駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

シス・カンパニー『抜目のない未亡人』

2014年07月05日 | 観劇記/タイトルな行
 新国立劇場、2014年7月4日ソワレ。

 現代のイタリア、ベネツィアにあるホテル・アマンテス。国際映画祭の華やぎの中、高齢の夫を看取ったばかりの元大女優ロザーウラ・デ・ビゾニョージ(大竹しのぶ)がこの地を訪れていた。彼女のハートと女優復帰作の双方を射止めるべく、イギリス人のルネビーフ(中川晃教)、フランス人のルブロー(岡本健一)、スペイン人のドン・アルバロ・デ・カスッチャ(高橋克実)、イタリア人のボスコ・ネーロ(段田安則)という4人の映画監督が互いを牽制し合いながらしのぎを削っている…
 原作/カルロ・ゴルドーニ、上演台本・演出/三谷幸喜、美術/松井るみ。全1幕。

 お金持ちの明るい未亡人、という意味では『メリー・ウィドウ』、別人のふりをして相手の真意を探るという意味では『めぐり会いは再び』を思い起こさせました。舞台を原作の18世紀から現代に変えて、人物造形や人間関係は原作そのままに、95パーセントの台詞は三谷氏が書き起こしたものだそうですが、祝祭感は変わっていないだろうとのことです。テレビでもよく見る、けれど芸達者なプロフェッショナル揃いの俳優たちが、ホテルの庭園だけれどそのまま半円形の屋外劇場のステージにも見えるセットの中で、生身で演じるからこそファンタジックな、楽しくはかないラブコメディ。堪能しました。
 一番存在感の薄かったボスコ・ネーロの純愛が通じてハッピーエンド、なんかじゃなくて、監督と恋をすることもセットだけれどそれよりやっぱり映画、演技という仕事がしたいヒロインがプランしかない夢みたいな企画を怒ってうっちゃるラストが、ほんのりせつなく物悲しくてなかなかよかったです。まさに一夜の夢なのでした。もうちょっとその情感が漂えばよかったと思うけれど…
 大竹しのぶは舞台女優としてけっして声も良くないしいろいろアレだと思うのだけれど、それでもこの上手さはすごいなと思いました。この小柄なおばちゃん女優に対する大柄な美人のエージェント・マリオネット役の峯村リエも素晴らしかった。
 そしてロザーウラの妹で美人だけれど大根女優のエレオノーラを演じた木村佳乃のまたキュートなこと! こんなに可愛い木村佳乃、見たことない! テレビドラマだと賢かったり幸薄そうだったりする役が多い気がするんですよねー。いいコメディエンヌっぷりでした。
 ホテルの従業員アルレッキーノ役の八嶋智人がもちろん素晴らしく、私が大ファンの浅野和之のパンタローネがまたくだらなすぎて素晴らしかった。イヤ全力で褒めてます。
 「深刻なものだけが演劇じゃない。そう、演劇は、お祭りなのですから」というプログラムの言葉にふさわしい、ちょっとミュージカルでもある、楽しい舞台でした。

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『シスター・アクト』

2014年07月05日 | 観劇記/タイトルさ行
 日生劇場、2014年7月3日マチネ。

 破天荒な黒人クラブ歌手デロリス(この日は瀬奈じゅん)は殺人事件を目撃したことでマフィアのボス・カーティス(この日は大澄賢也)に命を狙われるハメになり、警察の指示でカトリック修道院に匿ってもらうが…
 音楽/アラン・メンケン、歌詞/グレン・スレイター、脚本/チェリ・シュタインケルナー&ビル・シュタインケルナー、演出/山田和也。『天使にラブ・ソングを…』のタイトルで大ヒットした映画を原作にしたミュージカル、2009年ロンドン初演、2011年ブロードウェイ上演。全2幕。

 映画は未見だったのでチケットを捕らないでいたのですが、わりに評判が良くて気になっていました。そうしたらひょんなことから行けることになっていそいそと出かけてきました。
 ダブルキャストは森公美子の回の方がチケットが売れているんだそうですね、およよよ。まあアサコもがんばっていたけれど、歌唱力とかヒロインのイメージとしてはアレかもね、ですかね。
 ともあれ楽しく観ました。石井一孝がわりと好きだし、オハラ神父の村井國夫とかもっと歌ってもらいたいくらいだったし、修道院長(鳳蘭)のツレちゃんのラスボス感たらたまりませんでした。そして初めて観ましたがラフルアー宮澤エマ、神田沙也加やソニンを観たときと同じ衝撃がありました。う・ま・い!!!
 ただ、もともとが明るく楽しいハリウッド映画だからということもあってかストーリーは単純でお芝居のパートがあまりなく、華やかな楽曲やナンバーばかりで進むのがやや大味に感じられなくもありませんでした。まあ好みかもしれませんが。
 そして終盤の台詞からすると、これはもっと、デロリスがDV男と共依存関係にあるもっとダメダメな自堕落で野放図で弱い愚かな女で、本当はもっと才能があるのに気づいていないし生かせていないし、人生に夢や希望も抱けていなくて…みたいな構造のお話だったのではないでしょうかね。でもさすがに死にたくはないから逃げ出して、逃げ込んだ教会のシスターたちと反発して、でも癒されて生き返って強くなってみんなも巻き込んで歌い出す…これはそんな再生の物語だったのではないでしょうか、あるべきニュアンスとしては。
 でもアサコのデロリスは最初っからカーティスへの愛情よりは歌手になりたい、ビッグになりたいっていう希望の方が大きい、前向きな生き生きとした女性に見えてしまっていました。それがちょっと引っかかったかな?
 機会があれば原作映画も観てみたいと思います。

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