したら、にっこり笑って返してくれました。お遍路が判っている人でした、判っていなくても挨拶くらい誰でも返すでしょう、と多くの人は思うでしょうが、本当に衛門三郎に魅入られたかのように、無愛想な逆打ちの人に多く会うことができます。ぼくの経験では優に5割以上の人が衛門三郎でした。
 坂を下りきって、右折、川を渡ってまもなくの所にある大洲北只郵便局がタイムチェックポイント、ポケットパークから18分36秒、ベストより10秒だけ遅れました。でも前半のことを考えれば見違えるようです。
 つぎのチェックポイントは肱川橋、27分16秒、平坦な道になりましたがベストタイでした。後半になって前日の疲れがとれてきたということではないと思うのですが。


 14時59分、本日の宿ときわ旅館に到着です。肱川橋から7分23秒、もちろんベストタイです。
 「早かったですねえ」とご主人がニコニコと出迎えてくれました。「予約に書き込んでいたもやいさんがお休みで、今日はみまさんからだったんですよ」
 「明日は出石寺に登られるんですか」「いいえ、久万高原の笛が滝まで上がってしまいます」。
 というのも、昨年来たときに、ここから久万高原まで行くのはきついから、いつもはここから4km先のふるさと旅館に泊まっていた、昨年泊まれたのは出石寺の方へ行く道を歩いて、大瀬泊まりだったので、初めて泊まることができたんです、というようなことを話していたからです。
 「佐藤さん来られましたよ、冨士山に登るつもりだったけど雨がひどくて止めにしたとか」「はい、そうだったらしいですね、ショートメールで連絡いただきました」 
 昨年はぼく一人、今日は同宿の方が一人だそうです。明日からはかなり大人数の方が来られるそうで、磯屋で同宿だった女性も明後日から連泊、Mさんも同じ頃になると思われます。


 中央上がメインのビーフと野菜の炒め物、この味がすごく濃い、その濃さがすごく美味い、1日中歩いて汗をかききったお遍路さんだということを自覚させてくれるような旨みです。濃さと旨みが身体にしみこんでくる感じがします。さすが、ご主人は四国を通しで歩かれただけあって、お遍路のことがよく分かられています。判った上でのこの味付け、という感じもします。一人用のおひつのご飯も残さずいただいて、おかずも全部いただいて、最後に残ったのが左上の苺の横の柏餅、ぼくは甘いものは好きなのですが、これだけのご馳走を食べたあとにどうかと思ったら、本当に意外だったのですが、めちゃくちゃ美味かった。おそらく普通の柏餅のはずですが、お腹もそれなりにふくれているはずですが、顔がほころんでくるくらい美味い。そういうことも分かった上でのおもてなしということなのでしょうか。やっぱり、五本の指に入る良い遍路宿であることを改めて感じます。
 さて、ぼくの隣に座っている同宿の方はぼくが風呂から上がってしばらくした17時頃宿に到着されました。初めは二人とも静かに食べていたのですが、一段落した頃ぼくの方から、「今日はどちらからですか」と声をかけました。その答えがぼくの許容範囲を逸脱していたので、名前は知っていたのに、場所はどこだったかすぐには見当がつきませんでした。その答えは「ビジネスホテルアイリンです」それが津島の宿であることが分かったとき「57kmも歩かれたんですか」と大声を上げていました。ぼくが毎日40km歩いていると言ったときほとんどの人がびっくりされるのですが、その時と全く逆の立場になって、なんだか笑えてくるくらいでした。ご主人がやってきて二人してすごいすごいの連続です。
 ご主人がぼくの作った遍路宿情報をその人に渡すと、「これあなたが作られたんですか、このホームページ見たことありますよ」聞いてみると、ぼくのブログもお気に入りに入れてチェックしているそうです。だから、ぼくが4月5日に出発したこともご存じでした。「ぼくはその翌日出発したんですよ」、Kさんは岡山の人、電車で瀬戸内海を渡って坂出から歩き始めたそうです。その日ぼくは藤井寺の3km手前の宿から歩き始めているから、彼の156kmほど前を歩いていたことになります。そしてその16日後同じ宿に泊まっている、16日で156kmだから毎日ぼくより10km近く多く歩いていることになります。ぼくの1日平均が41kmだから、彼は毎日50km以上歩いていることになります。すごい、本当にすごい。明日の宿は訊くと、「久万高原のガーデンタイムにしようと思っている」、「ぼくは笛ヶ滝です」距離は47.5km、ぼくにとっては今年一番長い距離になるのでなんとか同じになったというところですが、彼には少し物足りないのかもしれません。彼は歩く距離が長く、どういうことがあるか分からないので宿の予約は当日の正午ごろにするそうです。正午まで歩くと、その日どこまで歩けるか見当がつくので、それから予約を入れて宿に迷惑をかけないようにします。確かに、その方が安心だけれど、そうすると人気の宿は後れをとって泊まれないことが多い。「山茶花などは今ほど人気になる前に泊まってよくしてもらったけれど、もう一度泊まりたいのに泊まれなくなってしまった」、
 泊まった宿全部聞きたかったのですが、いろんな話が出て聞けませんでした。とにかく距離が長いから見当がつけにくい。こんな所まで、こんな所までの連続で呆気にとられるばかり。最初の予定では、初日がきらら、2日目が白鳥温泉、3日目が安楽寺、で3日連続温泉を狙ったのだけれど、その内一つだけはうまくいかなかったそうです。4日目はおそらく焼山寺を越えた植村旅館あたり、5日目はぼくも泊まった鶴風亭、6日目はたぶん日和佐、7日目は徳増か、こうして並べていくだけでも恐ろしい。
 この先は、ガーデンタイム、道後温泉、今治駅周辺、横峰寺を下って小松、伊予三島、観音寺、坂出、ということは23日で結願です。「観音寺から坂出まで行けるか微妙なのよ」、「ぼくでも観音寺から坂出まで歩くから問題ないでしょう」と言うと、「坂出までは行けても、電車に乗って児島に着いてから家まで15km歩かなきゃいけない」。その答えには本当に声が出ませんでした。本当にぽかん、でした。

