万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国は政策破綻を起こす?

2008年10月13日 15時02分08秒 | アジア
農民の所得倍増 3中総会閉幕 「調和社会」へてこ入れ(産経新聞) - goo ニュース
 共産主義を正当化してきた”土地の公有”さえ形骸化し、共産党による一党独裁体制は、理論上の根拠さえ失いつつあります。こうした中で、中国政府は、さらなる自由化を柱とした農業政策を打ち出したようです。この政策は、狙い通りに、農民の”所得倍増”を実現するのでしょうか。

 ニュース報道のみの情報量で判断することは難しいのですが、中国の政策方針には、いくつかの点で無理があるように思えるのです。それは、所得倍増のための手段を、大規模な農業経営と農産物の増産に求めているからです。これらの政策の目的は、土地の収用などで農地を失った人々を救済するためと説明されているものの、農地の大規模化は、常識的に考えれば、農家の戸数を減らす政策であり、大規模な農地開拓を伴わない限り、救済策とはなりそうにもありません。また、農産物の増産にしても、中国の農産物価格がきわめて低くく、かつ、供給が不足しているわけでもないことを考えますと、増産は、農産物価格の更なる低下を招くかもしれません。穀物輸出を増やす方針なのかもしれませんが、汚染米の前例もあり、スムースに輸出が拡大するとも思えません。

 農家所得を倍増するためには、汚染された土壌の改良や付加価値の高い農産物への転作を促進したり、あるいは、農村部への財政移転を増やした方が、よほど効果的とも思われます。少なくとも、軍事費や宇宙開発費を削減すれば、農村を救う財源は捻出できます。見込みの薄い政策を実施しますと、政策破綻を起こし、さらに農民を苦しめる結果になるのではないでしょうか。

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コメント (6)
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