朝食は6時から、ご夫婦は早々に済まされぼくがまだ食堂にいる内に発たれました。男性二人は今日も距離があまりないのかゆっくりの出発。
ぼくは6時34分に発ちます、手製の巾着に入ったおにぎりをお接待でいただきます。また来たいな、来られたらいいな、名残惜しい遍路宿です。
今日も距離があるので打ち戻りは昨日来た東海岸の道です。昨年も歩いたし昨日も歩いたから、撮影するようなものは特にないのですが、窪津の町を歩いていたら、思わず立ち止まってしまいました。八重の桜の衝撃とその余韻は2年以上経ったいまなお消えることはありません。
先に出たご夫婦は長い坂道の手前で追い抜いて、そのあとは窪津小学校を過ぎたところで3日前声をかけられた自転車遍路にまた声をかけられました。自転車なのに、札所は二つしかなかったのに、山道もなかったのに、なにをしてたのでしょう。10.9km地点で男性とすれ違いました。11,9kmの手前でまた一人、海岸に下りていく山道で三人、少し行って二人、海岸に出るところでまた二人、その内の何人かはぼくに見覚えがあるようでしたが、ぼくは毎日10人前後に会っているので、なかなか顔が覚えられません。以布利漁港の所でも男女カップルにすれ違いました。昨日も打ち戻りがあったから17人の歩き遍路さんに出会ったのですが、今日は覚えているのが大変なくらい、結局水車までで25人の歩きの人に出会いました。最後の日を除いて今年最高の人数でした。
9時05分、幡陽小学校に到着、宿から145分30秒、ベストより5分遅れですが、あれだけ山道があって時速6kmなのでまずまずでしょう。最初の5kmくらいは本当に快調だという自覚がありました。とばしすぎて後半伸びなかったのかもしれません。
9時20分に出発、さすがにこの時間になると安宿から来た人もここを行き過ぎているから出会いはありません。
10時20分、久百々に到着、幡陽小学校から58分57秒、ベストより3分遅れでした。何とか時速6kmは確保、疲れているという感じは全くないし、痛いところもありません。まあ機嫌良く歩けています。
久百々では20分休憩、おにぎりをいただいて、10時40分に出発です。
11時12分、下ノ加江郵便局に到着、3万円と百円玉8枚下ろします。そのあとは向かいのコンビニでブロックチョコ108円を買います。おにぎりがあったのでけんぴは買いません。
ドライブイン水車に到着したのは12時02分、久百々から75分49秒、ベストより2分遅れでした。時速は6.35kmだし体調も十分なので文句のないところです。
水車の小高くなった四阿で二人の男性が休んでいます。よく見ると一人はMさんでした。もちろんこれから足摺に向かうところです、高知屋から5日目で57km差がついたことになるのでもう呆れ気味です。あとからもう一人中村の方から来た人は昨日Mさんと同宿だったそうで、二人してその宿の応対のまずさをひとしきりぼやきます。実は同じようなことを6年前松尾峠の下りで一緒になった人に聞いたことがあります。前はすごく良い宿で期待していたところ、代が変わったとかで夕食を早く終うように急かされてひどく嫌な思いをしたということでした。ぼくも以前はおすすめ宿に登録していたことがあったので、たまたまその時だけそういうことになったのではないかと、いい方に解釈していたのですが、二人の話を聞くと、それ以上の感じでした。だれがいつ泊まってももれなく嫌な感じを味わえる宿に成り下がっていました。一日中歩いて疲れ切ったお遍路が泊まるべき宿でないことは確実です。ここでは敢えて名前もイニシャルも記しません、それがブロガーのマナー。
もう一人はネストウエストガーデンに泊まったそうで、こちらはかなり良かったそうです。値段も7000円台でむちゃくちゃ高いということもありません。ただ、窪川から35kmになるので利用できる人はそんなに多くないと思います。
32km歩ける人ならもっといい宿があります。佐藤さんに教えてもらったのですが、へんろみちを少しはずれた土佐ユートピアカントリークラブというのがあって、道の駅ビオスおおがたまで送迎してもらえます。2食付き5400円(朝食は7時から)で応対も設備もとてもいいそうです。ふれあいの里さかもとのようにまもなくこの宿がこの付近のスタンダードになるかもしれません。
12時25分、ドライブイン水車を出発、真念庵に向かいます。ここに来るたびに真念庵へ向かう山道の入口は見ているけれど、実際に歩くのは今回が初めてです。今回は納経帳も持っているし、区切りの年でもあるのでできることは一通りしておかねばと思っています。真念庵に納める写経も用意してあります。
13分ほどで真念庵に到着、写真は携帯で撮ったので4月18日のブログを参照してください。西岡徳馬親子が訪れた番組を見ていたので、ほぼ想像通り。お参りが終わった頃、Mさんがやってきました。今日は久百々なので時間の余裕があるようです。これがそうですか、とちょっと期待はずれの様子です。納経に行きますかと尋ねたら、それはいい、ということで引き返していきました。
