はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

運動会準備

2013-11-09 20:54:34 | はがき随筆
 引越しの関係で、4歳の長男が2学期から幼稚園に入園した。長女が通った少人数の園とは対照的な、400人超の大所帯。最初はただ規模に圧倒されていたが、行事の時の苦労は考えていなかった。
 9月の運動会前日、台風でテント張りが中止になり、当日は午前5時に来てと夫に声がかかった。「帰宅が遅いので」と肩身の狭い思いでお断りした。
 当日、会場である小学校に着くとまさにテント村だった。大雨の中、場所取りしたらしい、仮眠を取る集団。皆さんお疲れの様子。このパワーについていけるか、次の行事が心配だ。
  鹿児島市 津島友子 2013/11/9 毎日新聞鹿児島版掲載

鹿児島弁

2013-11-09 20:48:31 | はがき随筆
 我が家の隣地で畑作りのYさんとはよく立ち話をする。Yさんは団体で東北を旅行中、栃木の団体と昼食が一緒になった。
 鹿児島弁で大声でしゃべっていると、隣席の女性がけげんな顔で、「どちらからですか」と聞かれた。ちゃめっ気のあるYさんが「韓国からです」と答えると「日本語がお上手ですね」と褒められたそうだ。
 鹿児島弁は他県の人が聞くと、外国人が話しているように聞こえるらしい。戦後、標準語を使うよう指導され、「からいも標準語」とからかわれた。今では純粋な鹿児島弁が聞けなくなったのは、寂しい限りである。
  鹿児島市 田中健一郎 2013/11/8 毎日新聞鹿児島版掲載

思秋期

2013-11-09 20:42:46 | はがき随筆
 ついこの間までは、日差しから逃げていたのに、今では陽のあたる場所を、追いかけている。季節が移ろい続けている。子供2人は、それぞれ自立してどうにかやっている。これから、自分の人生をどんなふうに生きていこうかと、よく思う。夫の転勤のため、ここ5年程は専業主婦をしている。仕事を探してみるものの(どうせ、見つけてもまた、転勤になるし……)と、諦めの気持ちが先にたってしまう。
 できるなら、社会のために何かできる事を……。今、思春期ならぬ、思秋期真っただ中の悩める年ごろの私です。
  志布志市 西田光子 2013/11/7 毎日新聞鹿児島版掲載

あっ、笑ってる

2013-11-09 20:37:56 | はがき随筆
 「かごしまねんりん大学」での現地研修は楽しいでした。
 長谷の「おしゃべり会」では20人程の高齢者が輪になり、大笑いしていました。
 リーダーは声かけだけ。主役はおじいちゃん、おばあちゃんです。
 みんな、踊りたいのよね。歌いたいのよね。下手がいい。普段着のままで自然がいい。心ないおもてなしはいらない。
 コスモス園近くの「大坂ふれあい館」には、ナス2本を持って来るおばあちゃんもいて、みんなで大事にしているとか。いいなあ。笑顔があふれたすてきな町に住みたくなりました。
  阿久根市 別枝由井 2013/11/6 毎日新聞鹿児島版掲載

「大工になった元同僚」

2013-11-09 14:39:50 | 岩国エッセイサロンより
2013年11月 9日 (土)

岩国市  会 員   片山 清勝

近くで棟上げがあった。棟梁は、大工仕事に魅了されて脱サラしたかつての同僚。建築を1から学ぶため大工に弟子入りし、学校にも通うこと6年。1級建築士の資格を得て、一人親方として独立した。
 家が寿命を迎えて解体された時、材料が土に返れる木の家を作ることに彼はこだわっている。そのため完成には手間も時間もかかるという。
 材木市場へ足を運び、納得した木材を購入し、自然乾燥させて使用する。準備した木に墨付けをし、ノコやノミ、カンナなど昔ながらの大工道具を使う。プレカットの普及にともない、最近は墨付け、刻みの仕事が少ない。これができて大工は一人前というこだわりも彼は持っている。 
 今回手がけた家も「軸組模型」を作り、刻んだ材を仮に組む「地組」をし、墨付けや刻みに齟齬のないことを確認したという。また、古民家から出た松などの古材丸太を使っている。その質感、あめ色の艶と重量感は白い新材を引きまとめる力強さがある。
 棟梁こだわりの家を見学した時のこと。玄関を入ったとき、新建材を使わない家に違和感を感じた。しかし玄関を出る時に、室内の空気の柔らかさからか、穏やかな気分になっていた。
 奥さんも元同僚。「よくここまでやってこれました」と棟の主人を見上げながら感慨深げに語る。二人の今日までを知っているだけに心からエールを送った。

  (2013.11.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載