春闘でガンガン賃上げ満額回答が出ているようです。ちょっと前の日本では考えられない状況です。どれだけ働いたって給料が上がらない国、それが日本でした。デフレ大国日本では、給料が上がらない代わりに物価も上がらないので、上昇志向を持たず、休日はユニクロの服を着てイオンに出かけてサイゼリヤで食事をしていれば概ね満足できる仕組みが出来上がっていました。それにすっかり国民も慣れてしまっています。しかし今は世界に歩調を合わせインフレ国家になろうと官民揃って頑張っています。急にそんなこと言われても、と戸惑っている日本人がかなり多いのではないかと思います。
そもそも日本の労働者の賃金が上がらないのは労働生産性が低いからだとよく言われてきました。しかしどうやらそれは間違っていたみたいです。だってとりわけ働き方が変わったとも思えないのに急に給料が上がり出したのですから。要は経営者が給料を出し渋っていただけです。内部留保をため込むだけため込んで企業が大デブになっていました。それに対して株主に配当を還元しろだの、社員にもっと給料を払えだのと政府が急に言い始めたものだから、仕方なくダイエットを始めたというところでしょう。
残念ながら定年後再雇用の身の上では、この賃上げも無関係で、給料は1円たりとも上がりません。年金は物価スライド制で上がるはずですが、物価上昇分ほどには上がらないように抑え込まれていますし、そもそもまだ63歳なので年金貰うまでに少し時間があります。収入は上がらないのに、物価のみならず賃金も上がって本格的にインフレが到来したら、いよいよ干上がるばかりです。
2000万円問題はすっかり下火になってしまいましたが、油断して「下流老人」になりたくはありません。孫にバンバンお金を使ったりせず、世界一周旅行やら新車購入やらリフォームやらもせず、とにかく慎ましく過ごしています。それでも退職金を運用しないと将来足りないかなと心配になります。若者は未来に期待が持てず、中高年は老後不安で夜も眠れない、それで本当にインフレ国家を目指して大丈夫なのでしょうか。イオンに集まってユニクロの服を着てサイゼリヤで食事していたデフレ時代が「あの頃は良かったなぁ」と懐かしくなったりしないでしょうか。