はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

2013-11-21 21:35:45 | はがき随筆
 久しぶりに可愛い孫を抱き、娘のお供をして、鹿児島市の天文館を歩いた。
 すると、果実店の前で、籠の器に柿が5個入っており、300円と書いてあった。
 安いので、「買おう」と言ったら、娘から言われ、300円の下に小さく(1個)と値段がついていたのに初めて気がついた。
 ああ、もう少しで1個300円の柿を買うところであった。
 田舎に行けば、軒先の柿の木に数えきれないほど、柿の実がなっていることを思い出し、安堵した。
  鹿児島市 下内幸一 2013/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載

あの日の日記

2013-11-21 21:21:28 | はがき随筆


 小さな棚田で稲の脱穀を手伝ってもらい、新米の収穫が終わった。籾から外れたワラを囲み、お茶しながら昔話に花が咲いた。秋の遊び道具といえば、ワラコズン。僕たちはドシとこのワラコズンに登っては、トッオジイの繰り返しで遊んでいた。
 すると「コラ! ワイドマ、ナイゴツか?」とガラレタものである。子ども会での努力目標は「ワラコズンに乗らない」だったが、守ることなく、友達が集まると何かが始まっていた。
 心の豊かな時代で時間がゆったりと流れ、多くのことを自然と遊びから学んだ気がする。この時代の流れに驚いている。
  さつま町 小向井一成 2013/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載

写真

2013-11-21 21:16:09 | はがき随筆
 たれた眉、しわの目立つ張りのない顔。この世に恨みでもあるかのようなさえない表情。自分の写真にがっかりする。「きっと、写りが悪いだけ」と孫の写真を見ると、実物と全く変わらない。どれを見ても生き生きとして実物そのものである。
 ということは、私の実物は写真そのものと認めざるをえない。できれば処分したいが、昔の人のようにそこに魂があるようで、それはできない。
 普段もこんな顔しているのだろうか。先人たちの苦難の歴史のはてに、やっとたどり着いた平和で豊かな世。笑顔で生きなくては申し訳ない。
  出水市 塩田きぬ子 2013/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載

朝はどこから

2013-11-21 21:06:00 | はがき随筆
 朝はどこから来るかしら。あの山越えて、野を越えて……。朝はカタカタ野菜を刻む音から始まる。真心こもったおみそ汁をこしらえる。父さんの朝食は食パンと牛乳、目玉焼きに果物と、私はできたてのおみそ汁、白飯一膳をいただく。
 「至福のひととき」。いつも明るい台所の家庭から朝が来る。近所のごみ収集場にごみを置く。空に目をやると、スズメたちが電線を貸し切ったように横一線にはばかっている。楽譜の五線上に“フラット”が並列に……。スズメたちよ、朝は山や川や電線から来たのだろう。おはよう、おはよう!
  姶良市 堀美代子 2013/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載

皇帝ひまわり

2013-11-21 15:41:44 | はがき随筆

 晩秋に花開く皇帝ひまわりを仰ぎ見る。天高く伸び、きっと空から夫も眺めていると信じて。
 そんな中、キャリーバッグを引いて孫娘が来た。「昨夜から何も食べていない」と元気がない。歩いてきたようで、すわっ、「家出か」と胸が騒ぐ。高校2年、文武両道の自慢の孫である。娘に電話すると「うん、ちょっとね」と言葉を濁す。母親と感情的にぶつかったらしい。2日程寝食を共にし、本人曰く「“山村留学”楽しかった」と帰って行った。
 ひまわりも一層輝きを増し、皆を見守っているかのよう。
  出水市 伊尻清子 2013/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載

ヤー、久しぶり

2013-11-21 15:33:58 | はがき随筆
 10月半ばの早朝、家内が大きな声で「お待ちかねの方が、来てますよ!」と私を呼ぶ。時計を見るとまだ午前5時半にもなっていない。「誰が?」と聞くと「ほら、ほら呼んでますよ」と言う。びっくりして起きて行ってみると、何とお待ちかねの方は、ジョウビタキであった。
 毎年、秋の深まりとともに夫婦で訪れ、冬が終わるまで我が家に滞在してくれる。
 姿はとても美しいのに、呼んでくれる声はそうでもない。
 でも、会う度に泣きながら、頭を下げてあいさつをしてくれるから好きだ。
 来年まで、またよろしく!
  志布志市 一木法明 2013/11/23 毎日新聞鹿児島版掲載

28年目の独り

2013-11-21 15:26:21 | はがき随筆
 秋も順調に深まり、朝夕の気配はまるであの猛暑を忘れてしまう。11月1日で結婚52年目。しかし、夫の早逝で子供たちとの生活。
 花屋で赤紫のトルコキキョウに出合い、4束買い、お供えする。上品な色調にすっかり感慨を深め、夫への供華と、一人喜んだ。
 3人が9人になった家族の絵を椅子に置いて「こんなに増えました」と独りごち。明るく、今しばし灰の降らない昼の光に窓も開けた。
 そのうえ、モクセイは時を得て、花と香りの風情を加えて心満ちる28年目の独りである。
  鹿児島市 東郷久子 2013/11/15 毎日新聞鹿児島版掲載

告知

2013-11-21 14:54:35 | はがき随筆
 常に穏やかな人柄に好感を持っていた知人から、不治の病であると知らされた。
 思いがけない事実に我が耳を疑った。手術後、転移が分かり、天に召されるのも遠くないと知る。自分も気落ちし、驚きと寂しさ、残念な気持ちが入り混じった複雑な心境だった。
 今も、病気とご夫婦で闘っておられ、私のできることは笑顔で励ますこと? すさまじいまでの抗がん剤の副作用に、ただただ頑張れと心の中で応援するしかない。「何かあったら夜中でもたたき起こして。すぐに車を出すから」とだけ伝えるのが精いっぱいだった。
  鹿屋市 中鶴裕子 2013/11/14 毎日新聞鹿児島版掲載 

