万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

金融危機は財政では救いきれない

2008年10月08日 16時44分18秒 | 国際経済
アイスランド、全銀行を国有化(産経新聞) - goo ニュース
 90年代後半に日本国がバブル崩壊を起こした時、未曾有の金融危機を財政拡大政策で乗り切ろうとしました。不良債権の買い取り、資本注入、公共事業の拡大、地域振興券などなど、あらゆる財政的な手法が総動員されたのです。その結果、1000兆円とも称されたバブル崩壊による損失は、政府、あるいは、国民にリスク移転されて、財政赤字となって今日に至っています。

 日本国のバブル崩壊の場合には、莫大な財政赤字を抱えつつも、産業力が支えとなって、一国だけでしのぐことができました(それでも、何時破綻するかわからない財政赤字を抱え込んでいる・・・)。しかしながら、今回の金融危機は、経済大国のみならず、中小国にも連鎖的に波及し、アイスランドのように、金融機関の救済が、国家破産を引き起こすかもしれない国も現れたのです。

 そもそも、金融における損失を、すべて財政で補填しようとしますと、莫大な歳出を要するものです。金融と財政では、規模がケタ違いなのです。もし、日本国のように、財政で解決しようとしますと、国家予算の数倍にのぼる財政赤字を覚悟しなくてはなりませんし、国債に買い手がつかないとか、財政が危なくなりますと、禁じ手とされる中央銀行の国債の引受に手を染ざるを得なくなるかもしれません。そうしますと、今度は、不況下にあって、国民は、インフレーションに耐えねばならなくなるのです(預金の目減り・・・)。

 では、はじめから、中央銀行が、危ない金融機関に対して無担保で特別融資を行うべきなのでしょうか。この方法でも、国債引受の場合と同様に、インフレーションと自国通貨下落のリスクを負うことになります。

 バブルの崩壊とは、いずれの方法を取るにしても、誰かが損をしなくてはなりません。バブルに浮かれた人々が見たうたかたの夢は、目を覚ました途端に、他の人々を崩壊の巻き添えにした悪夢と化すのです。

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コメント (8)
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