映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

イレブン・ミニッツ(2015年)

2017-06-10 | 【い】




 ポーランド・ワルシャワでの、ある日の午後5時からの11分間に起きた出来事を、時系列で多焦点から描き、最後の最後でそれらが1つの焦点で結ばれる。

 多焦点の主たちは……映画監督、女優、女優の夫、屋台のホットドッグ屋、その息子でバイクの宅配人、救急士、医師、、、他にもいたかも。ラストでパズルが完成します。
 

   
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 公開時、気にはなっていたものの、結局、見に行かずに終映。……まあ、見に行かなくて正解だった。


◆そんなこと今さら映画で見せてもらわなくても、、、。

 これは、私の嫌いな、観客を欺くことに血道を上げたセコい作品ではないけれど、こういうのも、あんまし得意じゃない……。ぶっちゃけ、「……だから何なのさ」と言いたくなるというか。

 『バンテージ・ポイント』は似て非なるものだけど、ラストの展開へ向けて、多方面からアプローチするという点では同じ。『バンテージ・ポイント』は、暗殺事件の裏側を“関係者”に的を絞って多角的にあぶり出そうとした作品で、記事にも書いたけれど、「三角だと思っていたものが、別の角度から見たら丸かった・・・」という狙いで描かれた映画だった。一方、本作は、まるで関係のない登場人物たちが、最後に“たまたま”ある同じ事件に遭遇することになった、というわけなので、別に、物事の多面性を描きたくてこういうシナリオを書いたのではないと思われる。

 恐らく、単純に言ってしまえば、「人間万事 塞翁が馬」とか「一寸先は闇」とか、そんなことを描きたかったんじゃないか。

 だから、正直なところ、“今さら感”が激しく、そんなことこんな手の込んだ作りにして見せてくれなくたって、骨身に沁みてますよ、と白けちゃう。311を経験した日本人は、みんなそうじゃないですかね。311に限らず、世界中どこでも、理不尽なテロや、事故、事件、、、あまたある不可抗力とか不条理によって、人生が激変した経験を持つ人たちにとって、こんな映画は、むしろ安っぽくしか見えないのではないかと思う。

 人生は一瞬で激変するその儚さ、、、なんて、言われんでも分かっとるわ!! ってこと。

 ホントに、スコリモフスキはそんなアタリマエ過ぎることを描きたかったんだろうか、と見終わってから2週間ほど悩んだけれど、まあ、やっぱりそうとしか思えない。

 そして、作品の公式HPにトドメを刺されちゃったよ。

人々のありふれた日常が11分後に突如変貌してしまうという奇妙な物語を、テロや天災に見舞われる不条理な現代社会の比喩として描いたこの映画は、個人の生や死がサイバー・スペースやクラウドといった環境に取り込まれていく未来を予見していると言えるでしょう

だって。ホントにそうだったんだ、、、。

 ……ガックシ。


◆パズルが出来上がってもカタルシスなし。

 本作を見終わってしばらくイロイロ考えているうちに、大昔に読んだ、村上龍の「五分後の世界」を思い出した。コンセプトも、内容も、まるで違うけれども、思い出してしまった。

 別に、本作の様に、5分後にどうなるか、が書かれている小説ではないのだけれども、スリリングな恐怖と、不完全で混沌としながらも不思議な幸福感が同居している、妙な小説でした。それはもちろん、作者の狙いどおり、時空間の歪みに見事に連れ込まれた証拠なわけですが、著者が「五分後の世界」とタイトルをつけた理由が分かる気がしたのです。

 それは、きっと本作と根底は同じ、「一寸先は闇」で、歴史はちょっとしたことで激変する、というものだと思う。その不条理感や儚さってのは、やはり、それでも著者が“こういうところへゴールを持って行きたい”という意図があって、読者には分からない様な計算された人物の配置と描写があって初めて、切実感を持って読者に伝わってくるものだと思うわけ。

 しかし、本作の場合、スコリモフスキが設定したゴールは、ただの事故であり、それこそが現実そのものだとは言え、あまりにも映画としては淡泊過ぎる。「サイバー・スペースやクラウドといった環境に取り込まれていく未来を予見している」なんてのは、日本の配給会社の余計なお節介であって、映画だけを見れば、そんなことはまったく触れられても匂わされてもいないわけです。触れずとも、匂わせずとも、それを指し示していることは、秀逸な作品にはあるけれども、本作からは感じられなかった。少なくとも、そんな意図が監督にあったのだとしたら、本作は失敗と言ってよいと思う。

 ただパズルが出来上がる過程だけを見せられて、観客が心動かされるだろうか? パズルのピース一つ一つの持つ意味が、最後に全て明らかになるのでなければ、パズルを作る過程を延々見せる意味がないと思うのだけど、どうでしょう??

 ……そんなわけで、スコリモフスキといえども、イマイチでした。




 


あの映画監督、サイテー。




 ★★ランキング参加中★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする