万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

EUは財政統合できない理由

2008年10月06日 17時15分37秒 | 国際経済
金融危機 欧州統合に影 救済策で主要国亀裂(産経新聞) - goo ニュース
 単一通貨ユーロの誕生で、EUは、晴れて金融・通貨統合に成功しました。それではこの先、EUは、各国の財政をも統合する方向に歩を進めるのでしょうか。

 今回の金融危機に対する加盟各国の対応は、この疑問に対する否定的な回答を示唆しているとも言えます。何故ならば、財政は、加盟国の権限であることを明確にしているからです。考えてみますと、当たり前なのお話なのですが、財政とは、国民の納税によって成り立っています。納税者の立場に立てば、救済基金の名の下で、他国の金融機関の損失を自国の財政で救済することに、抵抗感を感じたのも理解に難くありません。「安定成長協定」で定められた財政規律を緩めることに合意したのも、財政の領域における国家主権の強さを表しているとも言えます。

 財政とは、政治と経済、あるいは、政府と市場が交差する領域にあり、経済の論理のみで政策決定はできません。民主主義国家では、税負担を負う国民の意向を無視はできませんし、他国への財政移転ともならば、さらに抵抗が強くなるからです(その反対の場合には、歓迎と言うことになるのですが・・・)。この側面から予測しますと、EUの財政統合には限界があるのではないか、と思うのです。

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コメント (2)
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