 Kさんは、ぼくのブログを見て、時刻の細かい表記(09年の分)に感心しきり、あれは写真データが記憶してくれているので苦労はなくて、ただチェックポイント間の時間は自分で記録していますと説明。「時速は6kmですか」「はい」「1日の後半でもですか」「そうですね」「ぼくも6kmくらいで歩くときはあるけれど、後半になるとなかなか6kmでは歩けないなあ」、そう言われたことからして、Kさんの1日の平均時速は5.5~5.7kmくらいではないかと思われました。今日はホテルを5時に出発したというから、正味の歩行時間は10時間、お参りが3ヶ所で1時間、休憩が1時間ということになるようです。
 Kさんのような大健脚の人の話は、今年も聞きました。一人は、富士登山マラソンの経験者で、1日50kmくらいは平気な顔をして楽々歩くということでした。その人は別格や番外も積極的にお参りするので、何日で一巡するかは分からない。
 もう一人は、ネットで調べた限り、24日で回る人が最短だったので、自分は23日で巡ることにしたという人、その人はウルトラマラソンの経験者だったそうですが、お遍路としては全然駄目な人でした。宿に19時や20時に入っていたといいます。23日だと、1日平均は51kmほどですが、それでなぜにそんな遅い時間に宿に入るのか理解できない、ましてやウルトラマラソンの経験者なのに。そこまでして23日で回る意味がどこにあるのか分からないし、Kさんのように23日で回る人が既にいるし、ぼくは20日で巡った人に会ったこともあります。お遍路は夜歩くのは駄目だし、宿には17時までに入りましょう、というのが不文律としてあるし、できるだけ迷惑をかけないで歩くというのも大事なこと。自分の体力自慢のためにお遍路を利用するのは、それは自由だけれど、迷惑をかけるような歩き方では誰も賛同しないでしょう。まあお遍路初心者ですから何も分からないのも仕方ないところで、ぼくも最初の頃は迷惑な歩き方をしていたから、あんまり他人のことは言えません。
 Kさんは「時間をかければ50kmくらい歩けますよ」とぼくに言うけれど、ぼくは体力自慢のために歩いているわけではないし、歩く日数をもっと縮めたいとも思っていません。むしろ逆で、もっと楽したいと思っています。今年は7時間以上歩いた日が10日あったのですが、できれば7時間以上は歩きたくない。ぼくの理想としては1日6時間半、時速6.2kmで40kmほど歩ければ余裕を持って楽しみながら元気に歩けるのではないか。それが基本にあっての28日なのですが、良い宿に泊まりたいという欲もあるので,しんどい日も出てくるということになります。

 17日目の歩行距離  36.1km
      歩行時間  6時間05分
      平均時速  5.93km