駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

OSK日本歌劇団『レビュー in Kyoto』

2024年07月15日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 京都四條南座、2024年7月14日15時。

 構成・演出/荻田浩一。今年8月に退団するトップスター楊琳、娘役トップスター舞美りらの南座ラストステージ。4月の『レビュー 春のおどり』の『BAILA BAILA BAILA』を再構成した南座バージョン。

 チケットにこうあるのでそう書いてみましたが、南座の正式名称はこれが正しいってことなのかしら…
 それはともかく、OSKをだいぶ以前に東京で観たときの記録はこちらこちら
 その後はご縁ありませんでしたが、朝ドラ『ブギウギ』は見ていましたしそこからの世間的な盛り上がりも聞いてはいて、宝塚歌劇ファン友達がハマって誘ってくれたので、では、と出かけてきました。
 南座はこれまでにスーパー歌舞伎を3階てっぺん席で観ることしかしてこなかったのですが、お友達が取ってくれたのは2階最前列センターブロック下手端のお席。花道のほぼ真上で3分の2はちゃんと見えるし、1階席の天井がだいぶ低いというか要するに舞台がとても近く見えて、素晴らしいお席でした。ここも一等席なので同じ席料なら1階の方がいい、という方ももちろんいるでしょうが、私は全体が観やすくてオペラグラスでも見やすくてもちろん肉眼でもちゃんとスターが識別できるこの距離この視界のこのお席は素晴らしい!と感動しました。足下も広かったし…ちなみにお隣に4名ほど、月組下級生さんたちがいらしていました。お勉強でスンッとして観ている、という感じではなくとてもキャッキャしていてノリノリで、純粋にファンなのか、スクール同期とかが出演していたりするのかな?と微笑ましかったです。ちなみに星野瞳さんのお嬢さんも現役生だそうで、今回は出演していないので、1階客席で観ているのが上から見てすぐわかりました(笑)。
 そう、なんかOSKって別働隊が多くて、宝塚歌劇の別箱公演とは違うレベルであちこちでちょいちょいたくさん公演していますよね。今回の舞台はトップスターの退団公演だし、これが本公演扱いなんでしょうが、それでも団員全員が出演することはないんだそうです。トップさんのご卒業(という言い方をOSKもするのかな? よくわからん…)を全員で見送れないのはちょっと寂しい気もしますね…でも、なので宝塚歌劇みたいに5組に別れたりもしていないんだけれど、娘役トップスターがふたりいるときもあったりして(これも宝塚では「トップ娘役」という呼び方をしていて、娘役を「トップスター」と称することはないから、その差異がおもしろいなと思いました)、そこまでがっちりシステマチックではないというか、常にトップスターが主役なんですという決まりがないというか、いろんなスターが主演を張ってあちこちで公演しているようなので追う方も大変だろうけど楽しいだろうなとか、そういう観察もおもしろかったです。
 自前の劇場がない分、サヨナラ公演をあちこちの劇場でずーっとやっている感じなのもおもしろいですね。今回も千秋楽のマチソワにはサヨナラショーがつくそうです。ホントのラストは新橋演舞場なのかな? 本拠地は関西なんだと思うんだけれど、それでいいのかな…? あ、でも宝塚も大ラスは東京か、まあそんなものなのかな。
 出演者がちょいちょい違っていったりもしているようで、演目にも場面の出し入れなどがあるようで、今回のレビューはもともとの『BAILA~』からしたらいろいろツギハギ感があるようで、お友達はそこが不満なようでしたが、逆に私のような特にどのスターにもなんの思い入れがない素人観客からしたらとても楽しいバラエティ・ショーになっていて、すごくおもしろく観ました。以前三越劇場で観たときにはハコがややアレだったこともあって、やはり宝塚歌劇の廉価版に思えないこともなかったのですが、今回はいい意味での差異をおもしろく観られた気がしたのでした。これは別ものとしてちゃんと好きな人がいる世界だな、と思えた、というか…
 あとはこれで個人のファンになってしまえば話が早いのでししょうが、そこはまだセーフ!でした(笑)。どんぴしゃ好み!みたいなスターさんは見つけられなかったので…でも、別働隊を観てみたらまたどこにどんな出会い、沼があるかわかりませんしね…ご縁があったらまた観ていきたいなと思いました。楽しみが増えました(笑)。

