駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

桐野夏生『ハピネス』(光文社文庫)

2016年05月12日 | 乱読記/書名は行
 高級タワーマンションに暮らす岩見有紗は窒息寸前だ。ままならぬ子育て、しがらみに満ちたママ友たちとのつきあい、海外出張中の夫からり離婚申し出。そして誰にも明かせない彼女自身の過去。軋んでいく人間関係を通じて徐々に明らかになるそれぞれの秘密と、幸せの裏側に潜む悪意と空虚を描く衝撃作。

 「VERY」に連載した、ということがまたおもしろい小説で、おもしろく読みました。
 というか、こういうことになるのが怖くて、私は子供を持たなかったのだな…と改めて思いました。こちらがあれこれ手をかけないとそれこそ死んじゃうくらいに無力なのに、こちらとは明らかに違う個性で、思うようには育たない生き物で…絶対ムリ。私には耐えられないと思いました。
 このヒロインも息絶え絶えでこの暮らしをしていて、自分で選んだんだから開き直ってもっとハキハキがんばらんかい!と言いたいくらいなのですが、実は彼女にもいろいろ事情があって…ということがゆっくり明かされていく展開になっているので、イライラしつつも楽しく意地悪く読み進められてしまうのでした。
 ふわっとした終わり方になっているのは続編を連載する企画が最初からあったからかもしれないし、人生がどこかでキリよく大団円落着するなんてそれこそ死ぬまでありえないのだから、ということもあるのかもしれません。
 解説もおもしろかったです。



コメント
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