菜園作れぬ福島悲し

2013-11-19 10:39:16 | 岩国エッセイサロンより
2013年11月19日 (火)

    岩国市  会 員  横山 恵子

 9月にまいた大根が、少しずつ大きくなつてきた。1㍉くらいの種が土の栄養分を吸収して成長する。自然の営みに感謝だ。
 わが家の畑で安全安心の野菜作りができることは当たり前と思っていたが、福島では、除染は終了して帰宅はできるが畑は作れないと、途方にくれている人がテレビに映し出されていた。
 その胸中を思うと言葉がない。原発事故を想定した避難訓練が今もあるが、もしものときがあればその後をどうするのか。福島では今も15万人もの人たちが、不安を抱えながら避難生活を送っておられるではないか。
 汚染水問題は解決のめどさえ立たない。核廃棄物処理場や、廃炉完了まで30〜40年かかるなど、とてもコントロールできるとは思えない。
 日本は地震国である。台風、竜巻も考えると、原発は造るべきではないと思う。ひとたび事故が起きると、自国だけの問題ではなくなる。何よりも、もう二度と住めないような土地を子どもたちに残してはならないと思う。 

    (2013.11.19 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「ラッキーな1週間」

2013-11-18 17:28:34 | 岩国エッセイサロンより
2013年11月18日 (月)

岩国市  会 員   中村 美奈恵

うーん。日曜の夕方、米びつを見ながらうなっていた。頼んでおいた新米を土曜に取りに行く。足りるかなあ。息子は給食だが、夫と私は弁当がいる。どうもあやしい。でも買いたくない。水曜は麺類にしよう。

そんな時、義母からちらしずしが届いた。ラッキー。月曜、友人からお土産にサバずしをもらう。わぁ。火曜、夫が出張で弁当はいらないという。ウフフ。木曜、開店したばかりの弁当屋が職場に来て「試食してください」。金曜、弁当を試食。みそ汁付きでおいしい。迎えた土曜。無事新米にありつけたのは「みなさんのおかけです」。

(2013.11.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

クリスマス準備

2013-11-15 07:00:06 | アカショウビンのつぶやき


カレンダーも残すところ…。
鹿屋キリスト教会では、クリスマス行事の準備会です。
12月24日のクリスマスイブは、教会でお祝いの会をします。
男性の会、女性の会、子ども達、親愛幼稚園(教会の幼稚園です)の先生方、
その他みんなで知恵を出し合い、
キリスト・イエス様の誕生をお祝いする
楽しい会を目指し準備スタートです。

今年も多くのお客様をお迎えするために、
教会のクリスマスを皆で作り上げます。


未完のマリア像

2013-11-14 15:51:14 | はがき随筆


 ミラノでは135本の尖塔が天を刺すように建つ大聖堂を見学。外観の美しさと内部の荘厳さ。ゆっくりと見たかったが時間がなく本当に残念。次に、ナポレオンに大きく破壊されるまでは星形のお城だったという旧城の博物館でミケランジェロのピエタを見た。磔刑に処された後に十字架から下ろされるイエスを抱く聖母子像ではなく、未完のマリアと呼ばれるこの大理石の像は、キリストがマリア様を背負っているように見える。
 彫りかけの目は悲哀に満ちていて、イタリアで見たどの美術作品よりも心打たれた。祈りにも似た思いで思い出す。
  霧島市 秋峯いくよ 2013/11/13 毎日新聞鹿児島版掲載

花のささやき

2013-11-14 15:44:25 | はがき随筆
 庭隅の艶やかな葉をしたツワの花茎の上部が分枝し、黄色い頭花が咲いた。この花を見ると、例年大掃除の日程表を作る。網戸洗い、ガラス拭き……戸棚の引き出しと細かく予定を立て、12月上旬に終わる予定。余裕を持って少しずつ、暑くもなし寒くもなし、この時期が効率よく作業ができる。初夏のクチナシの香りと共に白い一番花を見た時は樋や溝の掃除、浴室の天井や壁を梅雨に備えてのカビ防止の作業だった。
 主婦は衣替えなど年中繰り返し仕事がある。私は庭に咲く花や樹木にささやかれながら生活を営んでいる。
  出水市 年神貞子 2013/11/12 毎日新聞鹿児島版掲載

お母さんコーラスの反省会でーす。

2013-11-13 18:11:12 | アカショウビンのつぶやき


やっと終わった、鹿児島県おかあさんコーラス合唱祭。
反省会でした。
少々厳しい? 講評もいただきましたので、覚悟して…。
原点にもどり発声をみっちりやらねば!

さあ、これから楽器みがき(体)です。



当日のCDもやっとできました。
今年は講評まで収録し、例年より反省を込めたものに仕上げました。
あらら、スキャンする時に斜めになってしまいました

朝日に祈りを

2013-11-13 18:10:37 | はがき随筆
 妻と二人、懐中電灯を持って散歩に出るのは午前5時。この時期、澄んだ空気に星座が映える。戻るのは明るくなり始めた6時過ぎ。今度は、愛犬遼太郎を連れて志布志湾の海岸線を歩く。この時、語り合うのは時に応じて何でも有り。深刻な話題など無いので、最後は笑って終わってしまう。
 散歩の終わり近く、海面から盛り上がるように、真っ赤な太陽が顔を出す。2人で合掌し、穏やかな1日をお願いする。更に僕は、土曜と日曜には馬券が当たりますようにと付け加える。しかし、お天道様はギャンブルがお気に召さないようだ。
  志布志市 若宮庸成 2013/11/11 毎日新聞鹿児島版掲載