 まずは京都公演だから和物、ということなのか、「安倍晴明ファンタジー」から。これも既存の作品があったのかな? ストーリーのある場面で楽しかったです。晴明/楊琳、帝/華月奏、源博雅/翼和希、芦屋道満/登堂結斗、式神/桐生麻耶、葛葉狐/朝香櫻子。晴明に博雅ってのは夢枕獏のオリジナル設定かと思うのですが、もはや司馬遼太郎が書いたものが史実、みたいな一般大衆の常識になりつつあるんだな…など考えながら観ました。物干し竿みたいな鳥居はさすがに残念でしたが…ちょっと『白鷺の城』みたいでもあり、いつ「お待ち」が出てくるのかとヒヤヒヤと…(笑)式神の唯城ありすたんもチェック。うん、好きな顔です。
 で、なんか突然、おそらく若手スターがセンターの「京都でバイラ」なる場面が始まって突然ラテンになるのですが、知ってるこのノリ大丈夫、とこちらもノリノリで手拍子。みんな弾けていて可愛い! そうしたらまたしっとり「鏡の夢」なる三面鏡の場面が始まって、これもちょっと前に宝塚の和物ショーでも観たモチーフですが、そもそもはOSK伝来のものなんだそうですね。ご卒業の娘役トップスターさんとおそらくお姉様枠三人の、娘役さん四人だけで舞われるのがすごくいいなと思いました。あと、やはりOSKも洋楽で日舞を踊るのだな、と思うなど…
「夏の祝舞」で黒紋付で男役さんたちが凜々しく踊り、そこからはまたラテンで、極楽鳥の唯城ありすのダルマに背負い羽根が良くて、好き!ってなりました(チョロい…)。
 続いて「ブギウギラプソディ」のターンで、テレビで見たアレの!フルバージョンを!舞台で!観られる!という喜びに震えましたね。「胡蝶の舞」「四季の宴」…虹は緑の知颯かなでが好きな顔のタイプです、危険。「ジャングル・ブギー」は『バロック千一夜』かな、みたいなオレンジにシマウマ柄のお衣装で娘役トップスターの千咲えみさんがバリバリ歌うのがとても良きでした。女豹のお衣装もよかったです!
 さらに寅さんみたいな桐生さんに昭和な女性たちが次々絡む場面…からの全員で総踊りの「東京ブギウギ」、楽しかったです!
 MCを挟んで、かつて南座で公演した演目からのメモリアル・メドレーということでしたが、演目は知らなくてもその主題歌?はどれも調子が良くて、ノリノリで手拍子できました。「檄!帝国華撃団」とか、景気がいいよネ!! からの黒燕尾、素敵でした。
 幕内でものすごい音がするなと思ったら(笑)階段が仕込まれていて、そこからはもうフィナーレでした。とっぱしが退団するおふたりのデュエットダンスでしたが、これがとてもよかった! 続くラインダンスもお衣装がめっかわで、中低で胸アツ! 振付もよかった!(振付/麻咲梨乃)千咲えみさんが朗々と歌う中の男役のタンゴが素敵で、ここで位置的にも最下なんだろう碧輝来くんを見つけてしまいましたよ…なんか一番タカラジェンヌみがありました。こーいう下級生男役、雪組あたりにいそう!って思われました。最下でもセンターに置かれたりその後も娘役さんと組んだりするので、押されてるんだなわかるぞ…!とニヤニヤしたりもしました。イエまだ大丈夫です…!
 カプリースでのカップル振り、楊琳さんのソロで泣かせて、華やかなパレードへ…いやー、よくできていました! 満足!! 最後はミニパラソルも振ってきました。1階席がピンクに染まって、お花畑のようでした…!

 翼さんは、そりゃこちらが朝ドラで顔を覚えてるから識別しやすい、というのもありますが、やはり華があり、お化粧も周りとはちょっと違う感じで、次のトップスターになるのかな? 楽しみですね。
 舞美さんは城咲あいに、千咲さんは舞風りらに見えました。ま、なんか「誰っぽい」ってところから識別していくものですからね…こういう言い方が失礼だったらすみません。ただ照明が宝塚の劇場ほど強くないからでもあるんでしょうが、お姉さん枠はみんな意外と皺っぽく見えた気もしました。受験年齢が高い分、団員の実年齢も宝塚歌劇団より高いのでしょうか…? 宝塚はあのライトですべてを吹っ飛ばして見せているところはあるな、と改めて考えました。
 宝塚に比べるとOSKは娘役さんが強いというか元気、というのはよく聞くところだと思いますが、それも今回とても如実に感じた気がします。娘役さんが宝塚ほど絞っていなくていい意味でナチュラルな肢体で、そして気構え的にもルリルリしたお慕い芸がほぼないんですよね。まあ宝塚のアレはアレで私は嫌いではなく、というかそういうのが下手な路線娘役とかがいるとそこを習得しないとトップにはなれんぞ!とかヒヤヒヤするくらいなのですが、OSKにはホントそういう文化がそもそもないんだな、と感じました。ラブストーリーの芝居・ミュージカルを観たらまた違うものも感じるのかもしれませんが…娘役が一歩退いて男役を立てて、ある種の家父長制やミソジニーまでをも内面化してしまっている理想の異性愛カップルを演じる…という側面があまり強くない、というか。男役も補正が甘いぞ!と思ったりはするんだけれど、お衣装その他の助けもあって娘役との差異は明確なわけで、その中で男女として対等な、互角のカップル、コンビとして歌い踊っているように見えました。娘役さんのソロや娘役さんだけの場面もとても多いですしね。娘役さんの方の背丈が明らかに低い、という組み合わせも少なく見えたので、デュエダンなんかは特にフィギュアスケートのアイスダンスのカップルみたいだな、と感じました。名香智子『パートナー』からの知識ですが、身長差がないくらいのカップルの方がダンスがダイナミックになっていいんでしょ? そういう明るさ、伸びやかさ、おおらかさ、スポーティーさをすごく感じました。比べれば宝塚はもっと揃っていてこだわっていて美しいかもしれないけれど、矯正されすぎていてしんどいしつらいし、なんかしら湿っぽいというか仄暗いところがあるんだな…と思うなど、しました。セットもお衣装もお金のかけられ方は段違いなので、そういう差異ももちろんありますけれどね。社風? 芸風? が明らかに違うんだな、と…今のOSKは松竹が母体なんですか? よくわかっていなくてすみません…
 ともあれ、いろいろ勉強になりましたし、それはそれとして本当にショーとして楽しく観ました。良き経験をしました。誘ってくれたお友達に感謝です!



 



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