納経所は、そのまま先に進んだ所にある集落の中の1軒が担当しているということなので、しばらく行くと、本当の入口があって解説板もありました。
帰ってから撮影したので大窪寺の記念印が透けてます。
12時50分、少し迷いながら大塚さんのお宅に到着、ご主人がしっかり印二つ押してくれました。墨書の代わりの黒い印と朱印は全部つながっているので2回で済みます。新しいのと、古いの2種類あってぼくは古い方でお願いしました。真念庵には新しい立派なお大師さんが祀られていて、定期的に祭事も行われているそうです、その写真を見せていただきました。そうしてご主人と話をしていると、奥さんが帰ってこられました。「テレビで見せて貰いましたよ」と言うと「近頃そう言って来られる方が多いの、テレビってこわいわぁ」と照れ笑い、お茶と小夏とクッキーを出してくれました。今年19回目のお接待です、密かに期待していたのでうれしかった。
大塚さんのお宅ではお風呂の改装で今日業者が入るので、その準備をしていました。ちょうどお茶を煎れてもらってしばらくした頃、業者が到着したので、それをしおに出発することにしました。
13時15分に大塚さん宅を出ます。ここから三原村に向かう県道46号は6年ぶりに歩くことになります。ドライブインで20分、大塚さん宅で25分も休んだし、お話もできたので、身体の動きもずいぶん良くなっています。
水車から9800mの地点にある上長谷集会所が本日最後の休憩ポイント、大塚さんから90分55秒でした。いつもは水車からのタイムなので比較はできないのですが、帰ってから距離の差を換算するとほぼベストタイでした。時速は6.25km、全部舗装道だけれど途中かなりきつい登りもあるからなかなかのもんです。1日の後半でベストタイだからここ数日で最高の動きと言ってもいいでしょう。
トイレを使わせてもらって、すぐ14時50分に出発します。
しばらく歩いたところで車の女性に呼び止められて、ビニールに入ったお餅を渡されて「コーヒーを買ってあげるから」と自販機の前に促されます。「どれがいい」と聞いておきながら、ぼくが返事する前にブラックのボタンを押して、ガシャン、「これでよかった?」あまりのスピードに呆気にとられながら「ハ、ハイ」と答えるのがやっとでした。でも当たり前のことのようなこの一連の流れというのは本当にありがたいと思います。
三原村で出会う地元の人たちは、もれなくいい笑顔で挨拶してくれます。お遍路さんに対する自然な敬意や思いやりというものを感じずにはいられません。ずいぶん前に真念遍路道を歩いたときも、その道が整備されたばかりの頃だったので、会う人ごとに「道わかるか?」ときいてくれたものです。
15時40分、清水川荘に到着、集会所から48分09秒、ベストより1分遅れでした。6年ぶり4回目の投宿です。驚いたことに、一番奥に新しいトイレと風呂と食堂が増設されていました。何かと評判の悪いこの宿ですが、その短所がきれいに改善されたという感じです。確かに前のトイレと風呂は使いにくかったし、普通の民宿とはずいぶん違うものだった。×を付ける人の気持も判らないではないけれど、ぼくはそんなに嫌だとは思わなかった。2回目の時、前の人のお茶のセットがそのままだったのには、えっと思ったし、カレーライスだけだったのも、物足りなかったけれど。×を付けるほどではないと思っていました。なにより下ノ加江と延光寺の中間地点にこの宿しかなくて、あるだけでありがたいというのが先でした。
それから6年、トイレもきっちり鍵のかかるしっかりしたものになったし、お風呂も一回り大きくなって湯船にもつかれる、洗い場は狭すぎるけれど、食堂もちゃんとできて、部屋も寝具もきれいだったし、前よりはかなり良くなったという印象です。同宿の人は朝食はまずくて食えなかった、と言ったけれど、ぼくは夕食も朝食も全部美味しくいただきました。また泊まるかと聞かれたら、何の問題もないから、イエスと即座に答えることができます。今年の宿でここよりも泊まりたくない宿が2,3あったくらいです。もちろん農家民宿の方が良いことは確かですが、ここの農家民宿はテレビで紹介されて、お遍路以外の人が殺到するようになって予約がとりにくくなったと聞きました。ぼくが3週間も前に予約を入れたのに全部断られたのもそういう事情があったからのようです。どんなに素晴らしい宿でも予約が取れなければないに等しい、泊めてくれる宿があるだけで、それだけで十分ありがたい。2食付き5000円。
14日目の歩行距離 44.5km
歩行時間 7時間03分 真念庵の山道は計測し
平均時速 6.31km 忘れてしまいました。
2週目の7日間で出会った歩き遍路さんは、合計92人でした。