昭和生まれの老翁が見聞きした嘘のような本当の話。
第1話 「待ち遠しいソーメン」
友人から聞いた話。
彼には姪っ子がいました。彼女は東京大学を出た才媛だそうです。容姿のことは聞かなかったのですが、彼は背丈があり、やや強面ながら男前に属する方であったので、血筋から彼女もスラリとした端正な女性だろうと勝手に想像していました。
姪っ子は独身であるアパートに住んでいました。彼はたまたま彼女の住んでいる近くへ仕事があったので、帰りに寄ってみることにしました。
アパートに行くと折よく彼女がいました。
丁度、昼に近い時間だったので、彼女は「叔父さま、今日は私がおソーメンを御馳走しますわ」と言ってキッチンに入りました。彼は居間で待っていました。彼女がキッチンに入り、10分が経ち、20分が経ち、いよいよ30分になりました。少し、ソーメンにしては時間がかかりすぎているが、ソーメン以外にも何か別の料理を作っているのだろうと思っていました。しかし、40分が経ち50分近くになりましたがソーメンは出てきません。彼はいよいよ少しおかしいな、キッチンで倒れているのではないかと心配になりキッチンに入りました。その時、彼が見た、彼女がやっていることを見て仰天しました。「えぇ~。マジかよ」
なんと、彼女は煮え立つ鍋の湯に1本のソーメンを入れ、それを箸でかき混ぜながら、茹で上がると笊に移し、次に1本のソーメンを鍋に入れ、箸でかき混ぜ、茹で上がると笊に移すということを繰り返していたのです。時間がかかるのは当たり前です。すぐさま彼は彼女にソーメンの茹で方を教えたそうです。おそらく彼女の母は頭の良い子供の勉強に差しさわりがあってはいけないと台所仕事を手伝わせなかったのでしょう。学業一辺倒。入試学科の国、英、数、理、社などは東大に入るのですからダントツの出来だったのでしょうが入試試験にない、家庭科は最低だったろうと思いました。結婚は無理かな?
今週の一花。
緑のバラ「ロサ キネンシス ビリディフローラ」
中国原産の原種のバラ。花弁が葉でできているような花。秋には一部が赤くなる。花弁は葉の変化したものの証明のような花。
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